8月21日(日)19時~
序盤から中盤にかけて、
工夫の構想がぶつかりあう一戦。
堅陣の先手陣に対しての
後手の鋭い攻めに注目です。
先手 本宮カニデレフさん
後手 あきたくさん
▲76歩△42銀▲96歩△94歩
▲78銀△54歩▲16歩△14歩▲77角(図)
△53銀▲66歩△34歩▲48銀
△32飛▲46歩△62玉▲47銀
△72銀▲26歩(図)
やや変則的な出だしを経て、
先手の力戦居飛車 VS
後手三間飛車△53銀型に。
しばらくは駒組みが続きます。
△71玉▲25歩△33角▲68玉
△82玉▲58金右△52金左
▲56銀△44歩(図)
▲79玉△84歩▲88玉△74歩
▲86歩△73桂(図)
▲87銀△64銀▲78金△83銀
▲68金右△72金(図)
▲98香(図)
両者、指したい手をすべて主張させ
全面戦争に備えます。
先手の▲98香は穴熊の第一歩。
ここで後手が動きを見せます。
△43金(図)
一見、囲いから遠ざかるようでも、
もちろん後の構想を据えての進出。
先手はかまわず穴熊を目指します。
▲99玉(図)
深さ、厚みを同時に果たすとすれば、
囲いのトップクラスに君臨する銀冠穴熊に。
このまま黙って組まれるのは
後手にとっては失点につながりかねない。
△43金を活かすべく、
ここから狙いの構想を披露します。
△55歩▲67銀△35歩▲88金(図)
△42角▲26飛△34飛▲78金右△33桂(図)
後手の秘めていた構想は石田流・△42角型。
ただ、この場合は「飛車交換を狙う捌き」
ではなく、「抑え込みを秘めた捌き」。
その根拠としては、△43金と上がり
将来的な△54金を見据えている事。
本格的な捌き合いを狙うならば
△62金までくっつけてですが、
先手は四枚穴熊、長い目で見ると
終盤で堅さ負けする恐れがあります。
ただ、先手としては最密度で
穴熊を完成できた格好。
後手の構想におちいる前に
開戦を目指します。
▲56歩(図)
△同歩と応じるのは▲同銀で
先手が軽くなる。
ここは強く応じます。
△54金(図)
▲68角(図)
▲68角は一見弱気のようでも、
△35の地点、つまり▲36歩を
将来的に見据えています。
また、後手にとって43の地点に
穴がある以上、金銀交換は難しい。
では、ここからどう攻めていくか?
△75歩(図)
ここで注目して頂きたいのが
「△42角」。
堅陣の極める先手にとっての
唯一の弱点といえば、8筋。
そう、後手は盤上すべての駒を
最前線に進出させて、抑え込みを
ちらつかせながら、
8筋を一直線に狙っているのです。
対する先手、ここからの方針を考えるならば
「攻めさせて、その反動で反撃する」。
両者の読みがぶつかり合う、
白熱した中盤戦の開幕です!
▲55歩△同金▲75歩△同銀▲45歩(図)
△56歩(図)
一見、ただのようですが、
用意の返し技に注目です。
▲同銀△77歩(図)
歩を犠牲に銀をそらせ、
△77歩と急所に叩き込みます。
攻防においての最重要局面。
考察に入る前に、本譜の進行を辿ります。
▲55銀△78歩成▲同金△85歩(図)
金銀交換を経て、後手の形が
明るくなりました。
最後の△85歩が先手にとっては
痛打で、一足先に後手が急所を捉えました。
ここは応じるよりありませんが・・
▲85同歩△45桂(図)
歩切れを解消しながら桂馬を活用、
機敏かつ慎重に動いた後手が
リードを奪ったと考えられます。
さきほどの局面
ここで本譜の▲55銀ではなく
▲77同桂(図)
穴熊において桂馬を跳ねるのは
抵抗があるが、本局の急所、
▲85の地点に数を足しているのが主張。
以降、考えられる手順は
△66金▲55銀△36歩▲66銀
△同銀▲67歩(図)
銀を奪えば▲43銀、△37歩成は▲35歩で
無効なのが先手の狙い。
局面としては難解だが、
深さを活かすとすれば先手を持ってみたい。
本譜に戻ります。
先手にとって8筋は死守すべく地点。
反撃を楽しみに、全力で耐えます。
▲76金(図)
しかし、ここで三手一組の
非常に鋭い攻撃が決まります。
△86歩▲同金△57桂成(図)
あえて86に金を移動させ、
駒の利き数を打ち破る△57桂成。
後手の攻撃が見事に決まりました。
▲59角△86銀▲同銀△68金(図)
続いての△86銀~△68金も
鋭い踏み込み。
ただ▲59角では、▲57角と応じて
△86角に▲77銀と補強すれば
頑張れる余地がありました。
二回連続で急所をつく技を
炸裂されては、穴熊といえども
攻略されてしまったようです。
▲68同角△同成桂▲同金△86角
▲77銀△79銀(図)
図の局面で終局となりました。
攻防ともにつらい恰好で、
穴熊を活かした反撃の余地を
与えない後手の攻めが光りました。
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本局で注目して頂きたかったのは
「先手の穴熊の組み方」と
「後手の攻めの構想」。
単純なる捌き合いでは、
きれいに組み上げた先手の穴熊に
劣ってしまう為、すべての駒を
躍動させて先手陣に
迫った後手の構想は様々な面で
応用が利きそうです。
本宮カニデレフさん、あきたくさん、対局お疲れ様でした!