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対ロシア制裁が見せてくれるロシアの多段階対応能力

2017-07-29 17:53:25 | アジア情勢複雑怪奇

いやいやいや、なんとも騒々しい日々ですね。

稲田さんは辞任。とはいえ陸自の制服組と相討ちさせた格好。そうかと思えば蓮舫、野田コンビが民主党の上の方から抜けて、民主党何がなんだかわからない状態となる。

これだけでも十分に困難なのに、そこで北朝鮮がまたまたミサイル実験。

 

アメの方では、トランプがプレービス首席補佐官を首にする。そして、ここしばらく噂になっていたヒラリーとその周辺に対する調査を継続する気配になってきた。

米下院法務委員会は法務省と検察庁に、ヒラリー・クリントン元国務長官と、前オバマ政権の一連の高官に対する調査を特別検察官が行うよう要請する書簡を送った。CNBCが28日報じた。

https://jp.sputniknews.com/us/201707283938561/

 

という中、相対的に扱いが小さいけど、この間書いた米の対ロシア、イラン、北朝鮮のうちのロシアに関する部分では、ちょっとなんか面白い感じになってる。

米議会、ロシア、イラン、北朝鮮をターゲットに制裁案を可決

 

米議会が通しても、最終的にはトランプ大統領が署名して実効となるんだけど、でもここで大統領が拒否しても、米議会に戻って再度の決議があればそれでゴー。日本の地方自治体の仕組みと同じですね。日本って中央と地方が別の制度でやってるからほんと面倒ください。

現状、米議会は圧倒的多数で可決したんだから、トランプが拒否しようとも無意味であると一応考えられている。もはやこれは決定だ、と言えそうだ、と。

が、ロシアがどう出てくるのか、あるいはドイツがどう出てくるのかが確定しないところで押しちゃっていいんだろうか、という疑念がちらほらある。

欧州側が怒ってる話は前回書いた通り。ではロシアは何をするのか。

とりあえず昨日出て来たのは、報復措置として、在ロシアの米大使館関係者の人数縮小を言い出した。

 ロシアが米国の新たな制裁法案可決に報復-外交官退去など求める

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-07-28/OTSRAY6TTDSD01

ロシア政府は米国に対し、大使館員やその他ロシアに駐在する政府職員、数百人の退去を命じた。米議会が新たな対ロ制裁法案を可決したことへの報復として、強硬な姿勢を示した。

 

これが強硬なら、オバマが去年やったことは何なんだと言いたいものがあるけど、これが強硬だ、とアメリカ側が認識しているところが面白いところでしょうね。

ロシアの提案では、在ロシアのアメリカ大使館関係者の人数を、アメリカにいるロシア大使館関係者と同等まで縮小する、ってことらしい。その人数は450人ぐらい。

じゃあ現在どのぐらいアメ人関係者がロシアにいるのか。1100人ぐらいらしい。だから、半分はアメリカに帰れ、となる(ただし、ロシア市民の大使館勤務者もいるので全部がアメリカ人ってことではない模様)。

いやぁ、この提案は、ロシアの中の、国権派っつーか「ロシアはロシアだ」派っつーか、ほとんど全員というか(笑)が、大喜びしていると思う。みんな、アメリカ大使館こそ騒動の巣、カラー革命の本拠地と思ってるから。

要するに工作するからこそ人数がいるわけでしょ。それをズバリ突かれて大慌てで、抗議している米の大使がなさけない。

米大使館はロシアの措置を批判したものの一段の発言は避けている。テフト駐ロ米大使はロシアの動きに対し「強い失望と抗議の意志を表明した」と、大使館が電子メールで声明を配布した。ロシアからの通知は検討のためワシントンに送ったとしている。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-07-28/OTSRAY6TTDSD01

ロシアは地域のつまんない国にすぎないんだ、とオバマやマケインが言い続けていたんだから、そんな大人数いらないんじゃないの、と誰か突っ込めばいいと思う。あはは。

 

■ 多段階対応が可能なロシア

しかし、表に出て来たのは大使館の人数だが、ロシア国内では別の対応策が言われているらしい。

例えば、ロシアにおける米国のIT企業の活動停止、米国産農業製品の輸入禁止、チタンの輸出禁止、など。

ああ、チタンかと思いましたね、私は。

このエントリーの中で、今回の対露制裁について、米企業も反対している、と書いたけどそこにボーイングもあった。

米議会、ロシア、イラン、北朝鮮をターゲットに制裁案を可決

 

ボーイングは、ロシア製造のチタンの輸入者。というよりロシアにジョイントベンチャーを立ち上げてチタンの確保に余念がない。エアバスもそう。そりゃそうでしょう、チタンってソ連時代から戦略物資としていろいろ駆け引きが行われていたもの。全般的に、ソ連地域の方が原料的に有利で、ソ連の製造技術も高いというので、アメリカがむしろ虎視眈々だった分野と言っていいんじゃないかと思う。

で、現在世界最大のチタンメーカーはロシアの会社。VSMPO-AVISMA

だから、このへんのプロジェクトを止められたら、ロシアが損するというより、西側の混乱の方が大きいでしょう。

 

次の段階は、多分、核燃料。

ロシアが米に核燃料を輸出することになる、ってのは2年ぐらい前書いたと思うけど、現実に着々とそうなっている模様。

先ごろ、テスト用の燃料を送って、試験を重ねて2019年には本格的に米で使われるらしい。

Russia to deliver test batch of nuclear fuel to US reactor in 2019

https://www.rt.com/business/393269-russia-us-nuclear-fuel/

 

ではなんでアメさんはロシアが嫌いだ嫌いだと言いながらも核燃料を買うのか。

それは、アメさんのウラン濃縮キャパが小さいから、じゃないですかね。ヨーロッパ(フランス、オランダ、ドイツ、UK)がむしろ大きなキャパを持っている。

その前に、後ろに、ソ連崩壊後からのMegaton to Megawattsプログラムとか、その実行主体だったUSECの倒産とかいろいろ複雑なことがあるのだが、それを超えて現状は、なんせ米の単体のでのキャパは小さい、以上、って感じ。

ウラン濃縮についてこのへんの専門サイトが詳しいことを書いている。

http://www.world-nuclear.org/information-library/nuclear-fuel-cycle/conversion-enrichment-and-fabrication/uranium-enrichment.aspx

 

それに対して、全世界のウラン濃縮キャパにおいて、非常に大きなシャアを持っているのがロシア。上のWorld Nuclear Orgの表組によれば、ほぼ半分。中国、フランス等が拡張する2020年でも4割ぐらい。

このうち劇的に伸びるのは中国ぐらい。あとはそこそこの増。そして、ヨーロッパ分のうちドイツ分は自分んちがシャットダウンしたらこの先このあたりのキャパをどうするのだろうという気もする。欧州はおおむね、Urencoという会社がオペレートしているので、ドイツ単体で何ができるという話でもないが。

アメリカとしても、世界的にどれだけ脱原発のトレンドがあろうとも、また、なんでもかんでもシェールガスでやれという国内業者のプッシュがあろうとも、アメリカの電力の20%ぐらいは今でも原子力なので、このへんをおざなりにできないっしょ、やっぱり。このへんの問題がクローズアップされたら、文字通り、製造業潰すのかという話になるんじゃないっすかね。

キャパについて日本語で見られるのはないのだろうかと思って検索したら、日本原燃が世界のウラン濃縮工場と資源量というサイトを作っていた。

http://www.jnfl.co.jp/ja/business/about/uran/summary/ref1.html

これがしかし、上のWorld Nuclear Orgの数値と全然違う。この差異は何なのだろう。この際の興味課題として取っておこう。

それでも、いずれにしてもロシアがデカいことは変わりないっすね。

要するに、ロシアのキャパが今後ロシア周辺の、イラン、トルコ等々の今後原発をやりたい国にとっての供給源となることは確定だなってのはトレンドとして間違いないんでしょう。西側にはそれに対応できるキャパはない。自分んちで精いっぱい。

 

そういうわけで、ロシアを西側から切るかのような試みって、控えめに言っても双方に影響大有りっしょ、と思うのだった。

プーチンが前から、制裁はダブルエッジ、両刃であることを強調しているのは、まさにそれを、うふふふと思いながら言ってるんだろうなぁって感じ。

そして、チタンにせよウラン濃縮キャパにせよ、金があったらすぐなんとかできるという話じゃない、相応の技術力と長期的な戦略がしっかりしてないとどうもならんという話なので、こういうところを指して、ロシアなんてミサイルを撃てるサウジアラビアだ~とか言っていたマケインは何なんだというところ。

ボーイングとか頭抱えてそう。ドイツがどうあってもロシアを離さないといった趣が見え隠れするのはまったく理解できる。中国はそれ自体資源大国だが人数が多いのでロシアの石油・天然ガス、ウランの利用可能性が高まって嬉しい限りと思わないわけはない。ウラン大国カザフスタンは中露関係が良好であれば、西側と冷たい関係になるオプションが見えるようになる。西側が足しげく出かけていくわけだな、以上、って感じ。

つまり、この制裁が呼び込むものは、中国、ロシア、ドイツ(or 一部EU)というパワフルな連携というところではあるまいか。


 

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『アメリカの壁政策』 (ローレライ)
2017-07-30 12:47:26
『アメリカの壁政策』はメキシコばかりかロシアにもと言う訳で『上海条約陣営』を太らす政策となる。『北朝鮮も中国の地方経済化』している。

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