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BY 鈴木小太郎

『舞台をまわす、舞台がまわる―山崎正和オーラルヒストリー』の聞き手について

2017-06-18 | 渡辺浩『東アジアの王権と思想』
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2017年 6月18日(日)09時18分36秒

>筆綾丸さん
>たかが料理屋(料亭?)に出入りしたくらいで、なんでつるし上げられたのか

私も妙な話だなと思いました。
赤線廃止前の時代ですから、普通の料理屋ではなかったのかもしれないですね。
前回投稿で引用した部分の直前、貝塚啓明氏は、

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 中学・高校時代の山崎氏については、実をいうと直接話をするという機会はなく、したがって見聞に基づく印象を書きつらねたい。中学・高校時代の山崎氏は、筆者のようなノン・ポリの安全指向型人間にとっては、驚嘆すべき存在であって、内心「すごい奴」がいるものだと思っていた。当時の鴨沂高校というのは、戦後の学制改革で六・三・三制が発足したとき、当時の京都に駐在した米軍の一将校の英断(?)によって完全な小学区制をしいたことの産物であった。われわれは、旧制中学(京都府立第一中学校)の最後の年次であり、有無をいわさずに女学校(京都府立第一高等女学校)と合併させられたのである。
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と書かれていますが、貝塚茂樹の息子という坊ちゃん育ちで、「ノン・ポリの安全指向型人間」だった啓明氏は些か頼りない証言者ですね。
満州でソ連軍の中でも最も質の悪い兵士たちが行なった暴虐をつぶさに見ていたはずの山崎氏が共産党に入党した事情には不可解な部分が残りますが、『舞台をまわす、舞台がまわる-山崎正和オーラルヒストリー』では、シュトゥルム・ウント・ドラングの時期だった、みたいな説明で終っていて、聞き手も特に追及はしていません。
だいたい同書の聞き手四人は少しぬるくて、例えば阿川尚之氏は、

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 機知に富んだ若者が逆境に置かれながら、ふとした出会いから運をつかみ、努力を重ねて大成功を収める。わらしべ長者からベンジャミン・フランクリンに至るまで、サクセス・ストーリーのパターンは変わらない。山崎さんの冒険は、敗戦とともにあらゆる秩序が崩壊した満州で、病身の父に変わって家族を守りつつ生き延びるという、想像を絶する経験から始まる。かちかちに凍り付いた首つり死体が梁からぶら下がる教室で、なにごともなかったかのように小学生たちが勉強を続けるという光景は、凄惨を越えてシュールである。敗戦から3年、父の死後内地へ帰還して高校へ進んだ少年は、飢えてはいたものの目前の死から解放されて知の世界に耽溺する。共産党の細胞になり、京大で美学を学びながら、初めて書いた戯曲が認められ上演される。不思議な出会いに恵まれ、アメリカへ留学してオフブロードウエーで自分の戯曲公演にこぎつけながら、「成功の泥沼」を嫌って帰国。戯曲を書き続け、評論を書きはじめ、大学で教えているうちに、30代半ばで時の総理大臣に直接助言をするようになる。これが成功物語でなくて何であろう。

http://www.suntory.co.jp/sfnd/asteion/essay/vol15.html

などと言っているのですが、「細胞」は共産党の末端の組織ですから、個人は「共産党の細胞になり」得ません。

細胞(政党)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B4%B0%E8%83%9E_(%E6%94%BF%E5%85%9A)

まあ、つまらない表現に拘っているように見えるかもしれませんが、共産党の歴史にある程度詳しい人だったらこんな書き方は絶対にしないはずで、アメリカ時代についてはともかく、青年期については阿川氏自身がずいぶん頼りない聞き手ですね。
このあたり、山崎氏と同世代で、同じく共産党経験を持つ伊藤隆氏あたりが聞き手だったら、もっと突っ込んだやり取りがあったはずです。
主たる編者である御厨貴氏についても、私はもともと同氏があまり好きではないこともあって種々疑問を感じるのですが、細かくなるのでやめておきます。
牧原出氏あたりになると発言の数が僅少で、更にその中に鋭い質問は皆無であり、そもそも何のためにいたのかすら疑問ですね。

「お前みたいな机上の学問をやっている奴とは違うんだ」(by 矢次一夫)
http://6925.teacup.com/kabura/bbs/7790
「もうひとつの歴史学研究会」
http://6925.teacup.com/kabura/bbs/7795

※筆綾丸さんの下記投稿へのレスです。
「浴沂之楽」
http://6925.teacup.com/kabura/bbs/8950
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