雨音は優しくて

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愛をこう人 22 (小説) 改編版

2016-10-19 11:25:03 | 小説 愛をこう人 改編版

(22)
久美子は、これから、どう生きるべきか、想像する事さへ出来ずに日々だけは過ぎていく、今、自分のお腹の子をとても中絶など出来ない!

この身に起きた事、とにかく、子供を生む事にして、出来るだけ、世間に知られずに、久美子の家族には特に、知られてはいけない事だった!

春馬にも、もちろん知られずに最大限の注意をして、産み月まで、隠れるような、目立たずに、目立たずに、密やかな暮らしだった、久美子は、正直に言えば、全く、子供を身ごもるとは、思ってもいなかった。

こんなふうに言ってしまうほど、久美子の心は幼かったのだろう、自分には人の親になる資格のない人間だと、思いながらも、久美子には、まだ何の感覚も無い!
「命の存在」
を無視する事など、とても出来ないし、勇気もなかった。

そんな日々が数ヶ月過ぎて行き、ある日、突然、なにか途轍もない力で、久美子に伝わる感覚!

すこし、お腹にお肉がついて、太ったのかしらと、感じている時だった。
久美子の体の中で、
「命の存在を感じた!」
「はじめて自覚出来た瞬間だった!」

久美子の心の中で、母に伝えたい、切なくて、悲しくて、表現の出来ない特別な感情がして、久美子はひとりで泣きながら、不安と喜びの涙が流れた。

その日から、久美子は、もう、迷う事無く、子供が生れて来る準備をどうすれば良いか真剣に考えた。

時には、命の存在に励まされる思いがするほど、久美子の中で息づく命!

その動きは、どんな苦しみより、悲しみを伴いながらも愛おしさが募る感覚で、久美子に訴えているように、思えることだった!
久美子はそんな時、誰に教わった事でもないが、自然な気持ちで、その命の存在に話しかけていた!

『ごめんなさいね、あなたをこんな想いにさせて!』
『悪いお母さんだけれど、あなたを待っていたの!』
『元気で、逢いに来てください!』
そんなふうに語りかけていた。

久美子は、この命の存在は
『神からのお預かりした存在!』
『神は誰かの為にこの命を久美子に託したのだと!』

そんなふうに思える感情であって、とても正直な気持ちで神から託された「存在」を信じられた。

久美子自身から伝わり来る「存在」の愛を感じて、そう思う事で正当化して自分に言い聞かせて納得出来た。

久美子は犯した罪からの逃避としての言いわけなのかも知れない、そう考えた事もあったけれど、現実の久美子には、自分の手で育てる事が許されない!

この子の幸せの為にもこの子を、慈しみ育てて下さる方が本当の親になれるのだと思えるのだった。

久美子に与えられた時間の中で、この子への愛を全身で語り伝えようと思った。
そして、久美子は安らいだ気持ちで・・・
『心で語りかけた時、命の存在は答えてくれる!』
『力強く、動き、久美子のお腹を突き破るほど!』

ふと、そんな時の久美子はこの息づく命を限りなく、愛しく感じる瞬間だった。
そんな生活の中で久美子は子供を生んだ!
『子供は、男の子だった』

久美子の実家や、父、姉夫婦に知らせずに、久美子は子供が生れる三ヶ月前に仕事を退職して、ある、ボランティア団体のお世話になり、人知れず、運命の子を生んだのだった。
そして、その団体のお世話で、生れて直ぐに、子供は養子に出された。

子供の養父母には、久美子の事は知らないけれど、子供の生れた事情をすべて知ってもなお、大切に育ててくださる事を約束してくれた。

実家の姉夫婦は、久美子の変化に気づき、かなり、心配していたようだが、身内や親戚には、特に知られてはいけない子供の存在!

知られる事を必死で避けて隠した、久美子は、最善の注意をして、身を隠しての行動だった。

生れた子をわが胸に一度も抱く事無く、久美子は養父母を信じてわが子を託した、久美子自身の体がまだ完全に快復しないままに、その場所を去った。

まるで、体の一部を引きち切られるような感覚の痛みを感じて、久美子は悲しさを押し消して、耐えた、ただ、ただ、生まれた子供の幸せを願って、一刻も早く、久美子自身の存在を消したかった。

そうしなくてはいけない、残酷な運命の子供を生んでしまった事の罪深さが悲しくて、辛くて、苦しかった。

そして、生んだわが子へ、心から詫びる事しかできない久美子・・・
ある程度、体も快復した頃、久美子は、実家の姉に連絡して、松本で会う約束をして出かけた。

もうその頃には、松本のアパートを、だいぶ前に引き払っていたけれど、姉は、その事を知らずにいたので、アパートへ行くからと強く言い張ったが・・・

どうやら、姉は、今回の久美子の雲隠れしていた事をとても気にしていて、久美子が、誰かと、同棲しているのではないかと、疑っていたようだった。

若い女の一人暮らしは、世間的にも、気になる事だった、久美子は、少し長いひとり旅をしていたと、ごまかして、姉を納得させた。
姉は、会う場所に、気がせいたのか、約束の時間にはもう来ていた。

そして、久美子の疲れた姿、やつれた姿を見て、いろいろと聞き、心配してくれたけれど、久美子は、旅の疲れが出ただけだと言い張って、姉を納得させた。
久美子は、松本での仕事を止めた事、そして、今は、東京に住んでいる事を話して、これからは、働きながら、大学で、絵の勉強する事を話して、少し足りない、大学の入学金を貸してほしいと、隠し事の言い訳もあり、頼みこんだ。


         つづく

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眼の痛みにも耐えながら、こんな作業をするのはなぜ?、z
自分がわからなくなる、恥ずかしさも、時には生きているあかしなのだろうか・・・


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