メールが届く。
「素敵な女性と知り合いたくはありませんか?」
典型的な迷惑メール。
既に三年もこんな日々が続いていた。
「あぁ畜生」
男は携帯を閉じて目の前の仕事に向かおうとした。
だがまたもメールが届く。
「素敵な女性と知り合いたくはありませんか?」
機械的に送られてくる文章。
最低のルーチンワーク。
男は苛立ちながら携帯を閉じる。
目の前には一つのボタン。
男は某国の工作員。
彼の手にはミサイルの発射装置が渡されていた。
「敵国の首都に向けミサイルを発射せよ」
三年前に送られてきた命令だ。
男は躊躇ったが祖国の命令に従う決意を固めた。
そしてボタンを押そうとした瞬間からこのメールが届き始めたのだ。
味気のないメール。
だがこれが届くことによってのみ男は本国からの命令変更かもしれないと期待を繋ぎ
ボタンを押す事を止められるのだ。
だが届くのはお決まりの文章。
何度となく怒りを覚えた。
これだけの数メールが来るのだ。一通ぐらい命令変更のメールが来てもいいではないかと。
だが送られてくるのは機械的なスパムのみ。
期待を裏切り続けるメール。
しかし止まればボタンを押さざるおえなくなる。
まさに究極の迷惑メール。
世界のどこかで男は今日も苦悩する。
着信音に怒りと期待をおぼえながら。