老いてなお青春!(マラソンへの挑戦)

新井満の自由詩「青春とは若き肉体の中にではなく若き精神のなかにこそある」が如く、還暦を過ぎてなお夢と情熱を持ち続けたい。

フルマラソン5時間の壁を破る(東京荒川市民マラソン大会)

2008-03-16 22:57:29 | 大会
【40キロ自主トレ】
フルマラソン再挑戦を二週間後に控え、先週強風で途中断念した3回目(本番1回を含め)の40キロに挑戦した。用水掘沿いの紅白の梅花は今が盛りと咲き誇っていよいよ春到来というところだが、まだまだ桜並木のつぼみは定かでなく、土手の彩りもその影さえ見えず、それにひきかえ小鳥のさえずりはもう春本番である。川面には白い尾を振りながらセキレイが飛び交い、つがいの鴨が游々と流れに身を任せ、優美な姿態からは想像もつかない不気味な叫びをあげてオナガが横切った。まもなく紺色の毛糸のスキー帽を被せられた暖かそうなお地蔵さんの姿が見えてきた。首にも同色のマフラーが巻かれており、薄汚れた路傍の地蔵に心を掛ける人がいたのかという驚きと喜びにしばし胸が熱くなった。さて肝心の40キロランの方は10キロ67分のイーブンで快調に進んだが、30キロを過ぎると左足全指が痺れ始めて両足裏にも違和感が襲ってきた。この後どうなるのか試してみようと走り続けてついに40キロを4時間33分で走り切った。これで今度の荒川フルマラソン大会は5時間の壁が切れそうである。

有森裕子のマラソン談議】
先日、日経NETの特集記事『スポーツから学ぶ経営戦略:勝利への執念』に、あの有森裕子さんのマラソン談議を偶然見付けた。有森さんは「私は、走ることが好きだったわけではなく、頑張ることが好きだったのです。その頑張れる唯一の対象が走ることだったので続けることができました。マラソンは他の競技に比べ身体の才能よりも努力が結果につながる可能性の高い競技といえます。結果がついてきたので、また頑張れたのだとも思います。」そしてまた「マラソンは本番のレースまでに積み上げたものがなければ絶対に結果の出ないスポーツです」とも語っていた。全く同感である。確かに、マラソンはやっただけのことは必ず結果に現われてくれる実にやりがいのあるスポーツであり、反面、手抜きをすれば必ずそのしっぺ返しを受ける実に正直でごまかしの利かないスポーツでもある。だからこそ確実に得られる結果を求めて、私もこれまで苦しい走りを続けて来られたのではないかと、有森さんの言葉に思わず手を打った。

高橋尚子の惨敗レース】
北京五輪最終選考を兼ねた名古屋女子マラソンで、日本中からその復活を期待された高橋尚子さんは、なんと序盤早々に失速してしまった。ビデオでの応援となったが「どうした?Qちゃん!」リモコンを持ったままテレビの前に茫然と立ち尽くしてしまった。「私の走りを見た人が『あきらめなければ夢はかなうんだ』と思えるようなレースをしたい」と抱負を語っていたし、日本中がその言葉を信じて疑わなかっただけに脱落していく痛ましい映像の衝撃は大きかった。彼女は前回の五輪不選考の悔しさを愚痴ることなく、実に爽やかな笑顔でひたむきで前向きな心意気を語ってきたし、自分の走りを通じて「皆んなにもらったパワーを感謝を込めて返したい」「よし頑張ろうというメッセージを伝えたい」と語っていたというから尚更である。かくてQちゃんの五輪出場は儚く夢と消えたが、彼女の強い気持が我々に大きな力を与えてくれたことには心から感謝したい。Qちゃんの座右の銘といわれる『何も咲かない寒い日は下へ下へと根を伸ばせ、やがて大きな花が咲く』という言葉こそ、マラソンそして人生の真髄である。これからもQちゃんに更なる声援を送り続けていきたい。

東京・荒川市民マラソンin ITABASHI(3月16日(日))】
いよいよフルマラソン42.195キロの再挑戦である。本大会は平成10年に東京唯一の市民参加型フルマラソンとしてスタートした由緒ある大会で、参加者が1万7千人、7時間制限で完走率96%、全国ランニング100撰で第2位と、かなり評判の高い大会であり、このメジャーな大会に参加してこのフラットな河川敷コースでぜひとも初マラソンの5時間の壁を破りたいと意気込んで家を出立した。午前8時に最寄駅の「浮間舟渡」を下車して眼前に広がる大きな池の周りを迂回し荒川の堤防に向かった。浮間とは風流な地名だなと立て看板を覗くと「荒川が蛇行して川の中の浮島のような湿地であったため、江戸時代から浮間ケ原とよばれ桜草の自生地として有名」とあった。そしてこれから走る河川敷の荒川は、名前の通り「あらぶるかわ」と人々に恐れられていたという歴史も初めて知った。さて堤防に上るとメイン会場は既に1万を超える選手で埋まっていた。昨日のうちに受付を済ませていたので、堤防の上で着替えを済ませ、荷物を預けてアップの間もなくスタート位置に向かった。
今日のいでたちはやはり浦和レッズスタイル。赤の帽子に赤のシャツ、黒のロングタイツに黒系のリストバンド。肝心の浦和レッズはJリーグ開幕2連敗で、チーム内の不協和音が伝わりオジェック監督は解任らしい。それでも私の浦和レッズへの想いは変わらない。すれ違いざま少年に顔を覗かれたが、年配者でさぞ驚いたことだろう。ナンバーカード順に並ばされ1万7千人の3分の1の辺りであろうか。やがてカウントダウンが始まりピストル音が鳴り響くと、一斉に周りの選手達の間で歓喜の拍手が起こった。素晴らしい一体感に気持を高揚させながら動き始めを待った。スタート地点の経過に5分かかったが、先を競うにも前に進めないほどの混雑振りで、一糸乱れぬ整然とした集団のまましばらく走り続けた。
薄日が差してきて穏やかな小春日和のまさにマラソン日和である。爽やかな川風を受けながら荒川河川敷を下流に向かって走り始めてまもなく、逞しいお兄さんたちの勇壮な和太鼓の集団が乱舞していた。ドドドーンというお腹に響く和太鼓のリズム音は、42キロどこを走っても途絶えることはなかった。各給水所近くで打ち手は可愛いお嬢ちゃん、お姐さん、お兄ちゃん、そして小母さんたちと変るが、10〜20人のはっぴ姿で躍動するバチさばきと威勢のいい掛け声は静かな河川敷に響き渡っていた。今度は可愛いチビッコチヤガールたちの黄色い声援にランナーたちが一斉に手を振って応える微笑ましい交歓風景である。やがて右手に見上げるような大堤防が連なり、左手には今日の大会運営のため閉鎖された無人の広大なゴルフ場や野球場が静まり返って、行き交う人も車もない河川敷道路を1万7千人のランナーが長蛇の列をなして黙々と走り続けていると、一種異様にさえ思えてくる。皆が同じリズムでひた走るこの無数の背中を見ながら、この人達はいま何を考え何を感じながら走っているのだろうかと。
やがて5キロ手前で初ハーフマラソンの時にその威容に驚かされた岩淵水門が迫ってきた。この水門から現荒川河口までの22キロに人口放水路を開削して、荒れ狂う元荒川(現隅田川)を分岐させた大水利事業のお陰で下流の人口密集する首都東京が洪水の宿命から救われ、かつ緑豊かな市街地として発展できたという話を知るにつけ、その偉大な事業家のいた時代に頭が下がる思いである。さて走りの方は爽やかな春風を浴びながらキロ6分ちょっと、5キロを32分の快調なペースで、20キロ地点で2時間6分。給水所は約3キロの間隔で15ヶ所もあり、水・SAVAS・バナナ・パン等が長テーブルに並べられて、前日のセミナーゲスト浅井えり子選手の「給水は身体が求めてからでは遅い」というレクチャー通りに、全給水所で必ず2点は手に取って小休止を兼ねながらエネルギーの補給に努めた。かくしてハーフの折り返し地点で2時間14分と想定タイムを若干上回った。
折り返して復路を走りながら後続のランナーの集団を計ると5キロも続いているではないか。追い越されることはあっても追い越すことはないマイペースを意固地に保っており、周囲のナンバーカードを見ると次のグループの番号が多くなってはいたが、それほど遅れている実感もなく、よしいけそうだと意を強くした。しかしやはりフルマラソンである。少しずつ足にダメージが出始めてきた。30キロ地点で3時間14分。1月末の若潮マラソンを14分上回っており、あの時の後半の山岳コースを思えばフラットな今大会では、まず5時間の壁は間違いなく切れるぞ、残り12キロをキロ7分で走れば、密かに狙っていたが東京マラソンの東国原知事の記録(4時間42分27秒)を凌駕出来るかもしれないと闘志を燃え上がらせた。
しかし単純にハーフマラソンの二倍ではないことを改めて思い知らされた。左足指のマメの感触と両足の筋肉痛が襲ってきたのである。スタート時の薄雲もすっかり晴れ上がり初夏のような暑ささえ感じられかなりハードでタフなレースになってきていた。もちろん給水所での水分とエネルギーの補給に余念はなく、特に35キロ地点の好物のシャーベットには生き返らせられたが、それもつかの間であった。周りの選手の半分近くは私と同じ状況のようで、苦しそうに走る人、立ち止まる人、路肩にリタイアする人、それでも黙々と頑張り続けるランナー達は何を考えながら前に進み続けるのだろうか。立ち止まり屈伸を繰り返し消炎スプレーを吹き付け、給水所の水を靴先にぶっ掛けて足マメを冷やし、ようやく40キロ地点で4時間40分、キロ8分にまでペースは落ちていた。あと2キロちょっと。5時間の壁だけは破りたいがなんとかいけそうだと思った矢先に、左膝がカクっときた。初めての経験である。一瞬福士加代子選手のゴール直前での転倒姿がよぎった。そして「もうこんな苦しいフルマラソンはこれで最後にしようよ。5時間を切ったという結果があれば十分ではないですか。これからはハーフを楽しもう。もう年なんだから」と影を潜めていた悪魔が囁いてきた。「そうだな。いい潮時だよな」と自分を納得させ妥協した。
ようやくゴールアーチが見えてきた。沿道から身を乗り出して浴びせられる「あと少しだ!」「ファイト!」「頑張れ!」という声を枯らした心からの大声援に最後の力を振り絞った。そして左手堤防一面を埋め尽くした大観衆から嵐のような声援と賞賛の拍手が送られてきた。その大歓声を浴びながら、あの若潮マラソンで高校生達が伴走しながら歌ってくれた「負けないで」を口ずさみ叱咤激励しながらゴールに向う自分があった。かくしてついにゴール。4時間57分。カメラに向かってガッツポーズを取るつもりだったが、恥ずかしそうに両手を挙げるので精一杯だった。そして先ほどまでの苦しみと悪魔の囁きは嘘のように霧散していた。喜びだけが残った。こうしてまたフルマラソンに挑戦し続けるのだろう。
ジャンル:
大会
キーワード
市民マラソン 福士加代子 負けないで 悪魔の囁き 浅井えり子 Jリーグ開幕 マラソン大会 女子マラソン リストバンド
コメント (8) |  トラックバック (1) |  この記事についてブログを書く
Messenger この記事をはてなブックマークに追加 mixiチェック シェア
« 東京マラソンの感... | トップ | 春の訪れ(用水堀... »

8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (えび)
2008-03-18 23:05:07
カーテンコールさんお疲れ様でした。
5時間をきってのゴール、すばらしいですね!
有森さんの言葉、その通りですね。
私はふだん団体競技をしていますが、団体の
方はチームワークといういい点ももちろんあ
りますが、個人競技もなかなか面白いと感じ
はじめています。自分が努力した分、怠った
分跳ね返ってくる、そして一人であることが
自分と向き合えるんですね。
今後も無理をなさらずに楽しんでください。
えびさん、こんにちわ。 (カーテンコール)
2008-03-19 12:27:02
日頃からの温かい応援に感謝しています。
実は、大会4日前から喉が痛くなり、医師からマラソン自粛を言い渡されていましたので、大会不参加の場合の挿話にしようと、有森さんと尚ちゃんのお話を考えていたのでした。
挫折を乗り越えてきたスポーツ選手の言葉には、いかなる評論家にも負けない実践的で説得力ある素晴らしい言葉が多いですね。スポーツ万歳!!
完走おめでとうございます★ (micron)
2008-03-19 22:42:29
こんばんわ、micronと申します。
コメントをいただきありがとうございました。
私より少し早いゴールだったのですね?
お元気ですね〜(@_@;)
私も、2週間ほど前に胆石症で救急車で運ばれました(笑)
手術だったら、マラソン走れなかったです(;≧皿≦)。゜°。
私の方が少し若輩者ですし初心者ランナーですが
中年おばさんランナーですので
お互い無理をしすぎない程度に無理をして
頑張っていきましょうね♦♫⁺♦・*:..。♦♫
Unknown (レッドパラダイス)
2008-03-20 07:15:59
先日はご訪問ありがとうございました!
マラソンお疲れ様でした〜
多くの方が同じ思いを胸にゴールを目指して頑張っていたんですね!
自分はとにかく沿道の応援がうれしくて、楽しくて出来る限り手を振って応え、中には手をタッチしたり、言葉を交わしたりした事がすばらしい想い出でです。
マラソンを始めて10年くらいになりますが、10K〜ハーフのみのエントリーでフルにはなかなか勇気が出ずに躊躇してしまっていたのですがこれを機に積極的に走りたいと奮い立ちました!

来年は目指せ当選!東京マラソンでお会いできたらいいですね!

カーテンコールさん、共にマラソン楽しみましょう!
情熱を走りに! (ゴゼンタチバナ)
2008-03-20 09:53:59
フルマラソンを目標通りで完走、おめでとうございます。
今回のブログで謎が解けました。
これ程までに苦しいレースを何故するのかと、常々思っていました。
カーテンコールさんも有森さんの言うように、頑張ることが好きなのですね。
計画的に積み重ね積み重ね鍛えたのちに臨む本レース。
やることをやった後の爽快感が、私にも伝わってきました。
ご無理をせずに。情熱を走りに! 期待しています。
micronさん、おはようございます。 (カーテンコール)
2008-03-20 10:22:30
突然訪問しましてお騒がせしました。
これまでは独り善がりにただひたすら走るだけでしたが、今回は、黙々と背中を向けて走り続ける大集団が何を思い何を考えているのだろうとすごく気になったのでした。そこで参加された方のブログにその気持ちを探すうち、偶然ほぼ同じタイムでゴールされたmicronさんのブログを見つけ出し、同じ時間帯に追いつ追われつ共に苦痛と闘い合った戦友に出会ったような懐かしい心境になり、見ず知らずのブログにコメントを書かせていただきました。
これからもお互い体調に留意しながらマラソンの楽しさを味わい続けたいと思っています。
レッドパラダイスさん、おはようございます。 (カーテンコール)
2008-03-20 11:27:28
マラソンとレッズサポーターの大先輩にこうして交歓できて大変光栄です。
micronさんにもご返事しましたように、今回は一緒に黙々と走る大集団の背中が非常に気になっていましたが、貴兄のブログに出合って、無機質に見えた一人一人のランナーがそれぞれの思いを込めて沸々と燃え滾る走る情熱を秘めながら限界に挑戦し続ける生々しく熱い存在だったことを感じました。そして沿道のおざなりでない心を込めて一人一人に向けられる沿道の応援がいかに力になったのか、マラソンは孤独な闘いではないという実感も改めて噛み締めました。
来年こそぜひ東京マラソンの空間を共にしたいものです。
ゴゼンタチバナさん、こんにちわ。 (カーテンコール)
2008-03-20 12:18:12
お久しぶりでございます。温かいコメントを頂戴しまして、蓼科の横岳で出逢った清楚で気品あるゴゼンタチバナを思い浮かべています。
私は褒められるほどの努力をしているわけではないのですが、走っていて時々どうしてこんなに苦しいのに一生懸命になれるのだろうと自問自答してしまうことがあります。そんな時に有森さんの言葉に出合ったのでしたが、人は常に何かに一生懸命になっていないと不安なのではないでしょうか。そういう意味でランニングは心身共に全精力を投入できる最も手軽な手段であり、その努力の対価は必ず保証される実にやりがいのあるスポーツでもあり、その達成感と爽快感は言い知れぬ恍惚感となって自分を癒やしてくれるかけがえのない生活の一部になっているのではないかと思っています。これからも応援をよろしくお願いいたします。

コメントを投稿

 ※ 
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。
※文字化け等の原因になりますので、顔文字の利用はお控えください。
下記数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。この数字を読み取っていただくことで自動化されたプログラムによる投稿でないことを確認させていただいております。
数字4桁

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
フルマラソンに関するサイト (フルマラソンNet情報局)
フルマラソンに関する情報サイトです。

あわせて読む