最近では、正月の餅も真空パックで売られている。
だが今でも律儀に、
家庭で餅をつく(さすがに餅つき器で)薄墨衆が多く、
正月過ぎると、
食べきれない餅は、冷凍するほか、
水餅にして保存する。
桶やかめにはった水に餅を沈めておけば、
空気にふれることがないので、
かびないし、乾燥して割れることも防げる。
水はこまめに、きれいなものと取り替える。
もちろん使うのは水道水でいいのだが、
なぜか薄墨では昔から、汲んできた寒の水のほうが
保ちがよいとされてきた。
たしかに。
大変な思いをして運んできた寒の水は、いかにも清らかで、
これにつけておくと、
餅は、まわりが少しほとびるものの、
結構長く保つ。
食べるときは、餅のぬめりをよく洗って、
電子レンジで加熱。
昔は水煮にしたが、つきたてのように柔らかくなった。
水餅でもっともうまい食べ方は、
ゴマ餅だ。
すり鉢で、炒った黒ゴマを油がにじむほど丹念に擂る。
砂糖と、たらたらっと醤油を加えて味つけ。
この香ばしいゴマだれをまぶした、
柔らかい水餅のうまいこと。
子供時代は、勢いのままに何倍もおかわりし、
腹がはち切れそうになったものだ。
「あんた、その顔見てみなせ。見ったくないえ」
お袋が言うので、鏡を見ると、
ゴマだれで口のまわりが黒くなり、
にっと笑うと、黒い歯がのぞいたものだ。
「見ったくない」とは薄墨の方言で、「みっともない」の意。
たしかに、食後は人様には見せられないご面相になるのが、
ゴマ餅の欠点だ。
父方の祖母は、このゴマ餅を、
「お歯黒餅」と呼んでいた。
食べると、お歯黒をつけたような歯になるからだろう。
この呼び名、なかなか捨てがたいのだが、
今の人は、お歯黒とは何か、という説明から
始めないとわからないかもしれない。
★★★
参加しております。
できましたら、ご協力を。

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酒だけではなく、いい年をして、甘いもんも好きでぁんす。
ゴマ餅、胡桃餅、きなこ餅。
どれもうまがんすな。
だが今でも律儀に、
家庭で餅をつく(さすがに餅つき器で)薄墨衆が多く、
正月過ぎると、
食べきれない餅は、冷凍するほか、
水餅にして保存する。
桶やかめにはった水に餅を沈めておけば、
空気にふれることがないので、
かびないし、乾燥して割れることも防げる。
水はこまめに、きれいなものと取り替える。
もちろん使うのは水道水でいいのだが、
なぜか薄墨では昔から、汲んできた寒の水のほうが
保ちがよいとされてきた。
たしかに。
大変な思いをして運んできた寒の水は、いかにも清らかで、
これにつけておくと、
餅は、まわりが少しほとびるものの、
結構長く保つ。
食べるときは、餅のぬめりをよく洗って、
電子レンジで加熱。
昔は水煮にしたが、つきたてのように柔らかくなった。
水餅でもっともうまい食べ方は、
ゴマ餅だ。
すり鉢で、炒った黒ゴマを油がにじむほど丹念に擂る。
砂糖と、たらたらっと醤油を加えて味つけ。
この香ばしいゴマだれをまぶした、
柔らかい水餅のうまいこと。
子供時代は、勢いのままに何倍もおかわりし、
腹がはち切れそうになったものだ。
「あんた、その顔見てみなせ。見ったくないえ」
お袋が言うので、鏡を見ると、
ゴマだれで口のまわりが黒くなり、
にっと笑うと、黒い歯がのぞいたものだ。
「見ったくない」とは薄墨の方言で、「みっともない」の意。
たしかに、食後は人様には見せられないご面相になるのが、
ゴマ餅の欠点だ。
父方の祖母は、このゴマ餅を、
「お歯黒餅」と呼んでいた。
食べると、お歯黒をつけたような歯になるからだろう。
この呼び名、なかなか捨てがたいのだが、
今の人は、お歯黒とは何か、という説明から
始めないとわからないかもしれない。
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ゴマ餅、胡桃餅、きなこ餅。
どれもうまがんすな。










