ボールペンデッサンの描き方とコツ

ボールペンデッサンのテクニックや描き方のコツを学ぶ。そして日々思う事。

いのち

2009-07-17 | Weblog
平日の朝、
いつもなら既に出勤している時間に山中の湖畔にいた。
別に思い詰めている訳でもない。ただ少し疲れていた。

水辺の際にしゃがんで景色を眺める。
ふと、下に目をやると、鮎だろか、体長10センチ程の魚と目が合った。
「…魚がいるんだ…」素直にそう思った。

その時、私の正面の先で「チャポンッ」と小石を投げ入れたような音がした。
音のした方を見ると、少し大きい感じのする羽のある虫が水面を震わしながら浮かんでいた。
5、6メートル程離れていたので、なんの虫か分からなかったが、羽があることだけは分かった。

私はとっさに(助けてあげよう)と思う。でも離れていて手が出せない。その水辺は堤防になっていて、水深は私の背丈以上ありそう。
入って行くことも躊躇された。
(駄目かな…)
諦めかけて眺めているとある事に気付いた。
そこは朝の爽やかな微風が流れていて、その風の力で水面に小さな波がたっていた。どうやら波はこちらに向かって流れて来ている。
「もしかしたら、手の届く所まで流れてくるかも。」
私は(こっちに流れて来い!)と強く念じた。
少しずつではあったが、その虫は近づいてきた。
どうやら蝉のようだった。羽は透明で、体が緑と黒と少し黄色で。アブラゼミだ。

5分ほど待っただろうか。
セミはもうそこまで来ていた。まだ足を動かしている。
(がんばれ!)

あと、岸まで2メートルといったところか。わたしは「なんか助けるのに、いい枝ないかな」と、周りを見回していたとき、そのセミの下に黒い影が浮かんできた。
魚だ!
しかも最初に見た体長10センチ程度の魚ではない。その2回りも3回りも大きいやつだった。
「あっ!!」と思った瞬間、セミは水面から消えてしまった。

魚は悪者ではない。水に落ちたセミが悪い訳でもない。
誰も悪くない。
彼らは僕たち人間とは全く違う世界で生きていた。‘生きる’ということに対して浮ついた気持ちはない。まさに生きるか死ぬかで存在していた。
同じ“命”なのに。

なぜか私は至極恥ずかしい気持ちになった。
たった10分足らずの出来事。これが、生きる全てのように思えた。
コメント
この記事をはてなブックマークに追加