blog情報誌Cuore通信

『心あるお産の会』が発行している情報誌のブログ版です。楽しい情報満載!ぜひ、ご覧ください!

Cuore通信09年9月号(Vol.40)

2009-09-18 | cuore通信 2009年度版 vol.32~vol.43
去る8月23日、第49回社会教育研究全国集会が開催されました。
この集会は、全国各地で様々な分野で活動されている方々が集い毎年全国を回り、1000人規模で開催されています。
49回目の今年は阿智村が会場となり「住民自治力の形成と社会教育~地域をつくり、人間らしく生きるための学びをひろげよう~」というテーマを掲げ課題別学習会と25の分科会で行われました。
私達の会も参加する機会に恵まれ、健康の分野で活動されている方々と意見交換し、自分の暮らす地域でこの活動を続けている意味を再確認することができ、有意義な時間を過ごさせて頂きました。
「人の性格は脳とイコールである」と言った科学者が、その脳の80%が人との出会いで形成されると言っていました。
私達の会は、まさに「人との出会い」で形成されて来たのだと思います。

今月の特集は、この集会の実行委員長をされた松下拡さんにお願いしました。





今月の特集

今の時代の中で人々は何をなすべきかを提起している実践です。

第49回社会教育研究全国集会実行委員長  松下拡

安心してお産ができないなんてばかなことがあってたまるか!!
いつでも、どこにいても安心してお産ができることは、何よりもまず第一に保障されなくてはならない筈です。

なぜこんな状態になってしまったのか。世界に誇る医療体制をつくって来た日本が、今医療崩壊に直面しています。相次ぐ病院の診療科の閉鎖と医師不足は国の政策によってつくられた問題です。

① 224の公立病院に属する347診療科の閉鎖(18年NHK調査15年3月以後3年半で)内、産科96ヶ所、小児科36ヶ所、長野県下で17年4月以降19年11月までの2年半で23の病院が医師不足などで36の診療科を廃止(県衛生部調査)人口10万人当りの医師の数をみるとフランス337人、イタリア420人、ドイツ337人、ロシア425人、OECD経済協力開発機構加盟国平均310人に対して、日本は198人(OECDヘルスデータ2006)
② 医師が不足、医療関係者は働き過ぎで倒れそう。OECD加盟国並みにするには14万人足りない。1人の医師が年間診療する外来患者数は、アメリカ4000人、フランス2100人、イギリス2500人に対し日本は7500人(OECDデータ2004)
③ 病院経営が困難。8年の病院数9490が19年には8862に減っている(11年間で628の減)

<何が危機をもたらしたのか>
① 医療費の抑制策 昭和57年(土光臨調)に「医師養成数の抑制」(このまま医療費が増え続けると国家がつぶれる)
② 平成13年(小泉内閣)基本方針で、(経済社会の構造改革)社会保障に対する国庫負担の自然増分7200億円を5000億円に抑える、(自然増分2200億円の減)
③ 14年以降診療報酬の切下げを行って来た。16年医療の規制緩和、18年医療制度改革(20年実施)などの医療抑制政策により、自己負担増、入院制限、病院経営困難、医師不足、医師等関係者の疲れ、診療科の閉鎖等が進んだ。
「国民のための医療の充実」でなく「医療費抑制」のための施策進めらたことを考えなければならない。

<このような医療の危機を救うのは住民の組織的な力を発揮する以外にありません>
心あるお産を求める会の活動を知った時にその感を強くもち、心強く思いました。いろんな情報を知ってもの知りになったり、評論的な意見を言う人は増えているが、それだけでは世の中は変わりません。
 この不安定な世の中を変えるには、他力本願的に国に頼っているだけではなく、おかしいと思うことや不安を感じていることを出し合って仲間と確かめ合いながら、人々が結びついて、行動によって主張することです。行動によって国政を変えることです。
 平成18年に、下伊那赤十字病院産婦人科医師の減少に伴うお産取り扱い休止などの診療縮小を受けて同病院でお産をした母親たちが会を結成して活動が始められた。下伊那赤十字病院産科小児科医確保への再考とその実現を求めて5万筆の署名を集めている。そして、知事や県衛生部長への面談陳情や、信大や赤十字本社への医師派遣嘆願や、舛添大臣との対話集会に参加するなどの行動を重ねながら、シンポジウムや学習会の開催や、松川町の福祉を考える集会に参加したりして多くの人々の理解を広め深めるような地域活動を行ってきている。NHKの討論にも出演したり、インターネットによるお産環境についての調査にも協力している。
このような積極的な行動を通して実現への厳しさを感じながら、出産とは、「医療者に全てをゆだね産ませてもらう」のでなく「産むのは私なんだ」という意識を高めることの重要性に気づいて、活動を主体的に進めているところに注目します。『お産』の主体的な営みへの自覚をすえ、自分自身の食生活などを考え「母親になるべき努力」が必要であることを確認しあって、そこから自分の心とからだを大切に考えてハイリスク出産の減少への努力をしようと呼びかけあっている。
 その姿勢が産科医や助産師への負担の軽減や、医療事故や訴訟などを減らすことへの最善の道であるという意識の変革をもたらしていることに私は注目しています。
 この自己変革が、助産師の技術向上と医師との連携を求め協力しながら妊産婦のニーズの反映とより良いお産環境の実現をめざそうとしています。連携とは、目的を共有し意気投合して取り組もうとする意欲を産みだすことだということを示しています。
 最も身近な助産師への理解と相互の信頼を深めることによって助産師が妊婦へ向き合うようになり、支える側と受ける側が心を開いて本音で語り合うことを実現させようとして話し合い学習を進めている。それが会名の「心あるお産」なのですね。
 8月に行われた、社会教育研究全国集会のレポートの中で、発足当初の会員の意識として「自分の責任の重さなど考えず、他人の手際の悪さ、やる気のなさを嘆き責任追及ばかりしていた。守られて当たり前と自分の出産すら人まかせにし、誰かの責任にしてきました。」と記し、「私たちはどんなにおごり無知だったことか、誰かの責任だなど言っている時ではありません」「私たち医療を受ける側が、どうしたい、どうして欲しいのか、どうあって欲しいのか毅然とした態度で示し、行政・医療者と共に手を携え労わり思いやりながら、これからのことを考えたい」と報告している。この報告を聴いた分科会参加者は感動的に受けとめ考えあい話し合っていました。
 私は会名である「心あるお産」とはどういう意味なのかと思っていたのですが、この会の歩みと仲間とのその行動によって、自らの意識を変えて、確かに考える自分を築きあっているこの会のすばらしさの中に「心」の形成を私は見るのです。不安定性が深まっている現代社会は、このような「心」の回復をが求められ、その「心」をすえるような仲間との行動を必要としているのだと思います。
 この活動に心からの賛意と尊敬の念を寄せ、医療の充実に向けた更なる活動の継続へのねばりを期待しています。


松下拡(まつしたひろむ)
1931年に生まれる。小学校教諭7年間、長野県松川町公民館主事
社会教育主事を24年間勤める。
1985年松川町教育委員会退職。以降、全国各地の保健師・住民の学習会講師
をはじめ、山梨県都留文科大学、福島大学の講師として活躍。
現在飯田女子短期大学講師。

<主な著書>
『健康問題と住民の組織活動』『住民の学習と公民館』『健康学習とその展開』
『保健師の力量形成』『栄養士の力量形成』『健康日本21と地域保健計画』(以上、勁草書房)『公衆衛生における保健婦の役割』(日本看護協会出版社)『目で見る組織活動の手引き』(医学書院)<PHNブックレートNo.4>『住民主体の保健活動と保健師の仕事―生活習慣病対策の場合』(萌文社)ほか



☆お知らせ☆

ヘネシー澄子講演会
  
  『アタッチメント(愛着)健全な子供を育てるために』
   
   日時: 2009年11月18日(水) PM1:00~3:30
   場所: 伊那市役所 多目的ホール
   主催: ヘネシー澄子先生を伊那に呼ぶ会
   その他: 賛助者・団体を募っています。
   問い合わせ先: TEL0265-72-5799 北原