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国連総会における鳩山演説 - 海外の反応

2009-09-27 01:10:39 | 友愛

本当に鳩山総理の国連演説は絶賛されたの?

結論から言えば、鳩山さんの国連演説ほとんど注目されていません。 

第64回 国連総会のフォトギャラリーに、鳩山総理の写真が1枚も使用されていないことから、鳩山イニシアチブへの関心がどの程度なのかは推測できると思うのですが、それだけは不十分だと思いますので、ほかの海外の記事も紹介してみます。

USA Todayの国連総会に関する記事一覧でも、鳩山総理は全く取り上げられていません。ニューヨークタイムズやワシントンポストなどの主要な海外紙にも書かれていませんでした。

BBCの記事(UN chief praises climate summit)でも、注目を集めているのは中国で、鳩山総理の発言は以下の短い紹介のみでした。(日本は環境問題の優等生なので、問題児の中国よりも注目されないのは仕方ありませんが)

The new Japanese Prime Minister, Yukio Hatoyama, pledged to reduce emissions by 25% by 2020 compared to the 1990 level, calling it the Hatoyama Initiative

ロイター通信の記事も、中国の記事(China and U.S. try to jumpstart U.N. climate talks)のついでに書かれているだけですね。しかも、否定的な視点です。

New Japanese Prime Minister Yukio Hatoyama won plaudits for pledging to offer more aid to help developing countries deal with climate change and repeated his goal of reducing Japanese greenhouse gas emissions by 25 percent from 1990 levels by 2020.

Hatoyama also proposed setting up a framework to coordinate climate change aid, but did not give details of how much cash or what kind of technological assistance Japan would provide.

太字部分の『具体的にどうするか説明がない』というのが、海外の注目が低かった理由でしょうね。

Bloombregの記事 (Hatoyama Tells UN He Will Boost Japan’s Recovery) だと、さらに短くなってます。

Hatoyama, who came to office Sept. 16 after his Democratic Party of Japan won a landslide victory in last month’s election, said his government wants to stimulate household spending and cut greenhouse gas emissions 25 percent by 2020.

日本の記事を扱っているJapan Times の記事(Hatoyama to vow action in first U.N. address)もコレだけ

He will again reiterate Japan's pledge to aim to cut back on greenhouse gas emissions by 25 percent by 2020 from 1990 levels, a target that won praise when he declared it at a U.N. summit on climate change on Tuesday.

Japan Todayを見たら、やっと単独記事(Hatoyama pledges on world stage 25% emissions)が掲載されていました。でも…

Hatoyama said in a speech at the U.N. climate change summit in New York his government is ‘‘resolved to excise the political will required to deliver on this promise by mobilizing all available policy tools.’’

"excise" を税金って翻訳すると…

彼の政府は『この約束のため、すべての利用可能な政策手段を用いて、政治的な意思を実現するための税金が決議された。』と読めてしまうのですが…。
環境税は、折り込み済みってことですか?

25%削減の前提条件がない!?

さて、海外の新聞記事を読んで気が付いたのですが、25%削減の前提条件 ”全ての主要国の同意” について、言及している新聞がありません。

どうしてなのかと思ったら、その理由を説明したBLOGがありました。

二枚舌翻訳(永田) カムイスペースワークスブログ-CURURU

外務省のリリース文書を引用し)

さて、鳩山英文の話です。問題となるのは以下の部分です:

The commitment of Japan to the world is premised on agreement on ambitious targets by all the major economies.

日本語訳では以下のようになっています:

「すべての主要国の参加による意欲的な目標の合意が、我が国の国際社会への約束の「前提」となります。」

けれども、この英文を素直に読むと、

「国際社会への我が国の約束は、すべての主要国(all the major economies)による意欲的な目標の合意(agreement on ambitious targets)を基盤とするものです」

と言っています。「is premised on」と現在形で書かれているのがミソです。もし、「これから主要排出国が枠組みに合意すれば、そのときには日本は」と主張するのであれば、未来形で書くべきでした。現在形で書かれていますので「すべての主要国(all the major economies)による意欲的な目標の合意(agreement on ambitious targets)」の部分は、「過去に行われ、既に存在している合意(例えば、京都議定書)」と理解することが可能になってしまいました。

仮に意図的な二枚舌翻訳ではなかったとしても、結果としてはそうなってしまっています。鳩山演説を伝える海外メディアで、それが条件付のものであると報じているものは、僕が確認した範囲では皆無です。反例が有れば誰か教えてください。日本は、無条件で25%削減することを国際公約してしまいました。「主要排出国が参加すれば」という前提条件は、いずれなし崩し的に外されるだろうなと思ってましたけど、予想通りです。

同じことは、某匿名掲示板でも指摘されていました。


268 日出づる処の名無し sage ▼ New!2009/09/23(水) 17:07:23 ID:ifKsNXQF
じゃあ一点だけ、かなり悪意ある誤訳を指摘しておこう。
The commitment of Japan to the world is premised on agreement on ambitious targets
by all the major economies.
は、外務省の日本語版原稿には
>すべての主要国の参加による意欲的な目標の合意が、我が国の国際社会への約束の「前提」となります。
となっている。でも、この英文を普通に解釈するなら、"ambitious targets"はすでに実行されたものとしか読み取れない。なぜなら、premiseは以前からある(pre)ものの状態にすること=前提とする
だから。というわけで訳すなら、
>日本が世界に対して約束したことは、全主要経済大国が掲げた意欲的な目標への合意に立脚しているのです。
言い換えると、このambitious targetsは京都議定書を含む「これまでの意欲的な合意」なので、
国際的合意はすでにあることになり、(premiseだから当然だけど)
無条件でやる約束にしかならない。
日本文のように他国に注文を付けるなら、As long asを使うか、
requires futher steps by all the major economiesみたいな追加措置をはっきり明示しないと
明らかに駄目だろう。

276 日出づる処の名無し sage ▼ New!2009/09/23(水) 17:22:52 ID:ifKsNXQF
>>273
少なくとも、私が>>271にあげた文章を読んだ時には、ambitious targetsは
これまでの合意のこととしか思えなかった。

百歩譲って仮にそういう意図がなかったとしても、>>271みたいな誤解だか曲解だかを
しても100%意味が通る文章になっていることだけは間違いない。普通、そういう相手国が
都合の良い解釈をできる部分で、自国側が絶対譲れない部分ってのは、100%誤解の
しようがないような文章を構成するものなのに。

どうして、こんな文書になったのかについて、9月23日付の産経新聞に書かれていました。

22日の国連気候変動首脳会合でも「民主党流」は貫かれた。首相演説自体が、民主党内で地球温暖化対策に取り組んできた福山哲郎外務副大臣が中心に作成した文書で、外務官僚らには、触れさせなかった。

外務省が作成したわけじゃなくて、民主党の議員さんが作成したわけですね。しかも、外務省に内容のチェックもさせなかったと。もう、なんと言えばいいのやら…。

蛇足ですが、その後の鳩山さんと民主党の対応について、書いておきます。

NHKニュース “成果 国際公約として表明
「日本は世界から非常に期待されている。日本の産業界は、これから厳しいと思うが技術力というものが絶対に必ず解決する」
「ニューヨークでの成果は、やはり気候変動だ。世界の皆さんから、日本が変わったというメッセージが伝わった。削減目標は日本の皆さんの知性が必ず解決する」

(本当に他人任せの人なのですね…。自民党のCMが思い出されます。)

NHKニュース 25%削減策 取りまとめ指示
直嶋経済産業大臣は、鳩山総理大臣が国連の気候変動サミットで温室効果ガスの25%削減を国際公約として表明したことについて、実現に向けた対策などを早急に取りまとめるよう関係部局に指示しました。

(『どうやって25%削減するかは決めてない。今、官僚に「なんとかしろ」と丸投げしてきた。』ですか。)

最後に、フォローの意味を込めて、朝日新聞の社説を紹介します。

日本語にしにくい英単語がある。「イニシアチブ」は率先、主唱、主導権などと訳すが、どうもしっくりこない。そういう振る舞いは私たちの柄でないのかもしれない。とかく「出るクイ」を疎む国民性である
ゆえに新鮮、かつ胸のすく姿だった。国連の気候変動サミットで、温暖化ガス削減の新目標を打ち上げた鳩山首相だ。前政権の3倍超という野心的な数字は、喝采の中で国際公約になった
大排出国の米国、中国は牽制(けんせい)し合い、大した約束をしていない。新首相のスタンドプレーで国民や企業が不公平に泣くことはないか。そんな懸念もあろう。外交舞台では人気者より、ずる賢い嫌われ者が国益を守ることがままあるからだ
だが、人類の存亡にかかわる危機は切迫している。主要国のどこかが「地球益」を抱えて駆け出さなければ何も動くまい。そして日本が走るなら、政権交代に世界の目が集まる今である。途上国支援を鳩山イニシアチブと自称したのも、日本の型を破る自己主張だった
もちろん、欧州勢は絶賛だ。海千山千たちにハシゴを外されないよう用心しながら、これからも得意の「非軍事」で汗をかくのが日本の正道だろう。そうして蓄えた国際社会の尊敬と信用は、いずれ国を救う。目先の、ちまちまとした損得よりよほど意味がある
この国が、慣れぬ手で握りかけた主導権だ。かくなる上は米中や途上国を動かし、国内の説得に努めるしかない。「格好よさ」に見合う責任が鳩山政権にのしかかる。追従しない外交とは、本来そういうものである。  

…なんというか、実情と乖離した社説ですね。某宗教団体が発行する新聞を思い出します。

最後に

海外の記事の全般を通して、『前任者の麻生総理の削減案が低い評価を受けたのに対して…』という記述が多かったです。鳩山さんが環境問題をアピールし始めたのは、最近のことだと思いますので、『地球温暖化を防ぎたい!』という理念ではなく、海外の人からも、『鳩山さんのほうが麻生元総理より総理大臣にふさわしい』と褒められたい願望から来てるのではないかなと感じました。

本当に地球環境を考えているなら、オバマ大統領との会談で、オリンピック誘致への協力を求めるより、CO2削減について話し合うべきだと思いますが、海外の新聞によると、環境問題に関する会話は一切しなかったそうです。(この辺は、あとで書きます。)

 


2 コメント

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Unknown (通りすがり)
2009-09-28 00:11:02
はじめまして。検索からここにきました。
何という人が総理になってしまったのかと、今更ながら悔しい思いでいっぱいです。
マスコミは相変わらず、民主の耳に痛いことは口にしません。
国際会議の場で、本来麻生さんの方が認められていたし評価を受けていたにもかかわらず、これもマスコミが一切報道せず。
あの総理を圧倒多数で破った人がどんな人かと海外ではみていたそうですが、これがトンデモな人だったので驚いたそう。
一番は海外で悪評高い宗教に関わっていると思われたこと。
日本ではあまり知られていませんが、確かに鳩山さんがグラウンドゼロに献花できなかったのも納得できます。
「日本国民が選んだの?」と海外の知人には言われました。
「日本人は賢いって聞いてたのに…」と友人の私にはさすがに感情を隠していたようですが、どうやら国民まで笑いものになりつつあるようです。
少なくとも「日本国民」の生活を考えてくれるならいいのですが、そうでもなさそうですしこれから本当に大変になりそうです。
日本の傷が浅いうちに政権交代と、毒にしかならないマスコミへの責任の明確化を望みます。
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Unknown (でっかーど)
2009-09-28 00:25:36
こんにちは。
海外での麻生さんの評価は私の知る限りでは『失言が多いことで有名な』と紹介されていることが多かったです。靖国参拝について言及しないなど、外交的な発言は、歴代の内閣の中でも波乱を呼ぶようなことはしてなかったんですけど、ワイドショーにくだらないことで叩かれていたのには同情しました。

鳩山政権は…なってしまったものは仕方がありませんから、どれだけ資産が減らないようにするかを考えるしかないでしょうね。

自分らみたいなリーマンには、かなり負担を強いてくる政権なので、覚悟はしています。
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