薄墨町奇聞

北国にある薄墨は、人間と幽霊が共に暮らす古びた町。この町の春夏秋冬をごらんください、ショートショートです。

キャットフードの謎

2012-02-01 20:05:19 | 幽霊・怪異談
可愛がっていた猫が、死んでしまったという。

ペット葬儀社で火葬にしてもらい、
骨は庭に埋めたが、
死んでもなお、家中でニャーと鳴く声がしたり、
カーペットでばりばり爪を研ぐ音がしたそうだ。

不気味とか、こわいという感覚はなく、
家族は皆、
「死んでも、ここにいたいんだべ」
「めんこいもんだな」
などと言い合って、
「フクや、フク」と名を呼び、
死んだ猫を恋しがった。

ところが。
いちばん猫を可愛がっていた婆さまだけは、
「いくらこの家が恋しくても、あの世さ行かねばだめだ」
いつまでもこの家にいたら成仏できないと、
フクのことを心配したそうだ。

そのうち。
婆さまは風邪をこじらせ、あっけなく死んでしまった。
死ぬ前、苦しい息の下から
「おらが死んだら、フクもあの世さ一緒に連れて行くからな」
そう、家族に告げたとか。

その婆さまの葬儀で。

棺桶に横たわった遺体が、
キャットフードの大袋をしっかり抱えているので、
親類は皆、仰天したそうだ。
なんでも、フクを連れてあの世に行ったら
エサをやりたいからという、婆さまの遺言だったそうだ。

これは、葬儀場へ出入りしている、女房のいとこ
(例のクレセントホールの噂を教えてくれた
仕出し屋でパートをしているおばちゃん)
から聞いた話。

なんでも、婆さまがキャットフードを抱えて
あの世に旅立ってから、
そこの家で感じられた猫の気配は
不思議に消えたという、おまけもついている。

★★★★

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今年は雪っこが多いよんですな。
雪わらしが夜ごと、雪の町にあらわれます。



ジャンル:
小説
キーワード
キャットフード クレセント ペット葬儀
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