芥川龍之介といえば何を思い出しますか?
「羅生門」「地獄変」「くもの糸」「鼻」・・・・
いろいろありますね。
ところが、芥川はいくつかの訳本を手がけているのです。
私が図書館から借りている岩波書店版「芥川龍之介全集」は、初期の作品から年代順に作品を編集しており、各作品が初めて収録された単行本を底本にしています。
つまり、旧仮名遣い。
大正時代の翻訳に加えて旧仮名遣いですから、読みにくいのですけど、
そこが味があってよろしい。
全集1巻に所収されている作品は次の4作品。
作品名をクリックすると青空文庫(インターネットの電子図書館)に行けます。
『パルタザアル』アナトール・フランス
1914(大正3)年1月21日の書簡で「アナトオル フランスの短編を訳して今更わが文のものにならざるにあきれたり 同中最文下手なるは僕なり甚だしく不快なり」さらに同月29日では「パルタサアルは訳して出すことにしました まづいので悲観です『蛇の舌』の2月号へ同じ翻訳の出るのはさらに悲観です」とあり、本人はあまり満足のいく出来ではなかったみたい。
アナトール・フランスはフランスの小説家で、
芥川が生涯にわたって関心を持ち続けた作家のようです。
パルタザアルとは、東方三賢人のひとり。
もともとはエチオピアの王で、シバの女王に激しい恋慕を抱きますが、
女王の心変わりに傷心し、占星術や学問に身を入れるようになり、星の導きによって幼な児のところまでたどり着きます。
パルタザアルは、女王の愛(俗世の愛)より神の愛を選んだわけ。
女王の悪女たるや、これにきわまれリって感じだけど、引き際も心得ているし、
あまり嫌な感じはしないかな。
『「ケルトの薄明り」より』W・B・イエイツ
これは、井村君江翻訳でちくま文庫で出ていますから、知っている人も多いでしょう。
イエイツはアイルランドの詩人で、アイルランドのフォークロアを自分の足で探した人。
妖精譚や幽霊譚などキリスト教に感化されながらも土着信仰(ドルイド教など)と程よく融合していて、とてもステキ。
芥川訳がわかりにくいという人は、井村訳で内容を理解しよう。
『春の心臓』W・B・イエイツ
芥川はイエイツの詩や論文よりもこういった小品を愛していたようです。
確かに、この作品は美しく哀しく、ため息が出ます。
老人は若いころから生命の神秘を捜し求め、
今まさに永遠なる青春の王国へ入ろうと希望している。
妖精は真実を告げているのだけれども・・・
少年をとおして、春の息吹を感じましょう。
『クラリモンド』テオフィル・ゴーチェ
この作品は、岡本綺堂訳が青空文庫にあるようです。
岩波文庫からは「死霊の恋・ポンペイ夜話―他3篇」が田辺貞之助訳で出版されております。
ある僧侶が語る、激しい恋の物語。
しかし、そのたぐいまれな美しい女性は、死霊であった。
カソリズムあふれるこの作品ですが、田辺訳と芥川訳では、微妙に受ける印象が違います。
芥川訳では、僧侶が一途に、情熱的に、クラリモンドを今なお愛しており、誰かにするお説教にも後悔の念が読み取れます。
また、この部分は、怖がらせるための作り話ともとれますね。
その印象が強いのは田辺訳でしょうか。
この物語は、僧侶が自分の願望を実体験だと思い込んでいるとも考えられ、ひとつの物語に何通りかの解釈を持つ、ヘンリー・ジェイムズ「ねじの回転」を思い出しました。
そして、注目すべきは、クラリモンドが僧侶の血によって生命力を得るということ。
ヴァンパイア小説としても珠玉の一作ではないでしょうか。
訳本は、新訳は読みやすくなり、時代にあったものになります。
だからといって、旧訳が粗悪であるかといえば、まったくそんなことはないと思います。
訳された時代を感じながら読むという特典があるじゃないですか。
新訳、旧訳を比べて楽しむことも出来ますし。
ああ、本読みの性というヤツは。。。。どうしようもありませんね。
「羅生門」「地獄変」「くもの糸」「鼻」・・・・
いろいろありますね。
ところが、芥川はいくつかの訳本を手がけているのです。
私が図書館から借りている岩波書店版「芥川龍之介全集」は、初期の作品から年代順に作品を編集しており、各作品が初めて収録された単行本を底本にしています。
つまり、旧仮名遣い。
大正時代の翻訳に加えて旧仮名遣いですから、読みにくいのですけど、
そこが味があってよろしい。
全集1巻に所収されている作品は次の4作品。
作品名をクリックすると青空文庫(インターネットの電子図書館)に行けます。
『パルタザアル』アナトール・フランス
1914(大正3)年1月21日の書簡で「アナトオル フランスの短編を訳して今更わが文のものにならざるにあきれたり 同中最文下手なるは僕なり甚だしく不快なり」さらに同月29日では「パルタサアルは訳して出すことにしました まづいので悲観です『蛇の舌』の2月号へ同じ翻訳の出るのはさらに悲観です」とあり、本人はあまり満足のいく出来ではなかったみたい。
アナトール・フランスはフランスの小説家で、
芥川が生涯にわたって関心を持ち続けた作家のようです。
パルタザアルとは、東方三賢人のひとり。
もともとはエチオピアの王で、シバの女王に激しい恋慕を抱きますが、
女王の心変わりに傷心し、占星術や学問に身を入れるようになり、星の導きによって幼な児のところまでたどり着きます。
パルタザアルは、女王の愛(俗世の愛)より神の愛を選んだわけ。
女王の悪女たるや、これにきわまれリって感じだけど、引き際も心得ているし、
あまり嫌な感じはしないかな。
『「ケルトの薄明り」より』W・B・イエイツ
これは、井村君江翻訳でちくま文庫で出ていますから、知っている人も多いでしょう。
イエイツはアイルランドの詩人で、アイルランドのフォークロアを自分の足で探した人。
妖精譚や幽霊譚などキリスト教に感化されながらも土着信仰(ドルイド教など)と程よく融合していて、とてもステキ。
芥川訳がわかりにくいという人は、井村訳で内容を理解しよう。
『春の心臓』W・B・イエイツ
芥川はイエイツの詩や論文よりもこういった小品を愛していたようです。
確かに、この作品は美しく哀しく、ため息が出ます。
老人は若いころから生命の神秘を捜し求め、
今まさに永遠なる青春の王国へ入ろうと希望している。
妖精は真実を告げているのだけれども・・・
少年をとおして、春の息吹を感じましょう。
『クラリモンド』テオフィル・ゴーチェ
この作品は、岡本綺堂訳が青空文庫にあるようです。
岩波文庫からは「死霊の恋・ポンペイ夜話―他3篇」が田辺貞之助訳で出版されております。
ある僧侶が語る、激しい恋の物語。
しかし、そのたぐいまれな美しい女性は、死霊であった。
カソリズムあふれるこの作品ですが、田辺訳と芥川訳では、微妙に受ける印象が違います。
芥川訳では、僧侶が一途に、情熱的に、クラリモンドを今なお愛しており、誰かにするお説教にも後悔の念が読み取れます。
また、この部分は、怖がらせるための作り話ともとれますね。
その印象が強いのは田辺訳でしょうか。
この物語は、僧侶が自分の願望を実体験だと思い込んでいるとも考えられ、ひとつの物語に何通りかの解釈を持つ、ヘンリー・ジェイムズ「ねじの回転」を思い出しました。
そして、注目すべきは、クラリモンドが僧侶の血によって生命力を得るということ。
ヴァンパイア小説としても珠玉の一作ではないでしょうか。
訳本は、新訳は読みやすくなり、時代にあったものになります。
だからといって、旧訳が粗悪であるかといえば、まったくそんなことはないと思います。
訳された時代を感じながら読むという特典があるじゃないですか。
新訳、旧訳を比べて楽しむことも出来ますし。
ああ、本読みの性というヤツは。。。。どうしようもありませんね。
漱石は教師から、三島由紀夫だって一時大蔵省に入っているのに。ま、芥川に社会性はなかったのでしょうが。
芥川は、大学時代からその才能を認められていたようですから、きちんと就職する必要はなかったのかも。
三島由紀夫と大蔵省、、、う~む、ミスマッチ。
芥川作品を読んでみて、彼は<死>と<罪>に強くひきつけられているなぁって感じました。
相互関係を探っているような。
そうそう、青空文庫に「さまよえる猶太人」ありましたよ。
著作権切れの手に入りにくい作品があって、面白いですよね。
田辺訳のお上品なクラリモンド嬢が結構好きなんですけど、芥川版も読んでみたいです。
そういえば、ゴーチエの波乱万丈のロマン小説『キャピテン・フラカス』が中巻の途中で止まっているのでした。幻想味はないのですがなかなか面白い…って途中で止まっている私が言っても説得力はゼロなのですが。
この物語は、キリスト教が悪魔をどう定義しているかを知っているとまた面白いと思います。
芥川訳は、故意か過失かわかりませんが、訳されていない部分があり、田辺訳で知ることができました。
芥川はクラリモンドを純粋な存在として描きたかったんじゃないかと思います。
『キャピテン・フラカス』はロマン小説だったんですか。
図書館に在庫があるんですけど、どんな小説だかわからなかったんです。
ゴーチェはもう少し読んでみたいですね。
ハドソン「緑の館」を思い出しました。
ニュアンスは違うかもしれないですが、ハドソンは作品内で、自分の犯した罪は、神が裁いたり赦したりするのではなく、悲しみ、苦しむことで自分自身で行う、と言っています。
さまよえるユダヤ人については、私は伝承という形でキリスト教の国々でみられることから、何か似たような物語がフォークロアにあって、それがキリスト教と結びつき、発展してさまよえるユダヤ人が生まれたのではないかと考えてみました。
さまよえるユダヤ人は罪の象徴であって、人々が犯してしまう罪そのものではないか。
永遠にさまようのは、罪であって、永遠に救われることはない。
つまり、あらゆる罪をさまよえるユダヤ人という人格化したものに肩代わりさせているのではないかと。
2人とも好きな作家。
読むしかない!!
情報を、ありがとうございました。
参考になったら嬉しいです。
私もイエイツは好きな作家ですが、実は詩は苦手で。。。
できれば「秘密の薔薇(Secret Rose)」を読んでみたいと思っているんですが邦訳がなさそうなんですよね。
英語、英語かぁ~。
芥川の「クラリモンド」は読んだことありませんでした。機会があったら読んでみたいです。ゴーチェは、ホフマンに影響されて、幻想小説をたくさん書いていますけど、今読むとぬるい作品がかなりあります。でも「死霊の恋」はやっぱり名作ですね。
ちなみに、イエイツの「秘密の薔薇(Secret Rose)」は、たしか『神秘の薔薇』(国書刊行会 世界幻想文学大系24)に入ってたと思います。
探しましたよ。
図書館には、23と25があるのに、なぜだか24だけがない。
アマゾンになくて、イーブックオフになくて、、、楽天はどうだ?
あった~~~!
ということで、注文しました。
kazuouさまには、感謝感謝です。