韓国労働運動情報

民主労総はじめとした韓国労働運動関連記事の翻訳

[セウォル号沈没] 「昨年の旅客船合同点検、一部の検査は1隻当たり13分」

2014年04月20日 08時48分18秒 | その他

[セウォル号沈没] 「昨年の旅客船合同点検、一部の検査は1隻当たり13分」

毎日経済ドットコム速報部 2014.04.19 15:24:37入力

(韓国政府)当局が昨年7月、大々的に旅客船安全事項を点検したものの、一部の検査では旅客船一隻を検査するのにわずか13分しかかけていないことが分かった。


市民団体「透明社会のための情報公開センター」が19日公開した海洋警察庁・海洋水産部合同安全点検結果によると、木浦(モクポ)海洋警察署は2時間40分かけて12隻の旅客船を点検した。1隻当たりおよそ13分かけた計算になる。
さらに、点検班の人員も、木浦(モクポ)海洋警察署海上安全課長と海洋水産部担当事務官の4人に過ぎなかった。
当時当局は、点検の結果「特異点なし」との結論を出した。

統営(トンヨン)海洋警察署の点検内容も不十分な点では同じだった。
当時、統営(トンヨン)海洋警察署海上交通係長と海洋水産部担当主務官の4名は2時間かけて2隻の船舶を点検した。
しかしこれは、点検対象として明示されていた22隻のうち2隻に過ぎない。


情報公開センターは、「救命設備の配備・管理実態の点検、船内放送の正常稼動確認等、内容も形式的」だとし、「綿密な点検があってこそ事故発生時に直ちに対応することができる」と指摘した。

一方、セウォル号が沈没したメンゴル水道について、屏風島近隣の海域は年平均4回、海洋事故が起きる地域だということも明らかになった。
情報公開センターが海洋警察庁の2007年から2013年の海上遭難事故統計を分析した結果、この地域では過去7年間に計28件の海洋事故が起き、1名が死亡し、238名が救助されている。■

 


‘危険の外注化’が国民の健康を脅かす

2014年01月18日 13時42分58秒 | 外注化問題

‘危険の外注化’が国民の健康を脅かす

 2013/05/29

チェ・ミョンソン/民主労総労働安全保健局長

 

昨年〔2012年〕後半より重大事故が相次いでいる。昨年8月のLG化学清州(チョンジュ)工場爆発事故(8人死亡)、景福宮現代美術館事故(4人死亡)、9月亀尾(クミ)工業団地フッ化水素流出事故(5人死亡)に続き、12月には蔚山(ウルサン)作業船転覆事故(12人死亡)があった。今年初めにはサムスン華城(ファソン)工場フッ化水素流出事故に続き、3月に麗水(ヨス)産業団地の大林(テリム)産業、5月には現代製鉄唐津(タンジン)で5~6人が死亡した。

 

OECD労災死亡1位の大韓民国

 

ここ十数年間、毎年平均約2400人が作業現場で死亡している。韓国はOECD国家中、労災死亡1位の国だが、最近のように重大災害による労災死亡が続出している例は珍しい。

労働災害は、一部の労働者だけの問題ではなく、国民の健康権や生命権と直結する問題だ。これは亀尾フッ化水素流出事故に明確に表れている。5人の犠牲だけでも大変な問題だが、この事故で住民約300人が避難し、およそ1万 3千人が健康診断を受け、災害地域宣言と554億の被害補償へとつながった。事業場の中のずさんな化学物質管理の被害を地域住民にそっくり及ぼしたのだ。これは亀尾工業団地だけの問題でない。

フッ化水素流出があったサムスン華城工場は、集合住宅や大型商業施設に隣接している。このように事業場が集まっている各種産業団地は、団地造成以降に進んだ地域開発により、清州産業団地のように都心の真中に立地するケースが多くなった。

隣接地域でない場合も同じだ。10日に一度の割合で爆発事故がおきている蔚山産業団地は、がん発生率全国1位の地域だ。化学物質と発がん物質が大気と土壌、地下水に排出され、地域住民の健康を脅かしている。

麗水産業団地でも、今回の大林産業爆発事故だけでなく、殺人ガスであるホスゲン流出事故もあり、1級発がん物質が119トン排出される発がん物質排出全国1位の産業団地だ。

では首都圏の事情はどうか。有害化学物質管理法上、有毒物質とされる628種の化学物質を取り扱う業者は全国に6874ある。そのうち最も多くの業者が分布している地域が京畿道・ソウルだ。

このように全国に散在している化学物質事業場を見たとき、労災事故は特殊分野の労働者だけの問題でなく、すべての国民の健康権の問題だということがわかる。

 

新しい職業病、感情労働

 

事故による労災だけでなく職業病の問題も深刻だ。最近では‘感情労働’が関心を呼んでいる。

感情労働とは、“俳優が演技するように、感情を押し隠して行う労働を強要されること”で、有名芸能人のパニック障害の例で広く知られている。

だが感情労働は、私たちが毎日目にしている流通売場のサービス労働者、電気検針員、銀行窓口職員、公務員、病院労働者などほとんどすべての事業場で‘顧客の感動’のスローガンのもとに激しく行われており、その結果は人事考課に反映される。

 感情労働の労働者は最近報道された社会福祉公務員やデパート店員の自殺の例のように、過度のストレスにさいなまれており、パニック障害や適応障害、うつ病など精神的・物質的に苦しめられている。

 あるお笑い番組のネタである‘難癖顧客’と‘チョン女史’の人気の土台には、日常的に感情労働に接している視聴者の共感がある。

 政府レベルの対策がない中、先週ハン・ミョンスク議員が関連法改正を発議し、シム・サンジョン議員も感情労働労災補償法案を発議している。

各種事故から精神疾患に至るまで、‘危険社会’へと転落している労働現場の問題の核心には、雇用構造と産業構造の変化に追いつけていない労働災害政策と法制度がある。

第一に、最近の大事故は下請け労働者に集中している。‘危険の外注化’にともなう結果だ。

発注元が外注する最大の理由は、危険業務だからだ。発注元のラインで働く数千名の下請け労働者は、安全教育も保護具の支給もない中で危険業務を担っている。財閥大企業をはじめとする発注元事業主は、彼らに対して労災予防責任も事故に対する処罰も労災保険料負担も負わない。危険な業務は外注下請けに回して、年に数百億の労災保険料還付という利益すら享受している。

こうしたずさんな法制度のもとで下請け労働者は急速に増加している。造船業は、10年前と比べて発注元の雇用人員は変わっていない反面、下請け労働者は10倍以上に増えている。生産ラインをすべて下請け労働者でまかなっている事業場も多い。

財閥大企業が下請け雇用や特殊雇用によって危険を外注化する代価は、結局のところ重大事故の発生と発がん物質の露出へとつながり、国民の健康権と生命を脅かし、社会的費用を増大させている。現在の雇用構造に見合う法制度改善が急がれる。

 

変化した雇用構造、産業構造に遅れをとった労災対策

 

 第二に、サービス産業の比重と従事者の規模は拡大しているものの、従来の製造業・建設業中心の政策は変わっていない。

 サービス労働者は、事故による災害よりも職業病や感情労働の問題にさらされるが、現行の法制度のどこを見ても、これに対する対策はない。

 産業構造と雇用構造の変化が重なっている部分もある。宅配やバイク便、建設機械、トラック運転などの場合だ。

 貨物運送の規模が拡大し、建設機械施工の比重が高まっているが、労災予防対策自体が不十分なうえ、ほとんどが特殊雇用職労働者であるため、労災予防と補償の死角地帯に追いやられている。 このことが運輸業と建設機械分野の事故増加へとつながり、その被害も、労働者だけでなく国民にまで及んでいる。

 私たちの社会が危険社会へと転落している現実の土台には労働者の労働災害があることを明確に認識しなければならない。雇用構造と産業構造の変化にともなう労災予防、補償、処罰対策が講じられてこそ、労働者の死の行進を防ぐだけでなく、健康な未来は保障される。

 

2013.5.29 「創作と批判」週刊論評


李明博政権による発電労組労働弾圧白書(前書き)

2013年12月10日 12時18分37秒 | 公共部門民営化

李明博政権による発電労組労働弾圧白書

韓国発電産業労働組合

発刊に寄せて

リンゴ、ナシ、トマトの隠された真実

 「労組員の状況を『中まで白いナシ』というように分類する会社があります。労組を破壊するために、ある公企業が執拗に行っていることです。」2011年1月16日、MBCニュースデスクの主要ニュースとして東西発電会社における労組破壊の蛮行が報道された。組合員の傾向を「リンゴ、ナシ、トマト」と分類し、労組脱退に反対した職員は勤務地を移動させ、インセンティブから排除するという内容まで取り上げられた。そして、民主労総脱退の賛否を問う投票の投票箱を会社側が不法に開けようとして失敗したという衝撃的な内容まで公共の電波で伝えられた。ニュースデスクでの報道以降、マスコミ各社はこぞって発電会社の不当労働行為について報じた。
 
 しかし、こうした社会的非難にもかかわらず、発電各社は、東西発電をはじめ西部、南部、中部、南東発電に至るまで、先を争うように不当労働行為を行い、結局、発電5社のすべてにおいて会社労組が設立された。発電会社は、強制配転、昇進機会の剥奪、人事考課における差別、個別的な不利益圧力などあらゆる手段を動員し、発電会社の脅迫と弾圧により現在81.3%の組合員が発電労組を脱退している。その過程で発電労働者は、単なる脅迫を越えて、深刻な人権蹂躙にさらされた。労働組合脱退書に署名しなかったとして業務決済を拒否されたり、休暇申請が突き返されたりするのは普通だった。労組脱退を迫るための部署別会食や個別面談が日常的に行われ、管理職は夜な夜な組合員の自宅前で2時間以上電話をかけまくり組合員を呼び出した。労働組合を脱退しなければ遠距離事業所に強制配転するとの脅しに、家族の暮らしを心配して夜を明かし、結局、自らの信念を貫いて弾圧に屈服しなかった組合員は、西海から東海へ、南海から西海へと強制配転させられた。家に老母を置いてきた労働者は、400km離れた地で寝ても覚めても母親のことを思って暮らさねばならなかった。がんで闘病中の妻を持つ労働者は、配転先にがん治療のできる病院がなかったため、泣く泣く妻と離れて暮らさざるを得なかった。発電会社は民主労総脱退と発電労組破壊に血眼となり、労働者の基本的な人権さえ容赦なく踏みにじった。自らの良心を守って発電労組に残った労働者も、脅されてやむなく信念を曲げさせられた労働者も、誰もが涙の日々を送らねばならなかった。そして今も発電労組労働者の血の涙は流れている。

 これまでも発電会社の支配介入は存在した。だが、かつての支配介入は選挙や投票の時に隠然と行われていたのに対し、発電労組破壊の過程では、発電会社は、強制配転、昇進、人事考課などで露骨に脅迫し、不法行為を惜しみなく総動員した。これは単に発電会社の経営陣の意思だけでは絶対に不可能なことだった。その後、労働組合による真相調査の過程で、一連の労組破壊行為が韓国電力、知識経済部、警察庁、労働部、経総〔韓国経営者総協会〕、青瓦台〔大統領府〕に至る政権レベルの企画と支援のもとに行われたという事実が次々と明るみに出ている。

 2009年9月、パクヨンジュン(ヨンポ会)次長の主催で行われた「労使関係主要懸案報告」と、9月24日の「雇用労使秘書官主宰BH(青瓦台)会議」におけるイヨンホ秘書官の「発電労組強硬対応」注文の直後、発電会社の労使関係は破局を迎えた。10月初め、ヨンフン火力発電所支部に対する標的解雇が行われ、団体協約〔労働協約〕における労組側の大幅な譲歩にもかかわらず、発電会社は意図的に団体協約を解約した。その後、団体協約解約の当事者である東西発電のイギルグ社長は、青瓦台に報告書を提出し、強引な団体協約解約を自らの功績と言いなした。団体協約の解約以降、発電会社は発電労組の役員選挙に深々と介入し労組破壊を準備した。東西発電の蔚山火力発電所では、民主労総脱退候補の出馬の弁と公約を会社側が用意し、蔚山火力本部長主管のもと、班単位の会食、個別面談表作成など、連日対策会議が持たれた。こうした選挙介入活動は東西発電本社と韓国電力に報告され、韓国電力は民主労総脱退候補の得票率と支配介入活動を経営評価に反映させた。
 
 選挙後の本格的な労組破壊の過程で発電会社は、労組破壊計画を警察庁本庁と共有し、経過をリアルタイムで同庁に報告した。会社労組が複数労組禁止制度によって法外労組になったため、青瓦台秘書官を通して労働部を圧迫するとした衝撃的な計画も実行された。不当労働行為を調査するための国会活動を妨害するため、経総は、「東西発電に対する政界の不当な労使関係介入」とする内容の異例の報告書を提出し、発電会社の不当労働行為を隠ぺいしようとした。傘下公企業を管理監督すべき知識経済部は、東西発電に「労組関連先進化推進実績報告」なる報告書を出させ、労組破壊工作をあおった。このように、発電労組弾圧の過程は、青瓦台、国務総理室、知識経済部、韓国電力、警察庁、経総など、政権レベルで企画され実行されたという事実がさまざまに確認されている。

 政権レベルの発電労組破壊工作により、発電現場では日常的な支配介入と人権蹂躙行為がまかり通っているにもかかわらず、不法行為を行った当事者に対するいかなる処罰もなされていない。公企業メールサーバー押収という前例のない捜査まで行って、発電会社の悪辣な不当労働行為を暴く意思を示した検察は、しかし、その後すぐに担当検事を変え、証拠不十分で事件の幕引きを図った。国政監査の場で徹底的に事件を暴くとしていた労働部は、国政監査以降、口を閉ざしてしまった。李明博政権下の労働現場は、このように不法と非常識が幅を利かせている。

 発電労組弾圧の過程で行われた事実が具体的に明らかにされ、それに見合った社会的処罰が行われ、いまだ支配介入と人権蹂躙がまかり通っている現実が打開されない限り、一公企業の労使関係にとどまらず韓国の労使関係は一歩も前に進めないだろう。発電労組弾圧白書が、まちがった現実をただす一歩となることを願う。

2012年10月

韓国発電産業労働組合 第6代委員長 シン・ヒョンギュ


鉄道民営化がアルゼンチン列車惨事招く

2013年06月17日 09時11分18秒 | 鉄道

鉄道民営化がアルゼンチン列車惨事招く
新自由主義民営化後20年間インフラそのまま...毎年大型事故

 

民衆言論チャムセサン(韓国) 2013.06.14 13:32

 

 鉄道民営化の後遺症に苦しむアルゼンチンで再び大型列車衝突事故が発生し、政府鉄道民営化政策に対する警鐘が鳴らされている。
 アルゼンチンの首都ブエノスアイレス近郊で13日(現地時間)、列車衝突事故が起き、3人が死亡し、300人余りが負傷する惨事が発生した。
 1990年の鉄道民営化以後、アルゼンチンでは、20年間にわたりずさんな管理と投資不足により、ほぼ毎年大型事故が発生している。
 特に昨年2月、ブエノスアイレスで千人余りの乗客を乗せた列車がオンセ駅に入る際に線路を離脱しプラットホームに突っ込んだ事故では、51人が死亡し、700人余りが負傷している。
 当時、犠牲者の遺族は、当該企業であるTBAの投資削減が大型惨事の主要原因であるとして責任者処罰を要求した。アルゼンチンでは2011年にも列車衝突事故や、列車にひかれ死亡する事故が相次いでいる。
 アルゼンチンの鉄道部門は、1948年、ペロン政府時代に国有化されたが、1990年代初めのカルロス・メネム政府の新自由主義措置により、鉄道部門を含む国家基幹産業の大部分が民営化された。
 以後、列車や線路の保守がおざなりにされるなど鉄道サービスはますます低下し、利潤の出ない区間はサービスが廃止され、多くの村が孤立した。列車の減少で自動車が増加し、交通事故も増えた。
 このためにアルゼンチンの鉄道政策専門家らは、鉄道部門の国有化をはじめ、民間鉄道会社に対する政府補助金の廃止、鉄道交通に対する政府の統制強化、鉄道インフラに対する投資拡大などを求めている。


本の紹介 『25日 現代自動車非正規職蔚山工場占拠闘争の記録』(日本語版)

2013年04月10日 04時38分06秒 | 非正規職

本の紹介

『25日 現代自動車非正規職蔚山工場占拠闘争の記録』(日本語版)

 

著者 パク・チョムギュ
原著発行日 2011年7月29日 第1刷発行
原著発行所 レディアン・メディア(韓国)

 

 2010年11月15日から12月9日にかけて、韓国の現代(ヒョンデ)自動車蔚山(ウルサン)工場の組み立てラインにつく社内下請けの非正規職労働者が、正規職化を求めて工場占拠闘争に立ち上がった。本書はその25日間の記録である。
 上部団体である金属労組の団体交渉局長として共にこの現代自動車蔚山非正規職支会のろう城闘争を担った著者が、現場で書き留めた記録をもとに再現した25日間は、ろう城突入の過程、会社側との攻防、正規職との連帯と対立、日常直面する様々な困難、内部での討論など、緊迫した場面の連続だ。
 闘いの火点となったのは、「2年以上勤務した社内下請けの非正規職労働者は現代自動車の正規職」とした同年7月の大法院(最高裁)判決。金属労組は判決説明会を組織し、非正規職の組合員数は飛躍的に増すが、会社側は判決を無視する。この過程で非正規職労働者の自覚が促され、11月15日に怒りがはじけたのだ。
 本書で注目すべきは、現代自動車の正規職支部との関係だ。ろう城闘争に対し、食料搬入作戦など正規職組合員の支援行動が展開される一方、正規職の指導部は、非正規職の闘いをお荷物扱いし、ろう城を乱暴に収拾させようとする。そもそも現代自動車工場で非正規職が増大したのは、97年の国家不渡り危機以降吹き荒れた整理解雇の嵐の中で、2001年に正規職労組が、非正規職を16.9%まで使用することで使用者側と合意したからだった。
こうした現実を見たとき、非正規職の増加を許し、さらには正規職と非正規職の共同闘争を困難にしているのは、両者の存在形態の違いなどではなく、労組指導部の問題であることが突き出される。
 本書は、25日の描写の折に触れ、こうした非正規職増加の背景や、全国の非正規職闘争の歴史を説き起こす。
 労組経験の浅い、若き非正規職指導部の姿も新鮮だ。時に敵の罠にはまり、時に動揺し、しかし組合員に支えられ、団結のみに依拠して踏ん張りぬく姿が、美化することなく描かれる。
 ろう城闘争で世論が非正規職問題に注目しはじめたさなか、北朝鮮による延坪島砲撃事件が発生し、闘争に少なからぬ打撃を与える。南北分断下の労働運動の困難性を突きつける現実だが、「現代自動車蔚山工場――ここが戦場だということを示してやろう」とツイッターを使って跳ね返してゆく。
 日本の現実と同じ点、違う点、強く励まされ、深く学ばされる一冊である。

(全国労働組合交流センター発行『月刊労働運動』2013年4月号より)

 

日本語版 2013年4月1日発行
翻訳 広沢こう志
A5版 240ページ
頒価 1000円
発行 労働者学習センター
    千葉市中央区要町2-8 DC会館
    Tel 043-222-7207
    Fax 043-224-7197
    E-mail:doro-chiba@doro-chiba.org


巨大な反核大衆闘争を労働運動の転機に! 日本労働者運動の奮闘

2012年08月13日 09時58分32秒 | 国際労働運動

巨大な反核大衆闘争を労働運動の転機に!

「闘う世界の労働者」⑩ 日本労働者運動の奮闘

労働者運動研究所 2012.07.27 18:00

 7月16日、東京では「さようなら原発10万人集会」が開かれた。この集会には何と17万人が参加し、原発稼動阻止に対する日本民衆の意志を確認することができた。主催者はそれぞれだが毎週金曜日に首相官邸の前で開かれる集会にも十万人を越える群衆が集まっている。

 全国各地で原発反対運動を行う市民は、首相官邸の前での集会を各県、各市町村にひろげようとしている。本稿では、巨大な大衆闘争の中で日本の労働組合はどのように活動し、原発下請け労働者の組織化のためにいかなる努力を行っているかを紹介する。

 多数の組合員が反核運動の主体

 日本の労働組合は社会変革の性格がかなり弱まり、労働組合の名が全面に出る闘争もなかったが、反核集会への組合員の参加は圧倒的で、労働組合の旗も無数に見られる。7月16日の集会パンフレットにはJR総連、全労連、連合の加入する連帯組織である平和フォーラム、全労協など巨大労組の席配置があらかじめ書かれていた。それだけの組合員の参加が予想されるということだ。

 福島事故以降の反核集会には、それまで運動に関心がなかった市民も多数参加しているが、組織された労働者も反核運動の大きな軸を担っている。規模が大きい労働組合以外の少数労組の組合員も、7月16日の集会だけでなく首相官邸前での集会のような、いわゆるインターネットを通じて組織されたといわれる集会に自発的に参加するなど、反核運動に積極的に参加している。労働組合の中には、福島事故以前から反核運動に参加しているところも多く、原発がどのような下請け体系のもとで稼働しているのか、こうした体系が労働者をいかに搾取し、危険にさらしているのかを告発する役割を果たしている。

 福島の労働組合

 福島現地の労働組合の状況はまた異なる。福島現地の労組は、労働組合として反核運動に連帯するだけでなく、原発事故の被害者としてその権利を主張しなければならない。

 福島の労働組合は様々な課題を抱えている。放射性物質から少しでも安全なところに避難するのは福島住民の権利だが、労働組合がこうした権利のために何をできるか? 原発事故によって職を失った労働者、職を失うことを恐れて避難したくてもできない労働者と共にどのような闘いをすべきか?

 福島のある自主企業は、他の地域の労働組合に協力を求め、全組合員の家族を福島に隣接する山形県に避難させたという。家族はそこで暮らし、組合員は福島に出勤する生活を送っている。

 だが、こうしたケースは特異な例で、大多数の労働組合にとってこうした選択は困難だ。

 全国自動車交通労働組合連合会(以下全自交)の福島支部で昨年行われた議論では、「避難した場合、その地域での就職はどうするか」、「派遣、短期雇用だけを転々とした娘がやっと正規の職を得た。この会社はどんなことがあっても必ず出勤しろと言う。娘だけを残して避難することはできない」「看護師である娘の友人は、1週間自主避難をしたところ解雇された。解雇が恐ろしくて避難することはできない」ということで、多くの組合員が避難を選択しなかった。

 全自交福島支部吾妻分会の執行委員長である阿部利広氏が昨年12月に明らかにした課題は、依然として福島のすべての労働組合のものであろう。

 「福島の悲劇的実態は、労働者階級が今まで当たり前のように商品として扱われてきた実態の顕在化に過ぎないと考える。『生命は地球より重い』というが、実際の労働者は機械より安いではないか。交通費を支払って現場まで自分で駆けつける万能機械は、労働力商品としての人間以外にはなく、一日の使用料はレンタカーより安く、使い捨てもいくらでも可能だ。労働者の状態を理解し、組合員の揺れる複雑な感情を担保できる、現場労働からの意識的活動家の形成、団結権を社会的に復権させ、労働組合を組織し、階級闘争が本質であるという点を福島現地に根づかせる地域的労働組合と、こうした労働組合を拠点とした全県民の運動推進が必要だと考える。」

 原発労働者をどう組織するか

 茨城大学の稲葉奈々子氏は、今年3月、ある季刊誌でフランスの事例を紹介し、日本も同じ課題を抱えていることを指摘した。フランスの「すべての原発下請け労働者の健康のための市民団体」の発起人であるフィリップ・ビラールは、人々が事故が起きることを恐れるならば、何よりもまず現時点でしなければならないことは、原発で働いている労働者の権利を擁護することだが、そのような主張をする反核運動はない、と指摘する。原発が廃炉作業に入るにしても、また、廃炉が完了したあとも、被曝を伴う作業が必要となる。こうした現実を直視する運動がなければならない。日本でこうした問題意識で運動を建設するための様々な労働組合と団体の努力が進められている。

 今年3月に韓国にも紹介された「被曝労働を考えるネットワーク」準備会は4月22日、「どのように運動を作るのか――被曝労働問題」というテーマで交流討論集会を行った。この討論会には180人余りが参加し、原発労働者を含む被曝労働全般をめぐる現実を共有した。

 討論会で報告されたことによれば、現在福島には原発や除染作業など被曝の伴う仕事しかなく、仕事場が見つかったと思ったら原発だった、というのが現実だ。若い層は「自分たちがやらなければ誰がやるのか」と、あたかも特攻隊であるかのように収拾作業に向かう。よく知られているように、原発労働者の大部分が、日雇い労働者を中心とする非正規労働者だが、これは国家が今まで見捨ててきた人々についての問題だという指摘もあった。

 「被曝労働を考えるネットワーク」は今年4月現在28の団体および個人が加わっており、このうち労働組合もかなりの数になる。彼らは「被曝労働自己防衛マニュアル」を労働者に配布し、記録映画「原発は今」を製作・上映している。

 被曝労働の問題を解決しなければなければならないと考える日本の労働組合や社会団体活動家は、すでに組織されている原発正規職労働組合が被曝に関しても団体交渉を行うよう要求し、被曝労働者の健康相談のためのネットワークを立ち上げることも提案している。

 最近、危険レベルが下がったとの理由で賃金が激減していることに対し、原発労働者が不満をもっているといわれるが、こうした労働者を組織する作業は容易ではないだろう。天皇制反対運動に携わってきた活動家1人が、現在、福島現地の労働者として働いているが、周りの仕事仲間が頻繁に変わるため、組織するのは容易ではないという。

 非正規職が集団的に闘ったことのない日本の労働運動の経験も、厳しい条件として作用するだろう。81年、日本の労働運動史上でたった一度だけ敦賀原発で下請け労組がつくられたが、使用者側の弾圧で破壊されて以降、原発下請け労働者が直接闘いに立ちあがったことはない。

 反核運動が日本社会を揺るがしている中、最大の被害者である原発労働者と、福島で被曝に甘んじて働いている労働者が闘争の主体になる日が一日も早く来るよう期待する。■


 『私たちが見えますか――弘益大清掃・警備労働者の物語』日本語訳発刊

2012年03月02日 13時42分47秒 | 非正規職
『私たちが見えますか――弘益大清掃・警備労働者の物語』日本語訳発刊

発行 労働者学習センター発行
A5版 228ページ
頒価 800円

ご注文は下記労働者学習センターまで

〒260-0017
千葉県千葉市中央区要町2-8 DC会館 
労働者学習センター

電話 043-222-7207
FAX 043-224-7197
Eメール doro-chiba@doro-chiba.org

-----------------------------------------------------------
内容紹介
(全国労組交流センター『月刊労働運動』2012年3月号より)

本の紹介
『私たちが見えますか――弘益大清掃・警備労働者の物語』

イ・スンウォン、チョン・ギョンウォン著
2011年8月31日発行
発行所・ハンネ(韓国)

 韓国の大学で清掃と警備の仕事を担う非正規職請負労働者が、2011年1月3日から2月20日まで49日間にわたってろう城闘争を展開し、原職復帰と団体協約締結、賃金および労働条件の改善を勝ち取った。この闘争の勝利の教訓、闘いの限界、今後の課題などを生き生きと記録した本が、闘争勝利の半年後に出された。『私たちが見えますか――弘益(ホンイク)大清掃・警備労働者の物語』だ。

 「人々はその人たちを見ようとしなかった。男子トイレに女性労働者が入ってきても、あわてる者は誰もおらず、平然と用を済ませる。講義の最中でも会議中でも、その人たちが働いている姿に気を留める者はおらず、なにごともないようにそれぞれのやっていることを続けた。
 『ああ、あの人たちの目には私が見えていないんだ…』こんなふうに幽霊として生きてきた人々が、労働組合をつくり、闘いを通して人間となり、堂々たる労働者となった」(冒頭部分より)

 月給75万ウォン(約5万円)に1日の食事代300ウォン(約20円)という、政府の定める最低賃金にも満たない低賃金、休憩室もなく階段の下やトイレで食事をとらざるをえない環境、労働組合をつくったことに対し委託金額を切り下げて請負業者を撤収させ労働者を集団解雇に追いやっておきながらその責任を請負業者に押しつける大学側――労働者が実力闘争に立ち上がったことによって暴かれたこれら現実に人々は驚いた。けれども労働者が立ち上がったその根底にあったのは、労働者を蔑視するあり方への怒りだった。
「組合員たちが労組に加入して闘った最大の理由は、蔑視されるのが許せなかったからだ。管理所長は名前の代わりに『おい、キムさん』『このオバサンめ』と呼び、乱暴な物言いは当たり前だ。『このアマ』『腐れ女』、こんな暴言を吐く者もいる。みんな家に帰れば『母さん』であり、孫がいて『おばあちゃん』なのに…」(本文より)

 労働組合が生み出した力の大きさ
 この本には、地域労組や学生による非正規職労働者組織化の教訓や、現場の力を引き出す会議の持ち方、現実に見合ったやり方での規律の追求といった組織運営や指導のあり方、そしてツイッターを活用した青年支援者によるゲリラ集会の組織化など豊かな経験が盛り込まれている。しかし、この本でつかみ取れることは、労働組合運動のやり方というようなマニュアル的なことよりも、労働組合に結集し団結して闘った労働者が、どんなに大きな力をもつようになるのか、ということだ。

 テレビに出た組合員が、それを見た人から「良い労働条件で雇うからうちに来ないか」という申し出を受け、心が揺らいだ。しかしふと浮かんだ「ストライキ歌」の歌詞がそれを振り払った。
「揺らいではならない、バラバラになったら死ぬ、っていうあれ。私なんかでも一緒に一つになって固まらなくちゃ、私がもし抜けたら、誰も彼も抜けたりしたら、もう崩れちゃうじゃない。やった甲斐がないじゃない。私なんかの小さな力でも、この労働組合が一つに固まるときに力が湧くんで、私が出てったらだめだ、自分だけ楽に暮らそうなんて、そんなことできない――それで私は『お気持ちだけお受けします。私はここで、大して役にも立ちませんが、私はここに残ります』って返事をしたんです」(女性組合員/清掃)

闘争をやめさせようとした夫と正面から向き合い、獲得した。
「『これだけは絶対にやめられない。自分がいい目にあわなかったとしても、うちの同僚たち…うちの後輩たち、うちの子供たちが非正規職で…暮らすようになったら困るでしょ? だから、うちらがやって勝つことで、少しでもそういう人たちのためになればそれでいいじゃない』って話したら、『確かにそうだな』って。それで…『あったかくして、しっかりとるもんとって行ってこい』って」(女性組合員/清掃)

事実上の使用者である大学との力関係も逆転した。
「だから今はもう私が専従として恐喝・脅迫をしょっちゅうやってますよ。『今うちの組合員は49日間たたかってピリピリしてるから言葉に気をつけろ、雰囲気見てものを言え、失敗しても当分は目をつぶれ、しこりが解けたから働いているわけじゃはなく、まだ残ってるんだから気をつけろ』って。本人らも気をつけてますよ。社長が出てきてやつらに言ったのも、そういうことらしい。気をつけろ、言葉にも気をつけろ、って」(男性組合員/警備)

ここでは詳しく紹介できないが、新自由主義の大学と学生のあり方を問う部分も、法政大学闘争の主張を彷彿させるものがあり、なによりも労働運動と学生運動の結びつきという点で学ぶところは大きい。さらに後半の聞き書き部分では、弘益大に来るまでの組合員の半生にもスポットが当てられ、労働や社会保障、教育など韓国労働者の暮らしをとりまく状況をうかがい知ることができる。また、時代劇ドラマ「チャングムの誓い」や「イ・サン」に出ている女優キム・ヨジンさんの暖かい支援活動も心に残る。

 この労組のイ・スッキ分会長は、去る1月31日の民主労総大会で模範組合員賞を受けたが、弘益大当局はそれに挑むかのように賃上げ要求を拒否して団交を決裂させ、労組は再び闘争局面に入っている。

金属労組「複数労組100日は民主労組弾圧100日」

2011年10月11日 11時44分32秒 | 複数労組制
「複数労組100日は民主労組弾圧100日」

民衆の声 ヤン・ジウン記者aigoumni@naver.com
入力2011-10-10 21:00:49 l修正2011-10-10 21:49:55

 雇用労働部が複数労組施行100日をむかえて発表した声明に対して金属労組が強く反発した。
 金属労組は、「複数労組100日は民主労組を弾圧して労働組合を御用化する100日だった」とし、「現在施行されている複数労組関連法案は、使用者の意に添う労働組合建設につながっている」と糾弾した。さらに、「労働界が複数労組を要求した理由は、労働者の団結権を妨げるなということ」だとし、「複数労組が本来のあり方になるためには、各労働組合の自律的交渉権を保障する労組法改正案が伴わなければならない」と要求した。
 この日、雇用労働部は、「複数労組施行100日、現場には新しい変化の姿」というタイトルの報道資料を発表し、「複数労組窓口単一化制度が順調に定着しており、現場勤労者の声が反映される労働運動に転換される契機となっている」とした。
 今年7月1日から、すべての企業体で複数労組設立が全面許容されたが、複数労組が施行されながらも、交渉窓口単一化と会社側の不当労働行為などの問題が生じたため、労働界は労組法再改正を要求している。■

複数労組施行3ヶ月、新規労組は計498

2011年10月11日 11時42分50秒 | 複数労組制
民主労総新規労組の50%が事業場内過半数組合員を確保
複数労組施行3ヶ月、新規労組は計498

民衆の声 コ・ヒチョル記者khc@vop.co.kr
入力2011-10-10 13:44:34 l修正2011-10-10 13:50:46

 今年7月1日に複数労組制度が施行されて以降の3ヶ月間に新しくできた民主労総所属労組のうち、50%が事業場内で過半数組合員を確保したことが明らかになった。
 10日、雇用労働部によると、今年7月1日に複数労組が施行されて以降9月末までに、計498の労組が新たに設立申告を行った。無労組事業場の労組と超企業労組を除いた387の労組のうち、労組組合員全体の過半数を占めた労組は111労組(28.7%)と分析された。
 民主労総所属の新規労組129の50.4%にあたる65労組は、事業場全体労組員の過半数を確保したことが確認された。これは、韓国労総所属事業場の新規労組のうち20.9%(34労組)だけが組合員の過半を占めたのと比べて非常に高い数字だ。
 雇用労働部によると、労組設立申告は7月に一日平均10.4労組に達したが、8月は3.5労組、9月は2.3労組と持続的な減少傾向を示している。
 新規労組の72.7%にあたる362労組が、二大労総に所属する労組のある事業場でつくられた。
 新規労組のうち民主労総に加入した労組は21(4.2%)、韓国労総に加入した労組は51(10.2%)と、上級団体を選択した労組は72(14.5%)に過ぎず、残りの426労組(85.5%)は二大労総に加入しなかったことが明らかになった。■

「電力産業構造改編」が停電大乱招く...民営化されればより大きな混乱

2011年09月21日 12時16分57秒 | 公共部門民営化
「電力産業構造改編」が停電大乱招く...民営化されればより大きな混乱

民衆の声 チョン・ヘギュ記者
入力2011-09-19 06:52:44 /修正2011-09-19 15:39:55
 
 〔15日午後、残暑で電力需要が一気に高まり、全国的に各所で停電事態が発生したことにことに関連して〕チェ・チュンギョン知識経済部長官は、「電力取引所で電力供給に対する虚偽報告があった」とし、停電大乱の責任を電力取引所に帰したが、専門家は、電力産業の構造改編によって韓国電力と電力取引所の業務が分散するなかで、統合的な管理体系がおろそかになったのが根本原因だと指摘した。

 電力産業構造改編でおろそかになった電力管理体系

 今回の停電大乱でわが国の電力管理体系の不備が余すところなくあらわれた。政府当局は夏期非常対策期間を9月23日まで3週間延長するという公文書を韓国電力と発電子会社に送ったが、実際には電力取引所と韓電などは発電所整備計画を全く変えなかった。
 事故当日の電力取引所の予備電力量数値がどれくらだったのかも日ごとに変わった。電力取引所は15日午後3時、停電直前の予備電力を343万kWと発表したが、その後「なぜ急いで停電したか」という疑問が提起されると、すぐに149万kWと修正した。だが、この数値は18日、生産能力のない電力が予備電力に含まれていた事実が明らかになる中、24万kWと最終訂正された。
 今回の停電事態の原因をめぐって、報告体系の混線などが俎上に上る中、政府が1999年から推進してきた「電力産業構造改編」が根本原因だと指摘されている。電力を供給する韓電と、系統運営を担当する電力取引所の業務が分散したことで「業務協力と管理がしっかりとできていないのでは」というもの。
 わが国の電力産業は、2001年以前までは電源開発、設備建設、設備運営などを韓国電力が総合的に管理してきた。だが、2001年の構造改編以後、総合的な電源開発と電力需給計画をたてる電力取引所、送電や実際の整備と配電を担当する韓電、電力生産を担当する発電子会社など計8つの組織に分けられた。
 電力産業の競争力強化という名目で発電分野を韓電から分離した政府は、配電と販売をも分割する計画をたてた。だが、この部門まで市場競争に委ねた場合、電気の公共性が損なわれ、収益性中心の経営などによって電気料金が上昇しかねないという反発などに直面し、この計画は2004年に中断された。 
 だが、イ・ミョンバク政府は2008年に電力産業構造改編を再推進し、「市場型公企業」という概念を登場させた。激しい反発により「電力産業民営化」ができないなかで、「競争」を強化するため「開放」でも「公共性」でもない新しい概念を登場させたのだ。これに伴い、発電公企業については役員選任と評価を政府が行いつつも、営業と人員運用など主要な経営活動については競争体制で運営されてきた。
 その間、企業はことあるごとに電力産業の民営化を要求してきた。全国経済人連合会は2009年10月、「民間発電事業投資・運営関連制度改善案」という報告書を通じて、電力産業の独占体制による非効率と、これにともなう国民経済の負担を減らすため、電力産業構造改編を再度推進し、民間企業の発電事業への参入を拡大し、電力産業の競争体制を強化すべきと主張した。
 全経連は報告書で「国内全体の発電実績中、6つの韓電発電子会社の比重は93.5%に達し、民間企業の比重は6.5%に過ぎず、事実上独占体制が維持されている」とし、「独占体制にともなう発電産業の非効率を減らし、競争力を強化するためには、民間企業の発電事業参入を拡大し、段階的な民営化を推進しなければならない」と主張している。

 電力産業の根本哲学を「市場」から「公共性」へ

 だが、この15日に発生した停電大乱で、公共性を無視した電力産業の民営化がどれほど危険なのかが如実にあらわれた。韓電をいくつかの子会社に分割して管理体系がおろそかになっただけでも今回のような大規模事故が起きたことを考えると、電力産業が完全民営化された場合、広域停電といった国家的惨事は不可避、というものだ。
 実際に電力産業が民営化された米カリフォルニアでは、民間業者の操作で電力大乱が起き、これを収拾する過程で莫大な州政府予算が必要となり、カリフォルニア州政府の財政破綻につながった。また、カナダのオンタリオ州では、民営化で電気料金が3ヶ月で3倍ほど跳ね上がった。
 このため専門家の間では、競争を強調してバラバラになった電力産業の各機能を早急に統廃合し、電力産業の根本哲学を「公共性」に変えるべき、という声が高まっている。
 エネルギー経済研究院のイ・グンデ博士は「国家の重要な基幹産業の一つである電力産業が分野別にバラバラになっていては、非常時に対処能力が落ち、相互協力などの面で難しい部分が多い」とし、「特に韓電の送配電と取引所の給電所機能などを統合するなど、電力機関間の重複機能は一日も早く統廃合しなければならない」と述べた。
 韓国発電産業労組は、「電力取引所が気温上昇を考慮せず誤った電力需要を予測したことにより、多くの大型発電所が例年的な維持、保守作業のために電力系統網からはずれたため、突然はねあがった負荷上昇に適切に対応をすることができなかった」とし、「これは、根本的に電力産業の各機能が分割され、互いに有機的な役割を果たせなかったために発生した悲劇」だと指摘した。■