11月23日の朝日新聞に管副総理のインタビュー記事が載っていた。それによると、デフレなどの景気対策の予算ではカネを使わずに知恵を使う」と言っている。また、中長期的戦略としては「単純計算ではこのままでは財政赤字が拡散する。(中略)難しいなかでやりうる可能性があるとしたら、財政に依存しない景気浮揚だ」とも言っている。もっともなことであるし、今の日本の財政状況ではそれ以外に選択肢はないように思う。
当然マニュフェストも見直すのかと思いきや、マニュフェストの見直しに着手との問いには、「見直しではない。マニュフェストを実行するというのは民主党としての約束で、それを具体化するための作業をしている」と否定している。しかし、この「民主党としての約束」というのが曲者で、閣僚によってつごうよく使われているように思う。選挙で圧勝したからマニュフェストが支持されたという閣僚の言いぐさは、国民を苛立たせるだけだ。
マニュフェストは手に入りにくいだけでなく(民主党のホームページで見ることも可能だが、PDFファイルを隅から隅まで読む人は少ないだろう)、その作り方に問題がある。民主党が手本にしている英国では、個人や地域の声、地方の党員や労組の意見を聞き、2年ぐらいかけてマニュフェストをまとめあげるらしい。しかも、選挙後に各省庁が「グリーンペーパー」や「ホワイトペーパー」を発表し、国民や関係団体に意見を求めるということになっている。反対意見が多ければ当然、見直しをせまられる。マニュフェストがそのまま政策になるわけではないのだ。民主党のマニュフェストは、国民の意見を吸い上げて出来たとは思えないものもあるし、公表されたのは総選挙前に1ヶ月前にすぎない。国民との間に十分なキャッチボールもされないままに、「国民との約束」だからといって見直しをしないというのは、あまりにも官僚的ではないか。
今は民主党の支持率が60%台で推移しているが、それは事業仕分けによる無駄使いの削減や民主党への期待によるものであり、かなり甘めの評価とだと思う。それは日本株の下落を見てもよくわかる。市場の評価はもっときびしいのだ。鳩山内閣が国民の評価の低いマニュフェストを見直しもせずに実行すれば、国民の期待は失望に変わるだろう。
前置きが長くなったが、民主党のマニュフェストの中でも評価の低い高速道路の無料化について考えてみたい。高速道路の無料化によって地域の経済が活性化されると民主党は言うが、私にはマイナス面の方がはるかに大きいとしか思えない。各メディアの世論調査でも国民の7割近くが否定的な見方をしている。
高速道路の無料化は温暖化対策に逆行しているというだけではない。マイナス面を箇条書きししてみる。
○高速道路を使うのは10台に1台の割合しかなく、無料化は著しく不公平な政策といえる。
○高速道路は全国に一様に張りめぐらされているわけではない。そのため必然的に高速道路無料化によって受ける恩恵には地域差が出てくる。その結果、自治体の要求に応じて際限なく高速道路を建設するはめになりかねない。民主党の「コンクリートから人へ」という方針と矛盾する。
○高速道路の無料化で企業はコスト削減になり、その結果最低賃金を上げるというが、そのとおりに行くとは思えない。企業がコスト削減しか考えていない今の状況では、無料化の分が人件費に回されるとは思えないからだ。中小企業は大企業からその分の値下げをせまられるだけで、その結果デフレが進むだけだろう。
○高速道路が土日1000円になっただけで、新幹線やフェリーの乗客が大幅に減っている。無料化されればそれはさらに進むことが予想され、フェリー業界などへの補償に多額の予算が必要になる。今や世界的に鉄道が見直され、米国でさえ新幹線を建設しようとしているときに、新幹線の乗客を減らすような政策をするのは理解しがたい。私には時代遅れの発想としか思えない。鉄道ファンの前原大臣は、これをどう考えているのだろうか。
○財源について民主党は無駄づかいをなくせば確保できると言っているが、それは何年後までの財源を言っているのだろうか。高速道路の建設費40兆円を60年かかって返済するということだが、その間国の借金が増やし続けるつもりだろうか。少なくともプライマリーバランスの黒字化のあとでなければ借金を返済のは不可能だろう。
というわけで、高速道路の無料化には弊害の方が多い。事業仕分けで無駄使いを減らしても高速道路の無料化の「実験」のために6000億円も使ったら意味がない。「実験」なら土日1000円のデータを分析するだけで十分だろう。前原大臣は概算要求の6000億円を見直す発言をしているが、予算額を減らすのではなく見送るべきだ。
そのそも民主党がなぜ無料化にこだわるのかわからない。確かに日本の高速道路料金は高すぎるが、無料化ではなく値下げするだけである程度の経済効果は得られる。公共交通機関への影響や弊害も少ない。しかも、高速道路の建設費と管理費を一定期間で返済する償還主義をやめれば、いっさい税金を使わずに料金を値下げすることができるのである。これこそが「カネを使わずに知恵を使う」やり方だろう。いつまでも国民の支持しない無料化に拘泥するのはやめてもらいたい。
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