だいずせんせいの持続性学入門

自立した持続可能な地域社会をつくるための対話の広場

里山の0.8W

2009-11-22 10:09:10 | Weblog
「大型技術の開発のために必要な大組織は、往々にして責任の所在が不明確であり、そのために機能が阻害される。そこでは一つのプロジェクトに余りにも多くの人々が参加しているので、結局、誰もが責任を負わない。そしてこれまでの技術感覚での責任は、すき間からどこかにこぼれ落ちてしまうのだ。しかし技術の質に関してより破壊的なのは、このような大型組織のもつ特性、すなわち、初期の探求における活気に満ちたうねりの後に、仕事は定型的となり、そして結局どうにもならなくなってしまうという傾向である。
 この点だけからしても−原子力論争にふれるまでもなく−核分裂はもはや何の面白味もなく、したがって結局うまくはいかないだろう。つまりそれは失敗したのである。大規模技術のとらえがたいが、しかし重要な不利益は・・・それがあまりに大きいのでそれと遊ぶことができず、したがって興味と創造の本来的な息吹が失われてしまうというところにある。
 それに比べてソフト技術は、独創的な職人を出現させ、彼はどこのまともな農業博物館にも飾られているような精巧な(しかし理解しうる)小道具をつくる。そこでは単純さへの挑戦ならびに素朴な芸術味が最大限に発揮される。」(エイモリー・ロビンス『ソフト・エネルギー・パス−永続的平和への道』時事通信社1979年日本語版p.232-233)


 昨日は豊田市足助新盛で新盛里山耕流塾・里山デザインコース・マイクロ水力発電講座を開催。2回目のこの日は、私から「原子力利用を考える」という講義をして、その中でロビンスの議論も紹介したあと、菅田和(すげたわ)集落の市民農園の田んぼ横に移動。沢水の用水路に小さな水車発電機を設置して、特性を計測する実験を行った。参加者は20代から70代まで、予想に反して女性も結構いる。豊森なりわい塾のメンバーや他の新盛里山耕流塾の参加者が多い。
 水車は(株)篠田製作所が作製したらせん水車の模型。さらに菅田和集落の住民で機械屋さんのSさんがその模型にインスピレーションを受けて手作りした水車(写真はこちら)。いずれも自転車のハブに組み込まれた発電機を流用し、定格(最大出力)は2Wである。まさに「単純さへの挑戦ならびに素朴な芸術味が最大限に発揮され」ている愛らしい機械である。

 水路に到着すると、一見して以前に比べて水量が少ないことがわかる。冬に入って雨が少なく、沢水は少なくなるのだ。これでうまく水車が回るだろうか、と心配だったが、ともかく動き始めた。小さな白熱電灯式のランプはほのかに赤くなるくらいである。
 できるだけ沢水が水車に入るように、水路の斜面に板きれで水のガイドをつけ、水漏れを防ぐように土で固める。コンビニ袋で即席土嚢をつくる。いなかのおじさんたちはその場にあるもので工夫するのが得意である。
 まずは流量測定。バケツに水を入れ、一杯になる時間をストップウォッチで計るという原始的な方法。ストップウォッチが2台あったので二人でやってもらう。何度か練習していたら、二人の数字がぴたりとあってきた。結果は4リットル/秒。水力発電としてはけたちがいに極少の水量である。
 次は発電量の測定。計測回路につなぎ換えて、負荷抵抗を変えながら電圧、電流、回転数を計測する。長靴を履いて用水路の中に入った参加者がメーターを読み上げ、皆が記録する。回転数は30秒間、目で見て回転を数えるという原始的方法。声を合わせて「いち、に、さん・・・」と数える声がユーモラスである。
 次に水車の羽根を別のタイプのものに付け替える。機械好きのおじさんたちはSさんの指導の下、わいわい言いながらねじをはずしたりつけたり大騒ぎである。女性陣は秋が深まる里山の景色を楽しみながらのおしゃべりを楽しんでいるようだ。全部で4つの羽根のタイプで同様な計測を行い、どれが一番出力が高いかを調べてみた。

 その結果、この日の最高出力は0.8Wであった。
 5Wの白熱式ランプが明るく点灯するのは無理である。それを見て、参加者からは「もう少し電気が起きると思っていた」とやや落胆の声。しかしながら、測定データからその場で特性図を作ってみると、高輝度発光ダイオード(LED)ならば3個点灯できることがわかった。次回はLEDランプを作製して点灯してみる予定である。私たちはそれがそれなりの明るさであることが想像できる。そいつが灯った時の参加者の意外な顔が目に浮かぶようだ。

 吹けば飛ぶような小さなエネルギーを、指の隙間からこぼさないように、大事に大事に取り上げる。そういうことを実際に里山の自然の中でやってみる。そうすると「興味と創造の本来的な息吹」が息づきはじめる。その意義は頭よりも身体が理解するだろう。
 ロビンスはそれを「永続的平和」への道と位置づけた。もう30年も前のことである。その一歩を私たちもこの日、このように踏み出せたことが、私にはとてもうれしかったのである。
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LEDランプ 自然の中で 発光ダイオード 水車発電機 マイクロ水力発電 原子力利用 時事通信社
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