鞦韆院落

北京で過ごすインディペンデント映画な日常

宣伝

2016-09-12 00:18:03 | 其他
『我的戦争』という映画のCMが話題です。

『我的戦争』は、香港の彭順が監督し、劉燁や王珞丹が主演している朝鮮戦争映画で、もうすぐ公開される予定です。
先日この映画の宣伝動画がネットにアップされると、たちまち話題になりました。

動画はこちらにありますが、日本から開けるでしょうか。

動画は映画の本編とは関係なく、中国の老人たちが韓国旅行をするという設定です。
老人たちが観光バスに乗り込むと、チマチョゴリを来た若い韓国人ガイドの女性が現れて、中国語で挨拶をします。

ガイド:お早うございます
老人たち:お早うございます
ガイド:ソウルにようこそ。私は本日のガイドです。よろしくお願いします。
老人たち:ハハハ……
ガイド:皆さんはソウルに来るのが初めてなので、まずは私がご紹介を……
老婆A:ガイドさん、私たちは来たことがありますよ。
ガイド:?
老婆B:当時私たちは文工団だった。
老爺A:私たちは鋼刀連だ。
老爺B:お嬢さん、私たちは60年以上前に来たんだ。
ガイド:でも、パスポートにも、コンピューターにも、記録はありません。
老爺C:そのころコンピューターは無かったんだ。
老婆C:パスポートも不要だった。
老人たち(満面の笑みで):そう。パスポートは無かった。
ガイド(不思議そうに):どうやって来たんです?
老爺D:俺たちは、紅旗を持ってやって来たんだ。
ガイド:紅旗を持ってソウルに?
老婆D:当時はソウルじゃかった。
老爺E:漢城と呼んでた。
ガイド:おじいさん、私はまだ理解できないんですが。
老爺F:ある映画を見れば分かるよ。
ガイド:映画?
老爺G:俺の孫は劉燁。
老爺H:私の孫娘は王珞丹。
老婆E:私の甥は監督の彭順。
(以下、俳優の紹介が続くので省略)
老爺I:映画の名前は『我的戦争』。
老爺J:この映画を見れば、どうやって我々が紅旗を持ってやって来たかが分かる。
ガイド:『我的戦争』?
老人たち:そう、『我的戦争』

という内容です。
いかにも戦争に行ったことを誇らしく思っているといった風で、みな意気揚々としています。
(補足:鳳凰網によれば、数年前からネットに出回っていた小話で、韓国のイミグレで中国の老人がソウルに来るのは初めてかと聞かれ、「二度目だ」「前回はパスポートは無かった」「当時は漢城と呼んでいた」「そのときは戦車に乗って来た」と答えるというのがあり、それを元ネタにしたものと思われます。)

しかし、この動画はたちまち反感を集めてしまいました。
「韓国人が見たら怒るに違いない。恥知らずもいいところだ」
「日本の老人が中国で同じことを言ったら、どう思うんだ」
「北朝鮮が核実験をしたタイミングで、こんな動画を流すなんて」
といったコメントがたくさん。
中には肯定的に捉えている意見もあるけど、少数です。

中国では朝鮮戦争のことを抗美援朝戦争と呼んでいて、もちろん正義の戦いだったとされています。
ただ、中共なりの大義名分はあるにせよ、中国が侵略を受けたわけでもないし、多くの犠牲を出し、結果的に北朝鮮の独裁政権を生んだわけで、今の北朝鮮を見れば、この戦争は賛美できたものではないと多くの中国人が感じています。
まして韓国人に向かってこんなことを言うCMは、中国人から見ても異常に感じられるのです。

朝鮮戦争を扱った映画は、過去には少なくありませんでしたが、韓国と国交が成立してからはほとんど作られていないか、あっても注目されるような作品ではありませんでした。
韓国や北朝鮮との関係が微妙だから、扱いにくいというものあるのでしょう。
アメリカとの関係を悪くしたくないという思いもあるはずです。

抗日戦争映画ならば、勧善懲悪で分かりやすいし、最後は戦争に勝利するというハッピーエンドになるので、作りやすいです。
特に2012年以降は反日感情の高まりとともに、テレビドラマや映画で盛んに抗日戦争が取り上げられてきたわけです。
ただ、あまりに多すぎて、さすがに飽きられてきました。

そこにこの『我的戦争』。しかもこんな挑発的なCMです。
これは、韓国やアメリカを敵として扱いやすくなった現れとも感じられます。
近年の南シナ海の問題などで、アメリカとの関係は良好ではありません。
そして今年、THAADミサイルの韓国配備の問題で、中国と韓国の関係は悪化しました。
それを受けて、中国政府は“限韓令”と言われるお触れを出し、韓国人芸能人による中国での大型公演を禁止したり、韓国ドラマやバラエティーの放送を禁止したと言われています。
こういう流れの中で、朝鮮戦争を扱った映画が出てきたわけです。
ミサイル問題は7月に起こったことで、映画はその前に撮られていたから、これは偶然だけど、こういう時勢なら検閲を通りやすくなっただろうし、映画宣伝にもうってつけのタイミングです。
この映画の売り上げ目標は5億元だそうで、今の中国なら無理な数字ではないとはいえ、かなり強気です。

でもこのCMは裏目だったでしょうね。
この映画に関わっている人たちが如何に無神経で頭の悪い人たちか、露呈してしまったわけですから。
はたして、どれくらいの人が観に行くのでしょうか。

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3 コメント

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Unknown (マダム・チャン)
2016-09-12 06:01:03
出ているのは一般人ではなく往年の名優ばかり(現役も多い)ですね。文工団で朝鮮戦争の行った人もいるかもしれないけど、馬精武なんか年齢的にどうかなあ。北京電影学院の学生だったのでは?
朝鮮戦争は『集結号』にも出てきますよね。



Unknown (だーしゅー)
2016-09-12 15:31:32
ご指摘ありがとうございます。
必ずしもこの人たちが行った、ということでは
ないようですね。
補足修正しました。

『集結号』のように“出てくる”程度のものはありますね。
朝鮮戦争をテーマにした映画となると、近年は公開されていなかったと思います。
ただ、最近は朝鮮戦争についてのテレビドラマもあるそうで、変化を感じます。
Unknown (にゃおべん)
2016-09-25 00:45:52
大変勉強になりました。👍

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