「峠うどん物語 上」重松 清(講談社)

重松さんの小説には、必ずその底辺に温かい愛情と友情という川が流れている。
いい意味でも悪い意味でもその流れが止まることはない。
年齢差を超えて、それぞれに“想い”を重ね合わせて、感動が増幅する。
川は氾濫することもなく静かに、昔からの清く自然な流れを湛えている。
舞台は市営斎場の前にある「峠うどん」。 いや斎場の方があとで建てられたのだ。
そこで働く老夫婦、そしてその老夫婦二人の孫娘で受験を控えた中学生の孫娘・よっちゃん。
よっちゃんの両親等々。
この店にかかわる人たちのそれぞれの生き様と核家族化した現代への、
やや失われつつある親子三世代の拘わりある家族関係と、人間関係を描く出す。
職人気質のおじいさんが打つうどんが評判で、昔は遠くからも常連さんが来てくれていたのだが、
目の前に市営斎場が建てられてからは、斎場に来るお通夜やお葬式の前後に立ち寄る人が利用することが殆どとなった。
なぜうどんがテーマなんだろうかと考えたが、亡くなった人を弔い、送り出すために、
寒くなった心を温めるためのアイテム。 ・・・なのかなぁ(笑)
人生経験の浅い中学生のよっちゃんの目を通して、それは普段学ぶことの出来ない
ある意味特殊な社会勉強の場を提供している。
よっちゃんの視点は大人が聞けない疑問点や問題点を、それとなくおばあちゃん(おじいちゃんは無口なので)や
両親の会話から解きほどいていく。
通夜や葬儀という半ばタブーなシチュエーションではありながら、そこに集まる人々の、
またそこに関わる人々の十人十色の“想い”を描き出していく。
中でも感動的で、かつ通勤電車のなかでウルウルしてしまったのは、「トクさんの花道」だ。
このストーリーだけでも映画にできるなぁと正直思った。
ボタンを掛け違えた人生・・・でもそれも正しい位置に直すことはできるのだ。
だけど、掛け違えたボタンはそのままに、トクさんはトクさん流のケジメと送り出し方があっただ。
そう、それでいい、それでいいのだ。
<上>
第一章 かけ、のち月見
第二章 二丁目時代
第三章 おくる言葉
第四章 トクさんの花道
第五章 メメモン









