虎の門針灸院ノート

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肥満よりも代謝的不健康が死亡リスクと関連

2012-05-26 10:16:18 | 医学一般の話題
代謝的に健康な肥満と、心血管疾患(CVD)および全死因死亡リスクとの関連を調査した研究では、肥満のみでは影響を与えないとの結果が示されています。

対象者は男女計22,203名(平均54.1歳, SD 12.7年, 男性45.2%)、ベースライン時CVDの既往無し。

血圧、HDLコレステロール、糖尿病の診断、腹囲、低グレード炎症(CRP≧3 mg/liter)にもとづいて、2つ以上の異常値で代謝異常と評価。肥満は、BMI 30 kg/m2以上と定義。

メインアウトカムは原因別死亡率。フォローアップは平均7.0年以上(± 3.0 yr)。 Cox比例ハザードモデルで、死亡率と代謝健康/肥満カテゴリの関連を評価。

フォローアップ期間中に604名が CVDで死亡し、1,868名が全原因による死亡。

健康な非肥満者と肥満者との比較では、ハザード比 1.26(hazard ratio;HR , 95% confidence interval (CI) 0.74 - 2.13)と、有意な差はなく、2つ以上の代謝的異常を有する非肥満者はHR 1.59( 95% CI 1.30 - 1.94)で、同様の肥満者ではHR 1.64( 95% CI 1.17 - 2.30)でした。

代謝的異常があれば、肥満・非肥満に関係なく、ハザード比は約1.6倍になりました。

代謝的不健康肥満者と代謝的健康肥満者とを比較した、全死亡率リスクのハザード比は 1.72(95% CI 1.23?2.41)と、肥満者でも代謝的不健康では約1.7倍高くなりました。

肥満そのものは死亡リスクに関係しません。さらに言えば、リスク比で2倍弱の話しであり、大げさに騒ぐことでもありません。

例えば、こんな報告もあります。

アジア人を対象にした、BMIと総死亡との関係を調査した大規模コホート研究です。
(Zheng. W., et al. :N. Engl. J. Med., 364 : 719-729, 2011.)

アジアと一口に言っても、日本・中国を中心とする東アジアとインド・バングラディシュの南アジア人では結果は異なっています。

BMIで22.6〜25.0を総死亡確率1として比較

東アジア人
BMI......................死亡確率比
....15以下 …………‥ 2.4
15.1-17.5 ……‥ 1.74
17.6-20.0 …‥ 1.2
20.1-22.5 …… 1.0
22.6-25.0 …… 1.0
26.1-27.5 …… 1.0
27.6-30.0 …… 1.1
30.1-32.5 ……‥ 1.3
32.6-35.0 ……… 1.5
..35.1以上 ……… 1.6

南アジア人
BMI......................死亡確率比
....15以下 …………‥ 2.2
15.1-17.5 ……‥ 1.5
17.6-20.0 …… 1.2
20.1-22.5 …… 1.1
22.6-25.0 …… 1.0
26.1-27.5 …… 1.0
27.6-30.0 …… 0.9
30.1-32.5 …… 1.0
32.6-35.0 …… 0.9
..35.1以上 …… 1.2

南アジア人では肥満は死亡確率比に影響せず、逆に痩せ過ぎは2倍以上高くなります。日本などの東アジアではBMI32.6以上の肥満では1.5倍になりますが、痩せすぎでは2.4倍と、さらに高くなります。このような関係をグラフから、JカーブまたはUカーブと呼んでいます。

Mark Hamer,et al.
Metabolically Healthy Obesity and Risk of All-Cause and Cardiovascular Disease Mortality
The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism April 16, 2012 jc.2011-3475
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カルシウムのサプリは心筋梗塞リスクを2倍高くすると報告

2012-05-25 09:22:22 | 食品・ハーブ・サプリメント
食事からのカルシウム摂取量およびカルシウムのサプリと、心筋梗塞、脳卒中、癌のリスクとの関連性を調べた調査で、カルシウムのサプリでは心筋梗塞のリスクが約2倍になると報告されています(ザビーネローマン教授、癌疫学と予防、社会予防医学研究所、チューリッヒ大学)。

カルシウム摂取量を増やすことは、高血圧、肥満、2型糖尿病リスクの減少と相関すると言われていますが、この研究報告では、ミルク・チーズ・緑色野菜、ケールなどからの摂取とサプリメントには決定的な違いがあり、サプリメント由来では血管壁への強固な沈着が生じる可能性があることが示唆されています。

23,980名(35〜64歳)のハイデルベルクコホートからの参加者のデータを前向きに分析(多変量Cox回帰モデル)。

平均11年間のフォローアップ期間後、354名が心筋梗塞、260名が脳卒中、267名が心血管疾患(CVD)で死亡。

心筋梗塞リスクを、総食物や乳製品からのカルシウム摂取量の最低四分位数と比較した第3四分位のハザード比は、それぞれ HR of 0.69 (95% CI 0.50 to 0.94) and 0.68 (95% CI 0.50 to 0.93)と、大幅に減少しました。しかしながら、脳卒中リスクとCVD死亡率では変化はありませんでした。

サプリメントの非ユーザーとの比較では、心筋梗塞リスクはHR=1.86( 95% CI 1.17 to 2.96)で、カルシウムのサプリのみの摂取では HR=2.39( 95% CI 1.12 to 5.12)と2倍以上でした。

つまり、食事由来のカルシウムであっても摂取量の増加による心血管系へのベネフィットは無く、サプリメントによる補給は心筋梗塞発症リスクを2倍以上高くすることが示されたと言えます。

Kuanrong Li, Rudolf Kaaks1, Jakob Linseisen, Sabine Rohrmann,
Associations of dietary calcium intake and calcium supplementation with myocardial infarction and stroke risk and overall cardiovascular mortality in the Heidelberg cohort of the European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition study (EPIC-Heidelberg)
Heart 2012;98:920-925 doi:10.1136/heartjnl-2011-301345
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小児の睡眠時無呼吸症候群は脳機能を障害する

2012-05-24 09:22:50 | 医学一般の話題
小児の閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、学習、記憶、および執行機能に関連付けられている脳領域の化学的変化を生じ、コントロールと比較して、作業メモリ、注意、および言語記憶の大幅な減少 (at P<0.01, P<0.01, and P=0.02, respectively)を引き起こすと報告されています。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群の患者16名と健常者11名を、磁気共鳴分光法を用いて脳の代謝産物の検査と、神経心理学的テストを実施。

睡眠時無呼吸を持つ小児は(Pでそれぞれ= 0.04、P = 0.03)、前頭前皮質と海馬におけるN-アセチルアスパラギン酸とコリン (NAA/Cho)の比率が有意に低下。

治療はアデノイド口蓋扁桃摘出術でしたが、何人かは、持続的気道陽圧(CPAP)を必要としました。

半年の治療後、左前頭前野の平均 NAA/Cho 値は患者のベースライン(at P=0.02)時から大幅に上昇して健常者と同レベルになり、脳障害は回復しました。

この研究は小規模で予備的なものですが、著者は、十分に長い睡眠時無呼吸がある場合は、実際にニューロンがダメージを受けると述べています。同時に、小児閉塞性睡眠時無呼吸症候群の治療によって、前頭葉の機能と、神経回路網の脳の代謝物は正常化することが示されています。

Halbower AC, et al
Brain injury and cognitive deficits reverse with treatment of childhood obstructive sleep apnea
Am J Respir Crit Care Med 185; 2012: A6722.
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前立腺癌スクリーニングテスト(PSA)は推奨しないと勧告

2012-05-23 10:36:40 | 医療への疑問
米国予防サービスタスクフォース(U.S. Preventive Services Task Force)による、前立腺癌検診推奨ステートメントでは、「前立腺特異抗原(PSA)検査による、全ての男性を対象にした検診は推奨しない」と勧告しています。

国立がん研究所は、2012年には約25万人が前立腺癌を発症し、28,000人以上が本症に関連して死亡すると推定しています。

スクリーニングにて発見された1,000人のうち、90%が手術、放射線治療、アンドロゲン除去療法などを受けますが、その中で前立腺癌死を回避するのは最大でも1人。2〜3人は血液凝固、心臓発作、脳卒中で死亡。手術を受けた3,000人に1人は手術の合併症で死亡。30〜40人が励起不全や尿失禁となると述べられています。

過剰な検査と治療による有害性が、ベネフィットを上回っています。無論、リスクが高い特定の患者を対象にした検査は必要ですが。

Screening for Prostate Cancer: U.S. Preventive Services Task Force Recommendation Statement
Virginia A. Moyer, MD, MPH, on behalf of the U.S. Preventive Services Task Force
http://www.annals.org/content/early/2012/05/21/0003-4819-157-2-201207170-00459.full

Govt. Panel Scuttles Prostate Cancer Testing Recommendations
abcNEWS, May 21, 2012
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腹部の脂肪組織切除で皮膚癌減少(マウス)

2012-05-22 10:18:40 | 医学一般の話題
マウスを使った実験で、腹部脂肪パッドの外科的切除によって、紫外線、放射線誘発皮膚癌が減少したと報告されています(全米科学アカデミー紀要)。

高脂肪食を与えたマウスに、高エネルギーの紫外線を週に2回33週曝露すると同時に、腹部の脂肪組織を切除した場合、皮膚癌の発生が約75%減少しました。

対照的に、低脂肪食を与えたマウスでは、皮膚ガンの発生率への影響は見られませんでした。

TIMP1、MCP1、とSerpinE1含むアディポカインの発現が脂肪除去で抑制されました。これらのタンパク質は腫瘍内に存在し、正常な皮膚には存在しませんでした。

脂肪組織が炎症物質を産生して炎症惹起に関与していることは知られていますし、癌にも炎症が関与していますので、脂肪組織の切除が一定の効果がありそうなことは予測されます。

但し、脂肪吸引がヒトの皮膚癌のリスクに影響を与えるかどうかは不明です。著者らは、脂肪吸引を受けた人々の皮膚癌発生率について、疫学的調査をするよう求めています。また、脂肪組織の外科的切除が、膵臓、大腸、前立腺など、その他の肥満に関連する癌も予防できるか、今後の研究には興味深いものがあります。しかし同時に、脂肪組織は最大の内分泌器官でもありますから、その影響は複雑と思われます。

Cutting Out Belly Fat Prevents Skin Cancer in Mice
By John Gever, Senior Editor, MedPage Today
Published: May 21, 2012
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非喫煙ならコーヒー摂取で死亡率低下

2012-05-21 15:05:49 | 医学一般の話題
コーヒー摂取量と死亡リスクとの関連性を調査した研究で、年齢調整モデルでは死亡リスクは増加しましたが、喫煙状況とその他の潜在的な交絡因子を調整すると、コーヒー消費量と死亡とは逆相関しました。

男性229,119名と女性173,141名を対象にしたダイエットと健康に関する研究(the National Institutes of Health−AARP Diet and Health Study)。1995年〜2008年までに5,148,760 person-yearsをフォローアップ。この間に、男性33,731名と女性18,784名が死亡。

喫煙およびその他の潜在的な交絡因子調整後のハザード比

男性
1日1杯以下:0.99 (95% confidence interval [CI], 0.95 to 1.04)
1日1杯  :0.94 (95% CI, 0.90 to 0.99)
1日2〜3杯:0.90 (95% CI, 0.86 to 0.93)
1日4〜5杯:0.88 (95% CI, 0.84 to 0.93)
1日 6杯以上:0.90 (95% CI, 0.85 to 0.96) (P<0.001 for trend)

女性
1日1杯以下:1.01 (95% CI, 0.96 to 1.07)
1日1杯  :0.95 (95% CI, 0.90 to 1.01)
1日2〜3杯:0.87 (95% CI, 0.83 to 0.92)
1日4〜5杯:0.84 (95% CI, 0.79 to 0.90)
1日 6杯以上:0.85 (95% CI, 0.78 to 0.93) (P<0.001 for trend)

男性女性ともに、4〜5杯が最もハザード比は低いようです。

心臓病、呼吸器疾患、脳卒中、けがや事故、糖尿病、および感染症による死亡でも逆相関しましたが、癌による死亡では相関しませんでした。

コーヒー摂取による死亡率低下の因果関係はこの研究では分かりません。要約を読んでいますので、喫煙との組み合わせでどの程度死亡率が増加するのかも不明です。また、交絡因子の内容も不明です。

タバコが嫌いな私にとっては、コーヒーを飲んだ直後にタバコを吸った時の口の中は最悪ですが、タバコ好きの人にとっては、この組み合わせは最高だとか。

コーヒーとは不思議な飲み物です。

コーヒーはイスラームの宗教的観念を背景に誕生しました。イスラーム文化では、「注意せよ、目覚めてあれ、生が無駄に過ぎ去ることがないように」と、夜眠らないことにこそ信仰の精髄があり、スーフィーたちは夜眠らずに祈りを捧げるためにコーヒーを飲みました。同時に、コーヒーは体に悪いからこそ飲まれました。スーフィーはヨーロッパ人たちを、「恥ずかし気もなく、健康、安全、長寿という3つの偶像を崇拝する」と軽蔑していました。

Neal D. Freedman, Yikyung Park, Sc.D., et al.
Association of Coffee Drinking with Total and Cause-Specific Mortality
N Engl J Med 2012; 366:1891-1904May 17, 2012
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COPD包括的治療管理プログラム(CCMP)で入院・死亡増加

2012-05-18 09:27:39 | 医療への疑問
慢性閉塞性肺疾患(COPD)による入院防止のための、包括的なケアマネジメントプログラム(CCMP)の有効性を無作為化比較試験で検討したところ、入院患者・死亡率(3.6倍)ともに増加しました。

COPD入院患者426人を対象に、209名が介入群、217名が通常ケア群に割り当てられていました。フォローアップは250日。主要アウトカムは、COPD入院までの期間。副次的転帰は、非COPDの医療使用、全死因死亡率、健康関連の生活の質、患者満足度、および病気の知識などです。

COPD関連入院の1年累積発生率は、通常治療群で24%、CCPM群で27%で、ハザード比1.13 (hazard ratio, 1.13 [95% CI, 0.70 to 1.80]; P = 0.62)と、僅かですが、むしろ増加しました。

介入群の全原因死亡が28名なのに対して、通常群では10名でした。ハザード比は3.00 (hazard ratio, 3.00 [CI, 1.46 to 6.17]; P = 0.003)で、管理プログラム(CCMP)を受けた患者の死亡率は3倍でした。

さらに驚くべきは、肝心要のCOPDによる死亡は、介入群で10名、通常群では3名で、ハザード比3.60 (hazard ratio, 3.60 [CI, 0.99 to 13.08]; P = 0.053)でした。

目的であるはずの、「COPD入院の削減」では逆に増加し、さらに、死亡率は通常のケアに比べ3.6倍でした。

この結果をもってしても著者の結論は、「重症のCOPD患者におけるCCMPは、COPD関連入院を減少させなかった。」と記しています。減少しないのではなく「増加させ」、さらに、「死亡者を3.6倍に増やした」が、正当な評価でしょう。

この様に、著者にとって少しでも都合良く聞こえるように、恣意的に結果を述べることが医学論文には非常に多いのです(それ故、医学は科学とは言えない)。

また、「CCMPは、予期せぬ過剰死亡、類似した以前の試験と著しく異なる結果に関連していた。データモニタリング委員会は、行動介入を伴う臨床試験のデザインにおいて考慮するべきである。」とも述べています。意に添わぬ結果は研究に問題があったと言っているように解釈できますが、研究デザインの問題ではないと思うのですが。

治す方法が無く、治せないにもかかわらず、「患者を適切に指導管理してやる」というのは医師の奢りの現れではないでしょうか。

Fan VS et al.
A Comprehensive Care Management Program to Prevent Chronic Obstructive Pulmonary Disease Hospitalizations: A Randomized, Controlled Trial.
Ann Intern Med May 15, 2012 156:673-683.
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避妊用経皮パッチや膣リングで静脈血栓リスク6倍以上

2012-05-17 13:44:24 | 医学一般の話題
避妊のための経皮パッチや膣リングの使用は、同年齢のホルモン避妊の非ユーザーと比較して、静脈血栓症のリスクが6.5倍および7.9倍高くなると報告されています。
研究参加者は15歳〜49歳までの血栓性疾患や癌の既往の無い全てのデンマークの非妊娠女性 1,626,158名。フォローアップは2001年〜2010年まで。

メインアウトカムは、経皮・膣・子宮内・皮下ホルモン避妊薬使用による静脈血栓症の発症率を測定。標準参照経口避妊薬のレボノルゲストレルと30〜40μgのエストロゲンを使用中のユーザーと非ユーザーを比較した静脈血栓症の相対リスク。診断後、抗凝固療法を少なくとも4週間行った者を静脈血栓症と判断。

非ユーザーのイベント発生率は2.1 per 10,000 woman years、ホルモン避妊の非ユーザーに比べて、年齢、暦年、および教育の調整後、経皮避妊パッチのユーザーの静脈血栓症の相対リスクは7.9(95% confidence interval 3.5 to 17.7)、膣リングは、6.5(4.7 to 8.9)、

薬品曝露の年間10,000人当たりの発生率は 9.7および 7.8でした。

皮下インプラントを使用した女性の相対リスクは1.4 (0.6 to 3.4)と増加しましたが、レボノルゲストレル子宮内システム 使用者では0.6(0.4 to 0.8)と減少しました。

レボノルゲストレル経皮パッチのユーザーの静脈血栓症の補正相対リスクは2.3(1.0 to 5.2)で、膣リングのユーザーでは1.9(1.3 to 2.7)でした。

Ojvind Lidegaard, Lars Hougaard Nielsen, et al.
Venous thrombosis in users of non-oral hormonal contraception: follow-up study, Denmark 2001-10
BMJ 2012; 344 doi: 10.1136/bmj.e2990 (Published 10 May 2012)
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慢性的な頚部痛への運動療法の効果とは?

2012-05-16 09:22:41 | 医療への疑問
首の痛みに対する、指導下の運動と家庭での運動の効果を比較した研究報告がありました。背景には、慢性的に首の痛みを訴える患者が多く、そのヘルスケアは社会経済的な問題とする認識があります。

研究対象は、慢性的な首の痛みを訴える270名の外来患者。

患者は無作為に以下の介入のいずれかに割り当てられています。
(1)高用量の強化運動指導+脊椎マニピュレーションの併用(ET + SMT)
(2)高用量の監視強化運動(ET)
(3)低用量の家庭運動とアドバイス(HEA)

プライマリアウトカムは、ベースライン時の患者の痛みと、4, 12, 26, and 52週後の痛みを評価。セカンダリーは、障害、健康状態、グローバルな認知効果、薬剤使用、満足度。

12週後の痛みの軽減は、(ET + SMT)と(HEA)は1.3点、(P <0.001)、(ET)と(HEA)は1.1点、(P = 0.001)でした。その差はわずか0.2点ですが、統計学的には有意でした。

52週後の(ET + SMT)対(HEA)の差は僅か0.1点 (ET + SMT vs. HEA, 0.2 points, P > 0.05; ET vs. HEA, 0.3 points, P > 0.05)で、有意差もありませんでした。

著者の結論では、脊椎マニピュレーションの有無にかかわらず、指導による強化訓練は、短期的には自宅の運動よりも良い結果をもたらしたと記されています。

しかしながら、グラフで見ますと、疼痛レベルの軽減は僅か2点〜3点弱でしかありません。

(ET)と、(ET + SMT)は12週後に一端3点軽減しますが、その後戻り、26週以後は3点弱の軽減のままプラトーになります。(HEA)では、12週以後約2点軽減のままプラトーになっています。

この程度の軽減で治療効果があるなどと言えるのでしょうか。個人的意見では、鍼治療の方が遙かに効果的であると思います。しかしながら、「ランドマイズドトライアル」で評価するなどは、クライアントに失礼ですので鍼灸院ごときにはできませんので、論文にはなりませんが。



Evans, Roni , Bronfort, Gert , et al.
Supervised Exercise With and Without Spinal Manipulation Performs Similarly and Better Than Home Exercise for Chronic Neck Pain: A Randomized Controlled Trial
Spine: 15 May 2012 - Volume 37 - Issue 11 - p 903?914, doi: 10.1097/BRS.0b013e31823b3bdf
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3割が夢遊病を経験(米)

2012-05-15 12:26:48 | 医学一般の話題
特定の組織に属さない成人19,136名(18歳以上)の横断的研究では、3.6%が前年度の睡眠中に歩いたと述べ、生涯有病率は29.2%(95% confidence interval [CI] 28.5%?29.9%)でした。

健康;、睡眠、精神面、有機的障害(DSM-IV-TR、睡眠障害の国際分類、バージョン2;疾患-10の国際分類)スリープ-EVALエキスパートシステムによる生活や睡眠習慣に関する質問を行っています。

リスクに関連する要因

閉塞性睡眠時無呼吸(オッズ比〔OR〕 3.9)
概日リズム睡眠障害(OR 3.4)
不眠症(OR 2.1)
強迫性障害(OCD)(OR 3.9)
アルコール乱用/依存性(OR 3.5)
大うつ病性障害(MDD)(OR 3.5)
市販睡眠薬(OR2.5)
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)抗うつ薬(OR3.0)
家族歴30.5%

前年の夢遊病経験者の0.2%は、少なくとも週1回の頻度で、0.8%が2〜3回/月、2.6%は1〜12回発生したと述べています。

睡眠時無呼吸と強迫性障害が最もリスクが高く、アルコール依存と大うつ病性障害がこれに次いでいます。

自己申告によるデータを使用しているため限界はありますが、1人暮らしの人では夢遊病と判断するのは困難ですので、過少申告されている可能性もあります。

夢遊病の頻度がこれほど高いとは信じられないのですが。アメリカならではなのでしょうか。

Ohayon M, et al
Prevalence and comorbidity of nocturnal wandering in the U.S. adult general population.
Neurology 2012; 78: 1583-1589; DOI: 10.1212/WNL.0b013e3182563be5.
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描画テストは脳卒中の死亡リスクを予測する

2012-05-11 15:21:36 | 医学一般の話題
描画テスト(Trail Making Test-A, TMT-A)のパフォーマンス低下は、死亡リスクを2倍高くしたと(HR 1.88 per SD, 95% CI 1.31 to 2.71, P=0.001)報告されています。

「TMT-A」の最低値の患者は最高値に比べ、死亡率は約3倍 (HR , 2.90 per SD, 95% CI 1.24 to 6.77, p=0.014)高くなりました。

919の研究より脳卒中後の患者155名(男性)を対象。中中央値2.5年のフォローアップ期間中に84名(55%)が死亡。22名は1月以内に脳卒中/TIAで死亡、42名はイベント後1年以内に死亡。診断は、97名が脳梗塞、24名が脳内出血、その他 TIAまたは未確定。

ミニメンタルステート検査と認知テストでは、脳卒中後の死亡リスクに関連しませんでした。脳卒中後の男性の描画運動のパフォーマンス低下は、その後の死亡率を予測するための他の神経心理学的テストを上回るものであり、診断未確定の脳血管疾患に関連した潜在性の認知障害を反映していると著者は述べています。

Wiberg B, et al
The relationship between executive dysfunction and post-stroke mortality: A population-based cohort study
BMJ Open 2012; DOI: 10.1136/bmjopen-2011-000458.
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精神病質の暴力犯罪者は前頭部灰白質に異常

2012-05-08 14:48:05 | 医学一般の話題
永続的暴力的な反社会性人格障害(Anti-social Personality Disorder:ASPD)の犯罪者において、精神病の症候群を伴う(ASPD + P)者では、吻側前頭前皮質(ブロードマン領域10)と側頭極(temporal pole , Brodmann area 20/38)の灰白質(GM)に容積減少が見られたと報告されています。

ASPD +Pは17名、ASPDのみは27名、健康非犯罪者22名の、合計66名を検査。法医学臨床医によって、DSM-IVの構造化臨床面接と、精神病質チェックリストA-改訂版を使用して評価。MRIと、volumetric voxel-based morphometry analysesによって灰白質のボリュームを測定。

精神病とは診断されないものの、衝動的、切れ易くて攻撃的、反省するなどの自責の念が無い、残虐な犯罪を繰り返す。このような犯罪者に、脳の構造的異常が確認されたことには大きな意味があります。

以前から、脳の異常所見の報告はありました。精神病質犯罪者の気脳写検査で、高い頻度で左右の脳室の大きさが著しく違う、「非対称性の脳室拡大」が認められたと報告されています。この異常所見は、特に、風俗犯、窃盗犯に高率でした。また、脳波の異常も見られます。

残虐な犯罪事件の判決が決まると、マスコミや弁護士などは「犯人の心の闇が未だ明らかになっていない…。」などと言います。しかしながら、動機などを心理学的に究明しようとしても整合的な理由を得られるとは思えません。脳に器質的異常が存在する場合には、心理学的治療による改善効果は見込めませんし、再犯や同様の事件の防止にも繋がらないと思われます。

Sarah Gregory, PhD; Dominic ffytche, MD, et al.
The Antisocial Brain: Psychopathy Matters ; A Structural MRI Investigation of Antisocial Male Violent Offenders
Arch Gen Psychiatry. Published online May 7, 2012. doi:10.1001/archgenpsychiatry.2012.222
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「適度のジョギングが寿命を延ばす」は運動の効果か?

2012-05-07 15:24:41 | 医学一般の話題
EuroPRevent2012会議で発表された、コペンハーゲン市心臓研究からの最新のデータでは、定期的なジョギングの実施で男性は6.2年、女性では5.6年寿命が延びたと報告されました。

研究デザインは「 prospective cardiovascular population study」で、1976年に開始、男女合計20,000名を対象(20 to 93 years.)として、最長35年フォローアップ、男性のジョガーは1,116名、女性は762名でした。フォローアップ期間に、非ジョガーは10,158名が死亡、これに対し、ジョガーの死亡は122名。

死亡リスクは男性ジョガー44%減少(年齢調整ハザード比age-adjusted hazard ratio, 0.56)、女性44%減少(年齢調整ハザード比0.56)。

重要な点は、ジョギング時間と死亡率の関係はU字型曲線を示したことです。死亡率が最も低い時間は1〜2.5時間で、2〜3セッション、特に、走る速度は低速または平均的なペースが良いとのこと。やり過ぎも死亡率は高くなります。

この報告では、定期的なジョギングは寿命を増加させることを、確信を持って言えると述べています。また、利益を得るためには、多くの時間をかける必要が無いことも付け加えています。

ジョギングをめぐる論争は1970年代に始まったと記されています。ジョギング中の男性の死亡から、様々な新聞が、ジョギングは普通の中年の人々にとって激し過ぎるのではないかと書き、その後も議論が続きました。

U字カーブやJ字カーブ現象はその他にも多く見られます。例えば食塩摂取量と死亡率の関係、アルコール摂取量と死亡率などです。適量では毒もまた良い刺激となりますし、適度の運動がスタミナや抵抗力を高める可能性は否定しませんが、それよりも影響が大きいのは、適量故の「心地よさ」がリラクゼーション効果を及ぼすのではないでしょうか。

Regular jogging shows dramatic increase in life expectancy
European Society of CardiologyPublic release date: 3-May-2012
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ワルファリンとアスピリンの心不全予防効果はどちらが優位か

2012-05-04 09:49:24 | 薬の問題点
洞調律の心不全の予防効果について、ワルファリンの優位性を調べた研究では、アスピリンと比較して優位性はありませんでしたが、虚血性脳卒中は減少しました。しかし同時に、脳内出血や消化管出血の有意な増加が認められ、そのメリットは相殺されました。

試験登録者は11カ国、168のセンターから2,305名、平均年齢61歳、フォローアップは6年間 (mean [±SD], 3.5±1.8)でした。ワルファリンは2.0から3.5の目標国際標準比、アスピリンは325 mg/日の用量)。

主要転帰は、虚血性脳卒中、脳出血の複合エンドポイント、または、全原因による死亡の最初のイベントまでの期間。

主要転帰の発生率は、ワルファリン群では7.47/100患者・年、アスピリン群では7.93でした。ワルファリンのアスピリンに対するハザード比(HR)0.93(95% confidence interval [CI], 0.79 to 1.10; P=0.40)。したがいまして、2つの治療に有意な差は認められません。

虚血性脳卒中の発生率では、ワルファリンvsアスピリン群で、0.72events/100 patient-years vs. 1.36/100 patient-yearsで、HR, 0.52( 95% CI, 0.33 to 0.82; P=0.005)と、ワルファリン群の方が半減しました。

しかしながら、大出血の発生率は、ワルファリン群では1.78 events/100 patient-years で、アスピリン群0.87(P<0.001)の倍近くになりました。また、消化管出血はHR,.2.35、その他の出血ではHR, 3.06と3倍になりました。

主要転帰の最初のイベント、心筋梗塞、または心不全による入院までの期間とした、二次転帰率に差は認められませんでしたが、ワルファリン群の方がより多くの入院傾向が観察されました。

この研究は、予定より患者数が少なかったことに問題が残ったようですが、それでも、ワルファリンを使う意味があるのか疑問です。

Homma S, et al
Warfarin and aspirin in patients with heart failure and sinus rhythm
N Engl J Med 2012; DOI:10.1056/NEJMoa1202299.
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スタンガンは殺人武器になる

2012-05-03 09:50:03 | 医療行政の問題
スタンガン(TASER X26)による胸への衝撃で、心室頻拍/心室細動を引き起こして心停止や死亡に至る危険性があるため、その安全性が疑問視されています。

アメリカでは、2001年以後、スタンガンによる衝撃の後に500人以上が死亡し、そのうち、直接的な死亡は約60人でした。

テイザー・ショック(2006年1例、2008年4例、2009年3例の死亡例)に関連する訴訟、8例の分析では、使用されたデバイスは「テイザーX26」でした。8例の男性は、全て臨床的に健康でした。また、何れも、心臓の近くを含む前胸部に衝撃を受けており、全てが直後に意識を失っていました。

テイザーショックによる心室細動のメカニズムの1つは、最初の衝撃によって心拍数増加による突然の血圧低下と、繰り返される衝撃によって虚血と心室細動を引き起こすと考えられています。

動物実験および臨床データでも、スタンガンの衝撃で心室細動を引き起こす可能性があると報告されています。

スタンガンの初期衝撃による電気は50,000ボルトで、その後も、短い1200ボルトのショックが長く維持されるようです。因みに、テイザーX26の出力は、蘇生装置である、「自動体外式除細動器」の閾値と同等です。したがって、経胸壁的電気インパルスが心臓へ影響することはごく当然なことです。

tasersとして知られているスタンガンは、非致死兵器として分類されています。したがいまして、スタンガンは、アルコール、タバコ、銃器、爆発物局によって規制されていません。

自衛手段とは言え、このような危険な「武器」が何故?、野放しになっているのでしょうか。

Zipes DP
Sudden cardiac arrest and death associated with application of shocks from a taser electronic control device
Circulation:Journalof the American Heart Association,
2012; DOI: 10.1161/?CIRCULATIONAHA.112.097584.
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