Panorama Japan

映像作家・原田大三郎のパノラマ写真ブログ

「メディア芸術」とは

2009-09-23 13:26:42 | 時事
(以下、7月10日の国立メディア芸術総合センター(仮称)設立準備委員会での
原田の発言の抜粋です。)

日本の場合、文化庁の定義によると、 「メディア芸術」とは,映画,マンガ,
アニメーション,CGアート,ゲームや電子機器等を利用した新しい分野の芸術の
総称。ということになっています。
ここで混同してはならないのが、「メディア芸術」と「メディアアート」とは若干
ニュアンスが違うということです。

たとえばウィキペディアを参考にしていただけるとはっきりするのですが、海外で
一般的に認知されているのは、「メディアアート」という総称であり、これは日本
での呼び名の「メディア芸術」の中の、ひとつの領域である「CGアート」や「電子
機器等を利用した新しい分野」に対応するものです。

そもそもメディアアートとは、ファインアートのひとつの領域であり、ウィキペ
ディアに書いてあることを参考に読むと、「芸術表現に新しい技術的発明を利用す
る、もしくは新たな技術的発明によって生み出される芸術の総称的な用語である。
特に、ビデオやコンピュータ技術をはじめとする新技術に触発され生まれた美術で
あり、またこういった新技術の使用を積極的に志向する美術である。」とありま
す。つまり、多様な表現を含んでいるということです。キーワードは”新技術”で
す。ですから最近話題のメディアアートの作品には、早くもロボットやバイオテク
ノロジーを意識した作品が登場してきています。

そして、このメディアアートの特徴として、他のファインアートに比べ商業化・産
業化の可能性が非常に高いことが挙げられます。作品が、ある商品やサービスにな
る可能性があるということです。
特にゲームとは、親密な関係にあり、表現において、その領域に明確に線を引くこ
とは難しいかもしれません。

このような性質を持った、メディアアートと、日本において特に顕著なのですが、
すでに商業化・産業化を達成している、映画・マンガ・アニメーション・ゲームが
ひとつになって「メディア芸術」という世界を構築したことは、日本においては当
然の結果だったかもしれませんし、日本だから可能だったのかもしれません。

ただ、まだ発展途上のメディアアートは、可能性はあるのですが、映画・マンガ・
アニメーション・ゲームのような商業化・産業化が成功している例がすくないのが
現状です。商業化・産業化という部分ではまだまだ遅れているのです。
商業化・産業化ということを、もっとくだけた表現にすると、それで”食べていけ
る”・”生活できる”ということです。

この、映画・マンガ・アニメ・ゲームといわゆるメディアアートを総称し、「メ
ディア芸術」と呼んだ先見性が、一般には正確に理解されないまま、アウトプット
されたことが、今回の国立メディア芸術総合センターに関する様々な報道の、その
ひとつの要因となったような気がします。

メディア芸術祭の発展は事実ですが、まだまだ一般的には、認知度が低いために、
「メディア芸術」・「メディアアート」という定義を飛び越えて、認知度が高いマ
ンガやアニメーション・ゲームがクローズアップされ、”アニメの殿堂”や”国立
マンガ喫茶”と呼ばれてしまった。そこでは、「メディア芸術」という言葉はいつ
の間にか削除されてしまっています。

ほとんどのメディアアーティストは制作面でも経済面でも、個人で活動を行ってい
る人がほとんどです。個人で制作を行う上での限界もあります。しかし、その限界
を乗り越え、すばらしい作品を作りえたとき、その作品は万人に共感を呼び、楽し
さ・喜び・あるいは社会的な部分での問題意識を我々に提示をしてくれます。

メディア芸術祭の展示を見ていただければ分かるのですが、アート部門の展示コー
ナーの人気はマンガやアニメ・ゲームを凌駕するほどです。
メディアアーティストは新技術が垣間見せる未来に着目し、既存のフレームの中で
作品を作るのではなく、自らが新しいフレームを構築するアーティストなのです。
ですから認知されるまでには残念ながら、少々時間を必要とします。




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