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ヒルドイドの違法な美容目的使用は推計「年間93億円」

2017-10-30 20:11:07 | Weblog

ヒルドイドの違法な美容目的使用は推計「年間93億円」

 
ダイヤモンド・オンライン  10/20(金) 6:00配信 


健康保険法や国民健康保険法では、医療給付の対象を病気、ケガ、出産、死亡と限定しており、美容目的で健康保険を使うことはできない。

ところが、本コラムの第147回でも紹介したように、「ヒルドイド(成分名:ヘパリン類似物質)」という外用薬の美容目的使用が急増し問題になっている(参考:『「ヒルドイド」を美容目的で処方してもらうのは違法だ』)。

この問題に、いち早く対応方針を明確にしたクリニックがある。東京・千代田区にある「お茶の水内科」(院長・五十嵐健祐氏)だ。10月13日、ヒルドイドの処方について、次のような対応策をとることをホームページで発表したのだ。

「ヒルドイドの処方に関しては、一旦全額医療費をご負担いただき、受付から医療費の明細、レセプト(診療報酬明細書)を発行いたしますので、その後、保険証の発行元の健保組合と直接、保険対応になるかどうかをやり取りしていただくという方針としました。また、本当に治療目的で保湿剤が治療上必要と判断される場合はこの限りではありません」

お茶の水内科の院長・五十嵐健祐医師は、なぜ、このような対応をとることにしたのだろうか。

きっかけは、10月6日に健康保険組合連合会が公表した「政策立案に資するレセプト分析に関する調査研究III」(PDF)で、美容目的でのヘパリン類似物質の処方が全国で年間93億円にのぼると推計されたからだという。

 「皮膚の乾燥などを訴える患者さんからの強い希望で、皮脂欠乏症などの保険病名をつけてヒルドイドを処方した経験のある医師は少なからずいると思います。

ただ、今回、健保連の調査研究で、そうした必要性の低い保湿剤の処方が年間93億円にものぼると知って、看過できないと思ったのです」(五十嵐医師)
.

● 健保連の分析で明らかになった ヒルドイドの美容目的使用

 病院や診療所が健康保険組合に医療費を請求する際、診療報酬明細書には病名を記載することになっており、「この薬は、この病気やケガにしか使えない」という適応も決まっている。

 本来、ヒルドイドなどのヘパリン類似物質は、アトピー性皮膚炎による強い皮膚の乾燥、凍瘡、手術後のケロイドの治療などに用いられるものだ。

ところが、ここ1~2年、目立っているのが「皮脂欠乏症」「皮脂欠乏性湿疹」といった病名でのヒルドイドの処方で、美容目的での利用が疑われるケースが増えていたのだ。

今回、それが健康保険組合連合会の政策提言で明らかになった。

健康保険組合連合会(以下、健保連)は、おもに大企業に勤める会社員とその家族のための健康保険組合を取りまとめている組織で、2016年4月1日現在、全国1399組合が加入している。

冒頭の調査研究は、病院や診療所などが健康保険組合に提出した診療報酬明細書(レセプト)を分析して、エビデンスに基づいて医療費の効率的・効果的な使い方を国に政策提言するもの。

対象期間は、2014年10月~2016年9月。健保連に加入している健康保険組合のレセプトのうち、病院や診療所の入院外医療費と調剤薬局のデータのなかから保湿剤が1種類以上処方されたケースを抽出して分析している。

その分析によると、ヒルドイドなどのヘパリン類似物質のみの処方による薬剤費の男女比は、男性が約10億円なのに対して、女性は約15億円。女性のほうが男性よりも1.5倍も多い。

女性が使った薬剤費が男性より優位に高額になっているのは、美容が気になるお年頃の25~54歳だ。

この年代が使っているヘパリン類似物質の使用額は、男性が約1.1億円なのに対して、女性は約5.6億円。

処方額全体に占める割合は、男性が約11%なのに対して、女性は約37%と高い数値を示している。

 
細かい年代別では、たとえば25~29歳だと、男性は約1550万円なのに対して、女性は約7573万円と約5倍も差がある。

年齢が上がるにつれてその差は大きくなり、40~44歳は男性の約1800万円に対して、女性は1億354万円で約5.8倍の開きが出ているのだ。

しかも、2015年9月からの1年間の25~54歳の女性へのヘパリン類似物質の処方件数は、前の1年間に比べて急増しており、男女比では5倍以上の差が出ている。

ヘパリン類似物質の処方が増えている背景には、「美容アイテムとしての『ヒルドイド』の流行が考えられる」として、女性たちが美容目的でヒルドイドを求めている実態を明らかにしたのだ。

● ひとりの無駄遣いが数千円でも まとまると93億円になる

さらに、健保連では必要性の低いヘパリン類似物質の処方が、日本全体ではどのくらい広がっているかも試算しており、それが冒頭の金額だ。

処方されたのがヒルドイドなどのヘパリン類似物質のみのレセプトのなかから、保険請求の病名が皮脂欠乏症や皮脂欠乏性湿疹などの「皮膚乾燥症」だったものを紐づけしていくと、その薬剤費は2年間で約10億円。1年分では5億円になる。

これをもとに、健保連全体のデータと厚生労働省の「概算医療費データベース」の医療費を比較すると、必要性の低いヘパリン類似物質の処方の全国的な推計額は93億円にのぼるという。

たとえば、ヒルドイドソフト軟膏(25g)を1本出してもらうためにかかる費用は、健康保険適用前だと約5000円。

70歳未満で3割負担の人の自己負担額は1500円程度だ。

美容目的でヒルドイドを求める人は、「たかが数千円のことで、ケチケチしなくても」と思っているかもしれない。だが、たかが数千円でも、多くの人が同じように考えて行動した結果、93億円もの無駄遣いを生み出し、健康保険財政を圧迫する一因を作り出しているのだ。

前出の五十嵐健祐医師も、この数字に驚きを隠せなかったという。

「私の専門は環器内科で、心筋梗塞などの心血管疾患の治療や再発予防に当たっています。たとえば心筋梗塞の治療のひとつである心臓カテーテルは1回の治療費が200万円かかります。必要性の低いヘパリン類似物質の処方に使われている93億円を回せば、カテーテル治療が4500回以上できて、救える命が増えていきます。

私は皮膚科医ではありませんが、クリニックは内科を標榜しているので、日々、さまざまな患者さんを診察しており、ヒルドイドの問題も無関係ではありません。一保険医として健康保険の適正利用を促すために、この機会にヘパリン類似物質の処方について当院の対応を明らかにしておくことにしたのです」(五十嵐医師)

● ヒルドイド単剤の処方は 保険適用外になる可能性も

健保連では、今回の分析結果に基づいて、病名が皮膚乾燥症でヘパリン類似物質または白色ワセリンのみの処方で、他の外用薬や抗ヒスタミン薬と同時処方されていない場合は、保険適用から除外することを国に提言していくという。

また、中長期的には、海外の保険収載の状況や市販薬の販売状況なども踏まえて、保湿剤そのものを保険適用外にすることを検討すべきと訴えている。

健保連は企業の健康保険組合の意向を代弁する業界団体だ。数ある利害関係者のひとつで、そこが政策提言をしたからといって、すぐに国の政策に取り入れられるわけでもないし、すぐに保険適用の範囲が変わるわけでもない。

だが、ヒルドイドの美容目的使用はそもそも違法で、それを求める女性たちや分かっていながら処方する医師には社会の厳しい目が注がれている。

年は2年に1回の診療報酬改定が行われるが、今回の健保連の政策提言がきっかけとなり、何らかの対策が講じられる可能性も否定できない。

ヒルドイド単剤での処方を保険適用から除外することが現実のものとなれば、とばっちりを食うのは病気で薬を必要としている人たちだろう。

アトピー性皮膚炎など皮膚の病気がある場合、保湿剤だけではなく、その他の薬も同時に処方されるのが一般的だが、なかにはヘパリン類似物質だけを処方されている人もゼロではないはずだ。

だが、美容目的でのヒルドイド使用が横行したせいで、一律にヒルドイド単剤での処方だと健康保険が利かなくなると、病気で苦しんでいる人の負担が増えることになってしまう。
また、いったん処方した薬が保険の審査を通らず、次々と切られるようになると、本来、健康保険組合が支払ってくれるはずの保険給付分(たとえば70歳未満は7割)は病院や診療所の持ち出しになる。

経営を圧迫された医療機関は、「患者の病気を治す」という本来の業務に支障をきたしかねない。

健康保険でヒルドイドの美容目的使用を続けている人は、国の財政や他の患者のことなど考えたことはないのだろう。

だが、その安易な行動が健康保険財政悪化の一因となり、自分以外の患者や医療機関にも影響を与えることを自覚してほしいと思う。

第147回の本コラムでも紹介したように、ヘパリン類似物質が配合された市販薬も発売されている。

美容目的で使いたい人は市販薬を町の薬局やドラッグストアなどで購入すればいい。

それでも、どうしてもヒルドイドがいいなら、全額自費で処方してもらう方法もある。

健康保険がきかないので自己負担するお金は高くなるが、美を追求する女性たちにとっては、ヒルドイドはそれだけ価値のあるものなのだろうから、お安いものではないだろうか。

● ヒルドイドの保険外しが その他の薬剤にも波及する?

健保連は、将来的にはヘパリン類似物質などの保湿剤そのものの保険適用を外していくことを今回の政策提言に盛り込んでいる。

美容目的での医薬品の使用が厳しく問われるのは当然だが、恐いのは医療上必要性の低い医薬品の保険外しの議論が進むことで、それが本当に必要な医療にまで及ぶことだ。

診療報酬を決める厚生労働省の中央保険医療協議会審議会などでは、これまで何度もビタミン剤や湿布薬、うがい薬などを健康保険の適用から外そうという議論が持ち上がっている。

だが、医療上、必要性が高いのか低いのかの線引きは難しく、一律に健康保険が使えなくなると、それを必要としている人の負担は増大してしまう。

必要な医療を、必要な人が使えなくなるような行き過ぎた事態を招かないためには、国民も自らの身を正す必要がある。

大きな病気をして本当に医療が必要になったときに、「あのとき、無駄遣いしなければ…」と後悔しないように、ふだんから健康保険は適正に利用することを心がけたい。

  (フリーライター 早川幸子)

 

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