かまくらdeたんか   鹿取 未放

「かりん」鎌倉支部による渡辺松男の歌・馬場あき子の外国詠などの鑑賞

 

馬場あき子の外国詠389(中欧)

2017年01月18日 | 短歌一首鑑賞

  馬場あき子の外国詠53(2012年6月実施)
      【中欧を行く 虹】『世紀』(2001年刊)P109
      参加者:N・I、崎尾廣子、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
      レポーター:藤本満須子(急遽代理のため書面のみの参加)
      司会と記録:鹿取 未放


389 放牧のかほ白き牛観光のわれをあやしみ長く鳴きたり

     (レポート)
 放牧されている牛が観光客のわたしを見てまるであやしい人間だというように、鳴き声を長くのばし鳴いていることだ。
 雨のプラハ、雨のヴルタヴァ、カレル橋、スメタナのプラハ、虹の立つプラハとうたい、その終わりに放牧の牛をうたい、ゆっくりと時間がながれ、のどかでユーモアさえ感じさせる歌がきている。緊張感から解きほぐされ少し明るい気分にさせてくれる。
 スメタナの祖国から次はオーストリア、ウイーンへ、ホフマンスタール、Rシュトラウス、エレクトラ……と混乱の時代へと移ってゆく。『世紀』〈中欧を行く〉のクライマックスに入ってゆく。楽しみだ。(藤本)


     (当日発言)
★珍しいから鳴いたのを「あやしみ」と言っている。ほんとうの怪しみではなく、実は親しみが
 ある。ユーモアがあって、楽しんでいる気分。(N・I)
★ガリバー旅行記の馬の国のことを思い出した。馬より人間の方が下がった地位にある深遠な小 
 説だ。(崎尾)
★佐藤佐太郎が冬にキュウリを食べるのを「あやしまず」と歌っている。それに通じてる感じ。
     (慧子)



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