かまくらdeたんか   鹿取 未放

「かりん」鎌倉支部による渡辺松男の歌・馬場あき子の外国詠などの鑑賞

 

馬場あき子の外国詠362(中国)

2017年12月11日 | 短歌一首鑑賞
 馬場あき子の外国詠50(2012年3月実施)
  【中欧を行く 秋天】『世紀』(2001年刊)91頁~
   参加者:N・I、K・I、崎尾廣子、曽我亮子、藤本満須子、
       T・H、渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:崎尾廣子
   司会とまとめ:鹿取未放
   
362 ハンガリー英雄広場の英雄像十四体に髭なきは無し

      (まとめ)
 ハンガリー英雄広場は、1896年ハンガリー建国一〇〇〇年を記念して建設された。中央の高いポールの上に大天使ガブリエルの像が聳えている。ハンガリー初代皇帝になるイシュトヴァーンの前に現れた天使である。天使像を中心にして右に国王達、左に政治家や将軍達の七体ずつの英雄が並んでいる。そして十四体の英雄達は全て髭を生やしているのだという。全てに髭がある、ではなく否定を重ねている叙述に思いがあるのだろう。すなわち、髭を蓄えることによってなされる権威付けへの問題提起である。それは次の363番歌(英雄はなべて髭濃し髭といふ男のちから女らは見る)にも繋がってゆく思いである。(鹿取)


         (レポート)
 英雄達には実際髭があったのであろうか。まずそんなことを考えた。十四体全部に髭がある像を目にすれば不気味さを感じてしまったであろう。この像を建てた人たちの自己顕示欲なのであろうか。東は東、西は西の感を持った。 (崎尾)

    英雄広場の像:まず「天使ガブリエル」だが天に向かって十字架と冠を揚げている。言い
           伝えによると、ローマ法王シルベステル二世の前に大天使ガブリエルが現
           れイシュトヴァーンをキリスト教国の王として認知するように告げた。そ
           れはちょうど西暦1000年のクリスマスの日だった。ガブリエルが揚げ
           る二重の十字架は、イシュトヴァーンがキリスト教徒であったことと同時
           に政治をも司ったことを意味している。(旅名人ブックス ハンガリー)

    コッシュート:1802~1894  ハンガリーの民族運動指導者。1832年にハン
           ガリー身分制議会の議員となり、48年のウイーンの三月革命に際し、責
           任内閣制をとる最初のハンガリー内閣の蔵相となった。まもなくウイーン
           政府と決裂して独立戦争が始まり、49年4月独立宣言を行ったが、オー
           ストリア、ロシアの挟撃にあって亡命し、イタリアで死んだ。
             (世界史事典  旺文社)

 コロネードに立つハンガリーの英雄十四体は次のとおり。
   ①聖イシュトヴァーン   ②聖ラースロー   ③アールマン   ④エンドレ2世
   ⑤ベーラ四世    ⑥カーロイ・ロペルト   ⑦ラヨシュ大王   
   ⑧フシャディ・ヤーノシロ   ⑨マーチャーシュ   ⑩ポチカイ・イシュトヴァーン
   ⑪ペトレン・ガーボル   ⑫テケリ・イムレ   ⑬ラーコ-ツィ・フェレンツⅡ世
   ⑭コッシュート・ラヨシュ

  ※「○世」など表記が統一されていませんが、レポーターの表記通りにしました。なお、レポ
   ートには各聖者の簡単な説明がありましたが、省略しました。(鹿取)

 
      (当日発言)
★レポーターは「英雄達には実際髭があったのであろうか」と書いていますが「十四体に髭なきは
 無し」(髭のないものは無い)と詠んでいるのだから、十四体全てに髭があるのです。迷う余地
 は全くありません。(鹿取)
★中東では髭のない男は男として認められない。(N・I)





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