deep forest

師範の私小説世界です。
生まれてからこれまでの営みをオモシロおかしく備忘しとこう、という試み。

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13・パーリーピーポー

2017-03-30 10:52:09 | Weblog
 なんだか、パーティばかりが催されるのだ。バブル期で、日本中がこんな具合いに浮かれた雰囲気だったのかもしれない。マンガ界でも、とにかくしょっちゅう、なんやかんやとパーティが行われている。まず、「なんとか賞の授賞式」というのがある。新人賞には二種類があって、月間賞、という毎月のやつと、半年に一度の大々的な、賞金も豪華なメインの賞とがある。その受賞の発表後に、いちいち(当然だが)パーティが開催される。担当編集者は、子飼いにしている飢えた新人作家に哀れみをかけ、そんな会場に呼んで養ってくれる。普段、コンビニ弁当しか与えられていないオレたちにとって、パーティは重要な栄養摂取の機会だ。この場にもぐり込むために、新人はネームを描き、担当の元に足を運ぶと言っても過言ではない。
 毎月のように、なんとかホテルのかんとかの間だ、どこどこ会館だ、なになに飯店だ、と聞きつけては、お邪魔をする。パーティは、大概の場合が立食で、要するに食べ放題だ。出版界は景気もよく、料理にも大盤振る舞いをしてくれる。鮮やかなパテが花壇のような面積で並べられ、フロアのサイドではローストビーフがコックの手でスライスされている。ふと見ると、ライチがバットにふんだんに盛り上げられ、小山を築いている。楊貴妃の好物で、都まで早馬で運ばせたという幻のやつではないか。わたくしも食してみる。うまいっ!上京したこの年は、一生で最も多くのライチを食べた一年となった。
 マンガ家ら個人も、事あるごとにパーティを開いている。出版記念だ、増刷だ、何周年記念だ、ドラマ化だ、映画化だ・・・マンガが売れて売れてしょうがない時代らしい。少年マガジンが400部発行された、少年ジャンプは600万部だ、と、夢のような数字が飛び交っている。マンガ家氏たちのふところもふくらむ一方だ。ある夜、例の酒場で仕事にへとへとになって飲んでいると、某売れっ子マンガ家さんに「カラオケにいこう」と誘われた。すでに深夜の2時をまわっている。おごるから、と言うので、やれやれと思ってついていくと、江古田からタクシーで六本木にまで乗りつけている。目の前にはお城のような建物がそびえ建つ。手を引かれるままに中に入り、ボックス席に座った途端に、両サイドにジェニファー・ビールスとジュリア・ロバーツみたいな超ミニスカートのお姉ちゃんがかしずいてくれる。呆然としつつ、なにか歌わされたようだが、記憶がない。黄色い太陽が昇らんとする帰りのタクシーの中で、支払いはいくらでした?と、後学のために売れっ子氏に訊くと、事もなげに「40まん」と返ってくる。冷や汗が流れてくる。聞かなかったことにして、眠りに沈む。
 最も大きなパーティは、出版社本体が主催する忘年会だ。このパーティは、規模が桁違いだ。有名ホテルの広大なフロアを使い、日本中のマンガ家たちが一堂に会する。アシスタントたちもお供ができるので、もちろんもぐり込む。ステージ上では、おぼん・こぼんと、細川ふみえが司会をやっている。会場内には、「お〜い竜馬」を原作している武田鉄矢や、闘魂コラムを連載しているアントニオ猪木までが闊歩している。藤子不二雄大先生が出版社幹部に取り巻かれている。江口寿史さんもいるし、内田春菊さんも森園みるくさんもいるし、もちろん楳図かずおさんもシマシマシャツでウロウロしている。なぜかいしかわじゅんさんに「たのしんでる?」と声を掛けられる。UFOから降りてきた宇宙人の格好をしたハイレグのお姉ちゃんたちが、飲み物をどうぞ、とグラスをよこしてくる。めくるめく光景だ。ステージ上では、ビンゴ大会がはじまった。弘兼憲史さんの社会派マンガを原作している猪瀬直樹が、大画面テレビをゲットして、舞台上で挨拶をしている。まったく、とんでもない世界だ。(マンガ家でない人物の敬称はなぜか略で失礼)
 しかし、そんな幻想は一晩かぎりだ。翌日には、現実世界に連れ戻される。四畳半一間に四人が雁首を並べ、時給333円なりで夜明けまでペンを走らせている。うちのマンガ家氏も相当な原稿料をもらっているはずなのだが、この出し渋りっぷりはどうしたものだろう?ページ一万円をもらっているとしても、毎週20枚で、月に四週だから・・・それくらいの月収にはなっているはずだ。なのに、仕事が長くなると、「長引いた分は、アシ代サービスしてね」などとのうのうとのたまう。銭ゲバだ。次第に、やつの性格の悪さにも我慢がならなくなってくる。ここから抜け出すのが、喫緊の課題だ。タイトなタイトな時間を使い、オレは自作品を描きはじめた。

東京都練馬区・陶芸教室/森魚工房 in 大泉学園
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