今、この場所から・・・

いつか素晴らしい世界になって、誰でもが望む旅を楽しめる、そんな世の中になりますように祈りつづけます。

愛をこう人 21 (小説) 改編版

2016-12-11 19:26:01 | 小説 愛をこう人 改編前版

 (21)
頬をつたう涙は幾重にも流れて、着ている浴衣を濡らして、冷えても、久美子は、じっと耐えるしかなかった。

その姿を、春馬は、眼を閉じたままで、すべてを知り、感じ取っていた。
春馬もまた、眠れない夜だった。

春馬は、久美子に伝えてはいないが、もう、これ以上、久美子に逢うことが出来ない!
逢って罪を重ねてはダメなのだ!

愛し合ってはいけない者同士がこのままの関係を続けていたら、どんな結末が待っているか、理性では充分わかっていても、ふたりは逢ってしまうと
「心と理性を失う!」

ただの男と女になってしまう自分の心と体のおそろしさを、春馬は深い罪として受け止めていた。

進むべき道を誤って、感情が浮遊する!
おぞましい自分の肉体を抑えられない事が恨めしかった!

これ以上、久美子に、悲しみや苦しみを、与えてはいけない事だと、春馬は、硬く心に決めてのこの旅であった。

もうこれ以上、互いに傷つけあってはいけない事なのだ。
春馬は、糸魚川の駅で、久美子に言った。

「私はこれから、行くところがある!」
「ここで別れよう!」
「君は、ひとりで帰れるね!」
「気をつけて、帰ってくれ!」
「それから、お願いがあるんだ!」
「東京に出て、大学で、勉強してくれないか!」
「やりたい事を、勉強してくれ!」

春馬は、それだけを言って、久美子に意識的に冷たく背を向けて、急ぎ足で、去って行った。

久美子は、松本に帰って、数日がすぎたある日、春馬から、おもいがけずの手紙が届いた。

手紙は、さも愛想のない、事務的な書き方で、久美子にストレートに伝わるように書かれていた。

「もう、これ以上、私を求めずに!」
「君の人生を生きて行ってくれ!」
「もう、苦しむ事も、悲しむ事もない!」
「私の存在を消した、生き方をしてくれ!」
「私はもう、決して、君を求めない!」
「もう二度と、君に逢う事も無い!」
「お互い、思い出など、つくっては、ダメだ!」
「私は、もう、君を愛さない!」
「どうか、私を忘れてくれ!」
これだけが書かれた、手紙だった。

春馬が、糸魚川で、別れる時に言った言葉・・・
「東京へ行き、勉強してくれと!」
「いったい、何を、学べばよいのか・・・」

久美子は、今は、なにも考えられなかった。
ただ、無気力な日々・・・
こうなる事は、久美子もわかっていたはず!

覚悟は出来ていたはずだったが、現実に、久美子は、春馬との別れは、耐え難い苦しみ、あまりにも、辛すぎた。

春馬からは、あの手紙一通が送られてきただけで、その後、ぷっつりと連絡がなく、居場所さえわからないまままるで、久美子との関わりを消し去るように、春馬は消えてしまった。

久美子は春馬へ連絡の取りようもなかった!

伯父と姪の、命がけの恋愛は、どんなに願い、祈っても結末は悲劇で、悲惨で、残酷だった。

糸魚川でのあの日から、三ヶ月が過ぎた頃、久美子は、新たなる運命を、喜べずに、思い悩んでいた。

二十歳を過ぎたばかりの久美子に、新たなる過酷な運命が!

久美子のお腹には、伯父である『春馬』の最高のプレゼントであるはずの!
『小さな命が息づいていた!』

禁じられた愛を懺悔して放浪する魂
愛するひとの新たなる運命も知らず
遥か遠く彷徨いびとの心とからだにきざむ
深すぎる傷の痛みは逃避する場所もない
紺碧の海の色は美しき愛を語るひとを映す


    つづく

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眼の痛みにも耐えて、昔、こんな情熱のある文を書いていたのだなんて、恥ずかしくなったり、でも、今の私には書けない、ちょっとかなしくなるけどこれもまた私の生きてきた道なんだとおmったりもして・・・

つたないものを多くの方々にお読み頂けて感謝です、ありがとう。


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