感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

リウマトイド血管炎について

2014-10-24 | 免疫

もともと関節リウマチで長年、近医通院されていた方がリンパ腫精査にて当院血液内科に入院中で、MTXは中断となっています。下肢の浅い潰瘍性病変は皮膚科で生検検査され血管炎変化を認め、最近四肢関節痛が出てきたため当科に相談されました。リウマトイド血管炎に関して文献をまとめてみました。 血管炎の組織診断で、常に皮膚や神経生検ができるわけでなく、骨格筋、直腸、口唇唾液腺などのよりアクセスしやすい組織の検査 "blind biopsies"が提唱されているんですね。治療法は、ANCA関連血管炎のようなガイドラインありませんが、やはり高用量ステロイドと、CYCでの寛解、その後に維持療法としてAZA使用、あたりのようです。

 

まとめ

 

・関節外症状(EAM)はRA患者の40%で発症し、重大な疾患関連罹患率と死亡率に関与する。

・リウマチ性血管炎の年間発生率は、100万あたりの男性で15.8で、女性で9.4、である

・リウマチ性血管炎が長年のRA患者に発生することが報告されている  (期間中、一般的に>10年)

・中型動脈と毛細血管の炎症を特徴とする全身性のリウマチ性血管炎(RV)は、特に不良な結果と関連している

・末梢性壊疽および多発性単神経炎の古典的な臨床的特徴はBywatersらによって1940年代と1950年代に記載された。

・リウマチ性血管炎は、古典的な結節性多発動脈炎と多くの特徴を共有し、末梢神経に影響を与え多発性単神経炎を引き起こし、皮膚、消化管、および他の器官に病変を及ぼすかもしれないが、それは通常、微小動脈瘤の発症には関連付けられていない

 

・最も一般的に関与する血管は、皮膚(〜90%の患者)および末梢神経(〜40%)脈管

・臨床症状は、深い皮膚潰瘍、末梢性壊疽、多発性単神経炎(foot and wrist drop)、炎症性眼疾患および内臓梗塞、など

・リウマチ性血管炎の皮膚症状は、指尖梗塞、livedo、触知可能紫斑、水疱、潰瘍、痛みを伴う結節、または壊疽として提示

・以前の報告と同様に、 リウマチ硬髄膜炎、 眼疾患、肺血管炎、  腸間膜血管炎および壊死性糸球体腎炎、のまれなケースは観察され続けている

 

・全身性血管炎を起こす病原メカニズムは不明であるが、免疫複合体が主要な役割を果たしていると考えられている、免疫複合体の沈着は、補体カスケードの活性化を介して炎症性変化を誘導し、細胞表面のFc受容体に結合することができる。Fcの活性化は、IL-1、およびIL-6、TNF-αを含む白血球の脱顆粒、食作用、接着分子の発現、およびサイトカインの放出を媒介する。

・組織学的には、血管炎は、貫壁性炎症性浸潤および好中球多核細胞の核断片の存在(leukocytoclasis)を伴う血管壁のフィブリノイド壊死によって定義される。

 

・一般に、SRVの予後は不良であると考えられているが、孤立性爪郭血管炎(NFV)は良好な予後を有しこれは通常は全身性疾患の発症を告げるものではない。

・1980年代後半から1990年代にMTX、2000年代に生物学的療法が導入されRA治療コースでより広く使用されるようになった。 いくつかの研究はこの期間にRA関節外疾患および血管炎の発生低下とRA重症度に変化があったことを示唆している。

 

・関節外RAの発症率を見た、最近の集団ベースの米国の研究では、1985~1994年の3.6%から1995~2007年の0.6%にSRVの10年間の累積発生率の減少を報告。

・SRVの発生率のこの減少は、DMARDの使用状況の変化に起因する可能性、および第一選択薬としてのMTXのより具体的使用の増加がある。

 

・Norfolk血管炎レジスタ(NORVASC)では18名のSRVが選択基準を満たし、一人の患者を除くすべて(94%)が SRVの治療のために静脈内CYC(10〜15mg/ kg /日パルス) およびメチルプレドニゾロン を受けた。 CYC治療はANCA血管炎に使用される標準的なプロトコルに従った。患者は平均で6サイクル(範囲3-14)を受けた。累積1年間の死亡率は12%であり、5年間の死亡率は60%であった。 すべて患者はRF血清陽性であった、症例の68~83%にびらん性病変を記録していた。

 

・Makolらの2000~2010年の86例のRV症例と1:2比の血管炎のないRAとの比較研究で、RV診断時の年齢中央値は63歳(範囲51~71)で、RA罹病期間の中央値は10.8年(範囲2.7~21)であった。血管炎の最も一般的なプレゼンテーションでは皮膚病変、続いて血管炎性ニューロパチー、だった。 皮膚血管炎には、(生検で白血球破砕性血管炎の確認をした)血管炎性紫斑、上肢または下肢潰瘍(末梢動脈疾患や感染症などの他の一般的な病因にて血管炎に起因、は除外) および手指の虚血/梗塞または壊疽、が含まれる。

 

・RV患者の中では、BRMで治療されなかったものよりも、RAのBRMで治療されたものは有意に若く(56 vs 65歳, P = 0.004) 、および血管炎神経障害の発生率が低い(21% vs 47%, P = 0.015) ことを示した 。

・RVの危険因子は、 RA診断時のより若い年齢、 RA診断時現在の喫煙状況、  末梢血管疾患、脳血管疾患、 (びらん、結節および/または関節手術を特徴とする)重度のRA と(HCQとMTX以外の)他のDMARDの使用 、およびRA治療のために生物学的製剤、 であった。 HCQと低用量アスピリンの使用は、RVのリスクを低下させることが見出された。

・早期疾患時のリウマチ結節は全身リウマチ性血管炎の発生を予測する

・個別の関節外の特徴 、例えば、リウマチ肺疾患、SS、心膜炎および頸椎疾患などは、 独立してRVリスクの増大と関連していなかったが、  リスクはこれらの二つ以上の存在にて増加した。

 

・臨床検査は、RVの診断を確立する上で有用ではないが、それらは、例えば、ANCA関連血管炎、HCV関連クリオグロブリン血症、およびシェーグレン症候群などの他の条件を除外する

・RV発症は、多くの場合、全身性炎症反応によって予告され、大部分は、ESR、CRP上昇および貧血を持つ。

・RFの高血清レベルは、多くの場合、RVの開始時に検出される

・致命的な経過をたどる患者は寛解を達成した人よりもIgMおよびIgG RFの有意に高い力価を有することが示されている

・抗CCP抗体は、進行性の関節破壊およびRAにおける重度の関節外病変EAMと関連している。 Laskariらは25例のRV患者の93%が、血管炎のないRA患者の70%と比較して抗CCPについて陽性であったと報告した。

・RV-RA患者と非RVの関節外症状のあるRAの比較研究では、IgA RFの増加およびC3レベルの低下のみがRVの診断に貢献するように思われた。

 

診断

 

・RV特融の徴候や症状の不足のため、その診断は壊死性血管炎の組織病理学的実証、理想的には他の同様の病変の原因は(糖尿病、アテローム性動脈硬化症、薬物反応、感染症、新生物)除外に依存している。

・RVのほとんどの症状は、他の血管炎や動脈硬化性疾患によっても引き起こされうる。生検は、アテローム性動脈硬化から血管炎を区別するのに役立つが血管炎の病因診断はほとんど行うことはできない。

・血管炎の病理組織学的デモは診断のためのゴールドスタンダードだが罹患臓器の生検は常に可能なわけではない。骨格筋、直腸、口唇唾液腺などのよりアクセスしやすい組織の検査が提唱されている"blind biopsies"。(ただし非標的生検の収率は50%未満である)

・血管周囲の3つ以上の細胞層の浸潤が血管壁の少なくとも50% で検出されることは 最近の研究でRV患者では75%に認められ、非血管炎のRAやOAでは0だったことから、疾患マーカーとして有用な所見かもしれない。

 

・全身リウマチ性血管炎の診断のためのScott and Bacon's基準  (1984年)

  1.多発性単神経炎

  2.末梢性壊疽

  3.全身症状(発熱、体重減少)を有する患者において、生検によって記録された急性壊死性動脈炎

  4.深い皮膚潰瘍または血管炎(指先梗塞または組織病理学的所見のいずれかによって証明されるように)を伴う活動性の関節外疾患(例えば、胸膜炎、心膜炎、強膜炎)

→RA患者における上記症状の1つ以上がRVを示唆する。

 

治療

 

・RAを有する患者の死亡率は一般集団の少なくとも2倍で、疾患の重症度に関連している

・希少性、重症度およびRVの不均一な臨床所見を考慮すると、治療は持続的な攻撃的な免疫抑制を使用し、大部分は経験的である。

・二つの小さなオープンラベル試験の結果や過去の経験は、特に重篤な疾患(神経障害および生検で壊死性動脈炎)を持つもので、高用量のCSSとCYCの使用を支持する

・皮膚や末梢神経が関与するリウマチ性血管炎の軽症型は、グルココルチコイドおよびメソトレキサートまたはアザチオプリンで治療することができる。 より重篤な器官系の関与では、より高用量のステロイドおよびシクロホスファミド、または生物学的薬剤を用いた治療を考慮する。

 

・治療と転帰は、ほぼすべての患者がステロイドを投与され、経口ステロイドの開始用量平均値は40mg (IQR 27.5–60)のプレドニゾン同等であった。患者の29%(24/83)はCYCで治療された(14 oral, 9 i.v. and 1 both)。 治療開始後6ヶ月間は、患者の38%は、RV症状の完全寛解を達成。 5年間では、患者の36%は血管炎(類似または異なる臨床所見)の再発あり。  RV診断時点での喫煙、 RV発症時でより低いESR とCYC使用 は、 有意に再発のリスクを高めることが見出された。

 

・メチルプレドニゾロン+IVCYと他の治療法を比較したオープン試験では早期の応答(0〜4ヶ月)、下腿潰瘍および神経障害の治癒を含めて、IVCY群で有意に多くみられた。また他の治療群(54%)よりも低い再発率(24%)だったが、死亡率は両群で同様であった。

 

・Heurkensらは、主に皮膚所見をともなう全身リウマチ性血管炎(SRV)の19人の患者を無作為化して、 従来の抗リウマチ治療 対 アザチオプリン(AZA)2mg/ kgおよびプレドニゾン60 mgの比較で、 AZA群では、より大きな臨床上の有効性と、 副作用、再発および死亡の発生率が低い のを実証した。

・ANCA関連血管炎では、CYCにて寛解が達成された後に維持療法としてAZAが使用されるが、RVでの使用については最近のデータはない。

 

・RVでの抗TNF療法の役割は、一部の患者では利益の報告をともない不透明なまま。 一方で一部文献では抗TNF誘導性血管炎の>200以上の例がある。 活動性RAでの生物学的製剤使用例にて薬物誘発性による血管炎とRVを区別するのは困難なことがある。

・たいていはRVは、RAの疾患の重症度および/または不十分な免疫抑制に起因するものであった。

・免疫抑制および抗TNF薬が失敗または禁忌であるときリツキシマブは重症のリウマチ性血管炎の患者における選択の治療であるかもしれない。

 

 

参考文献

Rheumatology (Oxford). 2014 Jan;53(1):145-52.

Rheumatology (Oxford). 2014 May;53(5):890-9.

Semin Arthritis Rheum. 2006 Oct;36(2):88-98.

Clin Rheumatol. 2013 Jul;32(7):937-42.


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