虎の門針灸院ノート

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入院前ステロイド治療は急性肺障害死亡リスクを上げるか

2012-02-09 13:40:23 | 医学一般の話題
 入院前のステロイド治療は、重症患者の急性肺障害のリスクを軽減せず、入院中の死亡率が3倍高くなったと報告されています(…が、しかし…)。

 急性肺疾患におけるステロイドの効果は明らかではなく、未だ議論の余地があります。 1980年代以後の研究で見ても、有益性と有害性に関する報告が混在しています。

 Karnatovskaiaらは、“Am J Respir Crit Care Med 2011; 183: 462-470”の前向きコホート研究データの「肺損傷の予測スコア」について2次分析を行いました。

 コホートは、急性肺障害の少なくとも1つの危険因子を持つ5,584名の入院患者で、入院時に全身コルチコステロイド療法を受けていた458例が含まれています。

 主要転帰は、急性肺障害の頻度であり、主要な2次エンドポイントは、機械的人工換気と院内死亡。

 入院時ステロイド治療を受けていた患者の23%が人工呼吸器を必要とし、非ステロイド患者では35%(P = 0.004)でした。人工呼吸器の使用率ではステロイド使用患者の方が低い結果でした。

 しかし、死亡率は、ステロイド群で8%、対する非ステロイドでは3%(P <0.001)でした。

 入院時にステロイド治療を受けていた患者は、年齢が高い、合併症が多い、薬品の使用が多い、癌と胸部放射線照射の既往など、母集団全体の傾向とはやや異なっていたことに注意が必要です。

 ロジスティック回帰分析では、急性肺障害の発生率、人工呼吸器の必要性(P = 0.6)に有意差はありませんが、死亡率に関してはステロイド使用群が高く有意(P = 0.02)な値でした。

 しかしながら、“propensity scoring”でマッチングした、ステロイド治療群443名と非ステロイド1,332名を比較したオッズ比は、急性肺障害1.0、人工呼吸器使用 0.90、院内死亡率1.2と、いずれも有意差は認められませんでした。

 著者は、この公開アブストラクトによって、ステロイド(傾向一致前)による有害性が示されたことを指摘し、ステロイド使用に際しての適応性を十分に考慮すべきと述べています。

 無意味なステロイド使用は控えるべきでしょうが、“propensity scoring”による解析後、有意差は認められませんでしたので、入院前のステロイド使用によって呼吸器障害による死亡率の増加が起きるとは言えません。

“propensity scoring”

 Propensity とは性癖、性質、傾向を意味します。観察的データのみから、最も質が高い研究法である、ランダム化臨床試験(RCT)に近い結果を得る手法として注目されています。多くの因子のデータを基に、例えば、治療Aが選択される確率を多ロジスティック解析を用いて算出します。propensity score でマッチングしますと、予後因子が治療A を行わなかった患者群と、行った患者群で一致します。つまり、propensity score を用いた研究は、観察であるにもかかわらずランダム化臨床試験のように評価できます。

Primary source:
Karnatovskaia L, et al
The influence of prehospital systemic corticosteroid use on development of acute lung injury and hospital outcomes
Society of Critical Care Medicine, 2012; Abstract 41.

Same Lung Injury Risk With Pre-Hospital Steroids
By Charles Bankhead, Staff Writer, MedPage Today
Published: February 08, 2012
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