癌に痩せる母は笑いき病室の窓にカナブン今朝訪れしと
にんげんは関係性の獣ゆえ見知らぬ表情(かお)への変化恐るる
清拭が終わりましたその顔は眠つているかのように眠りき
真白き手に数珠通し死装束「お綺麗な方」と納棺師言う
死は永遠(とわ)の眠りというが 息を飲む薄化粧の頬その冷たさに
荼毘終わり骨だけの母は母でなく好き記憶のみ吾に残れり
癌に痩せる母は笑いき病室の窓にカナブン今朝訪れしと
にんげんは関係性の獣ゆえ見知らぬ表情(かお)への変化恐るる
清拭が終わりましたその顔は眠つているかのように眠りき
真白き手に数珠通し死装束「お綺麗な方」と納棺師言う
死は永遠(とわ)の眠りというが 息を飲む薄化粧の頬その冷たさに
荼毘終わり骨だけの母は母でなく好き記憶のみ吾に残れり
如何せん吾如何せんあの頃の正しさ誤謬すべて忘れき
白白と午前三時の月明かりお前は要らぬと囁くが如
雨続き地のものすべて腐りゆく空を見ていた思うこと無く
愛しさを告げる人きみ去りて吾は吾を抱きしめてみる
死ぬ母の初めて吾は爪を切る爪切りの背に「正しい選挙」