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大愚記 花房東洋 

大 愚 言 ・むかし書いた馬鹿読物(その一)  大愚叢林庵主 大愚東洋

2016年10月25日 06時45分49秒 | 大愚言
今から四十四年前、僕が岐阜のレジャー新聞「月刊パック」に読切戯話と称して連載した馬鹿読物を余興として紹介してみよう。
読切戯話 パチンコ
「月刊パック」(創刊号 昭和四十七年七月十五日発行)
パチンコ=二十世紀に日本で発祥した大衆遊戯。ハンドルを強く押して金属で作られた玉をはじき上げ、うまく穴に入れて商品をもらう遊戯。
マー坊ちゃんは、柳ケ瀬のパチンコ屋で一時間余りパチンコを楽しんでいた。いや楽しんでいたのは、はじめの五分程で後は悔しさと悲しみにふるえる手を執念という卑しげな心でようやく押さえて、パチンコの玉をはじいていたのである。
はじめ玉を百円で買い求めこの台の前にたった時の希望に燃えたあの明るい表情は、どこへ消え去ったのだろうか。この百円をもとでに小柳町あたりでしゃぶしゃぶをつつき、一杯やってサウナで汗でも流そうといった望みは、ひとつひとつこの穴の中へ吸い込まれてしまった。

となりのオヤジは受け皿に玉を一杯つめるばかりか容器に二杯もとっている。それを横目で眺めながら生唾をゴクリとのんでファイトをもやすのであった。そうしているうちに、財布も底をついてしまった。すっかり、しょげきったマー坊ちゃん、店を出ようとしてパチンコ玉が一個おちているのをみつけた。おぉ、これは神様のお恵みだ!その玉をひろい、知っている限りの神仏の名前を叫んで玉をうった。チャラチャラとたよりない音ではあったがマー坊ちゃんにしては、我が子の産声にも等しい歓びであった。一個の玉が十個になった。この十個の玉で何分か後には、あのオヤジのようにこのパチンコ屋の玉を全部とりつくしてやる。しかし、その意気込みも空しく十個の玉は帰るべきところへ帰ってしまった。
「あぁ、ついてないわ」マー坊ちゃんは、外国映画の俳優がよくするジェスチュアの中から肩をすぼめるのを引用してみたが、あまりサマになっていないようだった。

それから、マー坊ちゃんは市民センター近くの屋台で安酒をあおっていた。「人生とは何ぞや」とつぶやいてみては、哲学者のように苦悩スタイルをやってみたが人生より先程のパチンコのことが頭に来てどうにもならないのだ。そんな想いを流し込むかのようにまた安酒をあおるのであった。「もう程々にしやぁ」とオバハンに言われたのは、深夜の二時を過ぎていた。このガメツそうなオバハンがそんなことを言う筈がないのだが、マー坊ちゃんが飲み過ぎて何も注文しないのでそう言ったのだ。マー坊ちゃんは、たたき出されるようにして表へ出た。どうにも思うように歩けないので、歩道に座りこんだ。
「一寸飲み過ぎたな」気分が悪い時、無理にはいた方が楽になると人に聞いた事を想い出したので喉に手を突こんでみた。突こんだ手を出すか出さないかで、すぐ胃の中のものがつきあがってきた。ジャラジャラ、景気のいい音がして、パチンコ玉が口からワンサワンサと飛び出てきたもんだ。

(平成二十八年十月二十三日認)
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