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漢方学習ノート

漢方医学の魅力に取りつかれた小児科医です.学会やネットで得た情報や、最近読んだ本の感想を書き留めました(本棚3)。

「現代医学でみる!徳川将軍たちのカルテ」(BS-TBS)

2016年12月11日 15時46分27秒 | 漢方
 現代医学で推理する徳川将軍達の死因を扱った番組を見ました。

■ BS-TBS「にっぽん!歴史鑑定」『現代医学でみる!徳川将軍たちのカルテ』
(2016年10月31日放送)
およそ260年続いた江戸時代。
その泰平の世を治めてきたのが15人の徳川将軍たちです。
永きにわたり政権を保ち続けるには、政治手腕だけではなく健康であることも大切でした。
初代将軍、徳川家康の死因は、食中毒でも、胃がんでもなかった!
謎を解く鍵は、やっぱり、天ぷら?
2代将軍・秀忠を襲った体内を移動する世にも恐ろしい奇病とは?
11代将軍・家斉の将軍在職期間は、歴代最長50年!設けた子供は50人以上!
精力旺盛、その健康の秘訣とは?
14代将軍・家茂の遺骨から虫歯が発覚!
将軍の死因と虫歯の甘〜い関係とは!
現代医学で歴代将軍たちの健康法と病、そして死因までを徹底検証します。


 江戸時代は幕末に西洋医学が入ってくるまで漢方医学です(というか西洋医学を「蘭方」と呼び、それと区別するために日本の医学を「漢方」と呼ぶようになったのでした)。
 その診察方法も再現され、将軍の顔を直視するのは恐れ多いということで、主治医はうつむいたまま脈を取る程度だったらしい。それだけで診断しろと言われても、無理無理・・・(^^;)。
 よくならないとき、最後に辿り着くのは「神頼み」となり、巷でも占いや祈祷が盛んだった様子。

 さて、各将軍の病気や死因を資料から類推すると・・・

(初代)家康:75歳:膵臓がん
 当時は珍しい鯛の天ぷらをたらふく食べた後に腹痛を起こし、その後腹部にしこりができて3ヶ月後に死亡。食中毒あるいは胃がんという説もあるが、経過が急性ではなく、脂っこいものを食べた後の腹痛・腹部のしこりから膵臓がんが疑わしい。
 家康は健康オタクで、医学の知識もあり薬も自分で調合していたとのこと。しかしメタボ体型(身長159cm、体重70kg)でもあり、それがガンの遠因になったのではないかと解説していました。

(2代)秀忠:54歳:マンソン孤虫症
 胸部下部にしこりができてそれが移動したとの記録より、マンソン裂頭条虫によるマンソン孤虫症(寄生虫が皮下を移動する病気)が疑わしい。サナダ虫という説もあるが、サナダ虫は皮下移動はしないので外から見てわからない。

(3代)家光:48歳:脳卒中または消化器癌

(4代)家綱:40歳:不詳

(5代)綱吉:64歳:麻疹
 現在は予防接種が普及して患者さんは減りましたが、当時は「命定めの麻疹」として恐れられていました。
 当時の医学レベルでは重症者を救命できなかったのですね。
 400年経った今も撲滅されたわけではなく、2016年夏にジャスティン・ビーバーのコンサートをきっかけに小流行が発生したのは記憶に新しいところ。

(6代)家宣:51歳:インフルエンザ

(7代)家継:8歳:急性肺炎

(8代)吉宗:68歳:脳梗塞

(9代)家重:51歳:尿毒症
 肖像画と「発語が不明瞭」との記録から、小児期から続いた「脳性麻痺」が疑われるそうです。排尿障害がありたくさん厠をつくらせたという記録もあり、最期はそれによる尿毒症が死因になったそうです。

(10代)家治:50歳:衝心脚気

(11代)家斉:69歳:急性腹症
 50年という在職最長記録保持者。家治の2人の男児は死亡したため、「はとこ」の家斉に白羽の矢が当たった。いたって健康体であり、もうけた子どもの数はなんと57人。跡継ぎがいなくて悲嘆に暮れた家治を反面教師に下という説あり。
 健康の秘訣は食事で「白牛酪」というチーズに似た食べ物とショウガ(はじかみ)らしい。

(12代)家慶:61歳:熱中症
 徳川将軍15人のうち3人が脚気(ビタミンB1欠乏症)で亡くなっています。
 精米して米ぬか(ここにビタミンB1がある!)を取った白米食になったことが誘因の一つと考えられています。

(13代)家定:35歳:衝心脚気

(14代)家茂:21歳:衝心脚気
 増上寺の遺骨を調べたところ、32本中30本が虫歯でした。料理が好きな将軍で、甘い物(カステイラ、羊羹)などが好物だったようです。
 甘い物はビタミンB1の消費を助長すると説明されていました。
 死の間際には精神障害を起こして錯乱状態になり、Wernicke脳症を発症したと考えられます。
 大阪城での出来事なので「豊臣家の呪い」とまことしやかに囁かれたとか。

(15代)慶喜:77歳:急性肺炎
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「いのちをいただく」(内田美智子 著)

2016年12月06日 06時35分19秒 | 食育
 業者の坂本さんが話した内容を助産師の内田美智子さんが本にしたもの。
 絵本にもなっています。

<参考>「いのちをいただく」(YouTube動画

 先日(2016.11.13)、NNNドキュメント'16で取り上げられました:

■ いのちいただくシゴト 〜元作業員の誇りと痛み〜
 さかのぼれば、食べる"肉"はすべて命だった。
2016.11.13:日本テレビ
 元作業員の坂本義喜さんは小学校で講演し、動物を肉にするまでの話を子どもに伝えている。
 差別の体験も隠さない。「被差別の話を蒸し返さないでほしい」と言う同僚に「今の時代だからこそ正しい事を語らなくては」と訴える。 
 深い悲しみを背負い、時代を変えたいという決意で活動する坂本さんを通して、の現実、命をいただく仕事をしている人たちの姿を伝える。


 このテーマ、聞いたことがあるなあ・・・と本棚を探したら、ありました(^^;)。
 昔購入して本棚の奥にしまい込んでいたものを引っ張り出して読んでみました。

 「いただきます」は「あなたのいのちをいただきます」という意味。
 そう実感してこの言葉を口にしている日本人がどれだけいるのだろうか、と反省させられます。

 食べ物を粗末にしない、という食育には、その食べ物がどのように造られたのかを知る必要がありますね。
 そうすれば子どもでも自ずと食べ物に対峙する姿勢が変わってきそうです。

 「食べるのはかわいそう」と「美味しいお肉」の間でいかにバランスを取るか、は各個人の領分。
 
 TV番組では肉を扱ってきた被差別についても少し触れています。
 日本では平安時代まで、生き物を殺傷する職業(猟師・漁師・武士・獣を加工する仕事)の人々は地獄に落ちるとされていました。
 それを変えたのが親鸞上人です。
 著書の「歎異抄」中で、
 「善人なおもって往生を遂ぐ、いわんや悪人をや」(善人でさえ救われるのだから、悪人はなおさら救われる)
 という文章が有名ですが、この「悪人」とは犯罪者のことではなく、上述の地獄へ落ちるべき職業の人たちを指しているとされています。
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