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BY 鈴木小太郎

「私は三十六歳で結婚するまで、経験がゼロ。きっちり直系家族の秩序主義をやり遂げました」(by 磯田道史氏)

2017-06-15 | 渡辺浩『東アジアの王権と思想』
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2017年 6月15日(木)10時36分26秒

昨日の投稿は去年12月12日の「エマニュエル・トッドと磯田道史氏のほのぼの対談」と比べて公平を欠くかなと思って、「日本の人口減少は『直系家族病』だ」を読み直してみたのですが、あまり印象は変わりませんでした。
トッドが、

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その薩摩の特殊な家族形態をどのように捉えたらいいのか……。私の考えでは、方言と同じように、基本的に家族システムは中心から周縁部に伝播していくものです。だからユーラシア大陸の周縁部であるヨーロッパで核家族が中心的形態となっていることは、核家族こそが最も古い家族システムだということなのです。
 ただ、アルプスの溪谷やブルターニュ地方などの孤立した地域には、簡単に説明のつかない家族システムも存在します。それこそ、すべてを調べるためには百五十歳まで生きなければいけないくらい(笑)。
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と述べた部分(p131)は、「中切」の問題点を糺すには絶好の機会でしたが、磯田氏は薩摩関係以外の応答はしていないので、家族社会学にそれなりに詳しいはずの磯田氏が「中切」に気づいていなかったことはこれで確定ですね。

「中切」の謎(その1)
http://6925.teacup.com/kabura/bbs/8655
「中切」の謎(その2)
http://6925.teacup.com/kabura/bbs/8657

また、トッドは、要所要所で日本ローカルな話からもう少し一般理論に広げようと試み、例えば、

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 日本の社会が、秩序を重んじる直系家族によって固定化してしまったとき、それを打開するために薩摩の人たちが、あるいは薩摩風の人たちが無秩序というか、フレキシビリティを発揮するのですね。それは直系家族より前に存在した、原初的でアルカイック(古風)な家族システムによるのかもしれません。
 普段、日本人は非常に規律正しく礼節を重んじる民族ですが、と同時にもっと柔軟で、「自然人」とでも言うべき奔放な側面も併せ持っている気がします。同じ直系家族のドイツやスウェーデンで「自然人」を見つけようとしたら、もっと深く地層を掘り返さないといけない。(笑)
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という具合に誘うのですが(p132以下)、磯田氏は、

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なるほど。丸山真男が言うところの「古層」のようなものでしょうか。
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というトンチンカンな対応をして、議論が発展する芽を自ら摘んでしまいます。
この文脈で丸山真男みたいな田舎知識人の名前を出すこと自体、根本的なセンスの欠如を感じます。
最後の方で、磯田氏が唐突に万葉集に言及してトッドを混乱させた後、

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【前略】万葉集のころは、日本史上、一番性愛に大らかだった時代ですから。
 一方、変わらなかったのは、親を養うという意識です。実際にそうするかどうかは別として、今でもアンケートをとると「親を養う」という直系家族的な考え方は意外と根強いです。あとは子どもができたら結婚するという考え方。この志向は非常に強く維持されているから、芸能人でも「できちゃった婚」が多いんです。
 トッド 私はこれまで三回結婚しましたが、毎回、子どもが生まれてからでしたよ(笑)。
 磯田 私は三十六歳で結婚するまで、経験がゼロ。きっちり直系家族の秩序主義をやり遂げました。もてなかっただけだけど(笑)。
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というほのぼのとしたやり取りが続きますが、正直、磯田氏ではなく、私がトッドと対談した方がよっぽど学問的な対話になったような気がしないでもありません。

>筆綾丸さん
『夏草と野望』、読み始めたところです。
『山崎正和著作集』1巻の月報に貝塚茂樹の息子、啓明氏の「高校時代の山崎氏のこと」というエッセイが載っていますが、若いころの山崎正和は精悍で、周囲を圧倒するような迫力があったそうですね。
温和そうな現在のイメージとはかけ離れていますが、若い頃の戯曲には、そうした精悍な側面が現れている感じがします。

※筆綾丸さんの下記投稿へのレスです。
「国家の黄金分割?」
http://6925.teacup.com/kabura/bbs/8944
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