牛若丸と弁慶というのは、
料亭八潮によく出入りしていた
芸者二人。
本来の権兵衛名は別にあるが、
ふたりは、牛若丸、弁慶という呼び名で知られていたと。
牛若丸は、小柄で若い芸者。
弁慶は大柄な年増芸者。
ふたりは仲がよく、
あうんの呼吸で、さっと機転をきかせて
おもしろいことをして見せたそうだ。
ある夜。
客に連れられて八潮へやって来て、
ひとしきり遊んで帰るとき。
年増の芸者が先に玄関まで来たが、
若い芸者は、客につかまって
なかなか二階から下りてこなかった。
待ちくたびれた年増芸者は、
階段裏に吊されていた座敷ぼうきを持ち出し、
袖まくりした。
そして、あわてて階段を下りてきた朋輩に、
「千本の太刀を集める宿願も九九九本となり、
これで残りはあと一本。
今宵、この五条の橋上で出会ったのも何かの縁。
さあさあ、お前の腰の太刀を置いていけえ」
ほうきをなぎなた代わりに構えて、太い声を出したとか。
年若い芸者も、飲み込みが早い。
ここは五条の橋、
太刀千本を集めるという台詞なら、
相手は弁慶、
自分は牛若丸、とすぐさま気づき、
「近頃、太刀盗人があらわれると聞いたが、そなたが噂の盗人か。
この牛若の太刀、とれるものなら、とってみよ」
打てば響くように応え、
帯の扇子を抜いて見得を切った。
まわりで見ていた人々は、
わっと歓声をあげ大拍手したという。
そのまま、ふたりは階段の途中で、
なぎなた(実はほうき)と笛(実は舞扇子)をはったと打ち合わせて、
「京の五条の橋の上」を派手に演じた。
これがやんやの喝采で評判になり、
以後、彼女たちは
牛若丸と弁慶が通り名となったという。
弁慶芸者は、酒毒で50歳前に死んだそうで、
某会社・社長夫人となった牛若丸は、
恩人弁慶の法要を営んだと聞いた。
★★★★
できればご協力をお願いしぁんす。

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ちっと風邪気味で伏せっておりました。
皆様もどうか、お気をつけぁんして。
料亭八潮によく出入りしていた
芸者二人。
本来の権兵衛名は別にあるが、
ふたりは、牛若丸、弁慶という呼び名で知られていたと。
牛若丸は、小柄で若い芸者。
弁慶は大柄な年増芸者。
ふたりは仲がよく、
あうんの呼吸で、さっと機転をきかせて
おもしろいことをして見せたそうだ。
ある夜。
客に連れられて八潮へやって来て、
ひとしきり遊んで帰るとき。
年増の芸者が先に玄関まで来たが、
若い芸者は、客につかまって
なかなか二階から下りてこなかった。
待ちくたびれた年増芸者は、
階段裏に吊されていた座敷ぼうきを持ち出し、
袖まくりした。
そして、あわてて階段を下りてきた朋輩に、
「千本の太刀を集める宿願も九九九本となり、
これで残りはあと一本。
今宵、この五条の橋上で出会ったのも何かの縁。
さあさあ、お前の腰の太刀を置いていけえ」
ほうきをなぎなた代わりに構えて、太い声を出したとか。
年若い芸者も、飲み込みが早い。
ここは五条の橋、
太刀千本を集めるという台詞なら、
相手は弁慶、
自分は牛若丸、とすぐさま気づき、
「近頃、太刀盗人があらわれると聞いたが、そなたが噂の盗人か。
この牛若の太刀、とれるものなら、とってみよ」
打てば響くように応え、
帯の扇子を抜いて見得を切った。
まわりで見ていた人々は、
わっと歓声をあげ大拍手したという。
そのまま、ふたりは階段の途中で、
なぎなた(実はほうき)と笛(実は舞扇子)をはったと打ち合わせて、
「京の五条の橋の上」を派手に演じた。
これがやんやの喝采で評判になり、
以後、彼女たちは
牛若丸と弁慶が通り名となったという。
弁慶芸者は、酒毒で50歳前に死んだそうで、
某会社・社長夫人となった牛若丸は、
恩人弁慶の法要を営んだと聞いた。
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