馬場あき子の旅の歌【ニルギリ】『ゆふがほの家』(2006年刊)81頁
参加者:K・I、N・I、T・K、T・S、N・T、藤本満須子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:渡部慧子
司会とまとめ:鹿取 未放
125 水のごと静けき天よ未踏峰ニルギリを抱きほのかほほゑむ
(まとめ)(2009年1月)
水のように静かな天が、未踏峰であるニルギリを抱いてほのかにほほえんでいる。天がほほえんで見えたのは朝日がのぼって空が明るい色を含んできたからだろうか。124番歌で崇高なニルギリに向かって化粧していた作者に、夜明けと共に明るさを増す空は、ゆったりとほほえんでいるように見えたのだろう。(鹿取)
(レポート)(2009年1月)
ニルギリは未踏峰だという。より高いエベレストが登頂されていながら不思議に思ったが、聖峰と呼ばれ登山許可されていない峰があり、氷壁への挑戦は至難でついに果たせない未踏峰もある。
さて、山を目指すように短歌に精進してきたが、極まるところを知らない道である。とそんなことが作者の思いのうちにあったかどうか知るところではないが、たえず世界を意識し、また新しい分野に踏み入ってうたってこられた御自身の雄たる気概を「未踏峰ニルギリ」にむかって認識されたかもしれない。いずれにせよ、ここで何の構えもない天を「水のごと静けき」と抑制をきかせてたたえており、
さらに「未踏峰ニルギリ」をあたかも「抱きほのかほほゑむ」とは眼前にこのうえもなき二物の在るを詠嘆している。(慧子)
(意見)(2009年1月)
★自然界、地球の不思議さ、結句がよい。(崎尾)