雑記帳

日常の出来事や、読んだ本のあらすじや感想など書いています。

走らんかい!岸和田だんじりグラフィティー

2012-09-04 20:49:24 | 

中場利一著"走らんかい!岸和田だんじりグラフィティー"
を読みました。
だんじりにあけくれる中之濱(なかんば)の青年団の話です。
高校生の岡部ヤマトが主人公です。
父親が中之濱育ちですが少し離れた所に住むように
なってもしょっちゅうだんじりのために家を空けています。
家族は父と息子の二人です。
ヤマトはいじめられていて引きこもり勝ちです。

中之濱に引っ越すことになります。
中之濱は年がら年中だんじりであけくれます。
いつも家には誰かがきています。
知らない人までが来ているそういう町です。
隣の家の同い年のケンタは漁師で青年団員です。
元気のいい子です。
町中の人が知り合いで密接な付き合いをしています。
ケンカ騒動はしょっちゅうです。
ヤマトは自然と青年団に取り込まれてしまいます。
ケンカの仕方もケンタに教えられ学校でいじめをする
相手と啖呵をきって戦えるようになります。

だんじりは激しい祭りなんですね。
曲がり損ねると家に飛び込んだりだんじりの下敷きに
なって死んだり、高いところから振り落とされて
けがをしたりします。
3日間走り回るのですから体力がいります。
走り回るのは若い青年団員しかやれません。
祭りは年1回ですがだんじりを曳き出したくてしょうが
ありません。
だんじりを新築したり改修したあとに魂を入れて
他の町内のだんじりに挨拶周りをします。
この時にこそっと自分たちのだんじりを曳き出すことを
泥棒曳きといいます。
警察が目を光らせていますから簡単にはできませんが
エネルギー溢れる若者達はその目を盗んで動かしたくて
しょうがありません。

ヤマトはすっかり変わりました。
中之濱の若者の一員になりました。
七瀬という女の子と出会います。
女子プロレスラーになりたいという元気な子です。
ヤマトと七瀬は惹かれあいます。
七瀬は母と二人暮らしです。
ヤマトの父は母のことを聞くと言葉を濁します。
七瀬の母も父のことを聞くと同様です。
町内の人達は彼らの家族のことを知っている模様です。
しかし全員何も語ろうとはしません。
ヤマトと七瀬は自分達が双子の兄弟なのだろと
感じています。
それでも強い恋愛感情で付き合っています。
しかし結局は別れることになります。

兄弟だとわかっていてそういう感情になるということは
ずっと離れていたのですからあるのかも知れません。
しかしわからないのは親や近所の人達が過去のこと、
真実を語らないということです。
隠しておく必然性が何もないのに何で真実を語らない
のだろうと首をひねるばかりです。
ヤマトと七瀬の恋愛部分はこの話に不必要ではないかと
いう気がします。

だんじりというエネルギーを注ぎ込めるものがあると
いうことは幸せなことですね。

コメントを投稿