小児医療・アレルギー・アトピー他

日々アレルギー疾患の診療をしている小児科医です.読んだ本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

イエメンではコレラ、マダガスカルではペストが流行

2017-11-15 12:01:43 | 感染症
 世界を見渡す後、日本では馴染みのない感染症が猛威を振るっている国・地域があります。
 今年話題になっているのは、アラビア半島のイエメンにおけるコレラ流行と、アフリカ東部に浮かぶマダガスカル島におけるペスト流行。
 とくにペストは中世ヨーロッパで流行し多数の死者が出たため「黒死病」として恐れられた感染症です。私が医師になってから30年弱、話題になった記憶がありません。このように一度忘れられた感染症が再度蘇って流行する現象を「再興感染症」と呼びます。

■ コレラ感染、100万人到達の恐れ 内戦下のイエメン
2017.09.30:CNN
(CNN) 国際赤十字は30日までに、内戦下にある中東イエメンでコレラの感染が今年末までに100万人に達する恐れがあると警告した。
 赤十字国際委員会のイエメン事務所代表は29日、過去に例がないコレラまん延との危機感を表明。感染が疑われる患者は現在約75万人。今年7月5日の時点では約27万6000人だった。この増加基調が続けば年末までには最大100万人に達するとした。
 世界保健機関(WHO)は今年7月、イエメンのコレラ感染について世界で最悪の流行と指摘。2015年3月に始まった内戦で医療保健体制がほころび、社会基盤の崩壊や飢餓の状態に近い食糧不足などがコレラ拡大の元凶となっている。
 WHOによると、今年9月13日段階で報告などされたコレラ感染の犠牲者はイエメン全土で2074人。以前の報告書では、住民5000人が毎日、感染しているとも推定していた。
 赤十字国際委員会のイエメン担当責任者は、同国の医療保健体制は限界水域にあると説明。今後、新たな感染拡大が発生した場合の対応策に懸念が生じているとした。


<参考>
■ 「コレラとは」(国立感染症研究所)


■ マダガスカルのペスト流行、死者124人に 1192人感染
2017.10.27:CNN
(CNN) アフリカのマダガスカルで猛威を振るっているペストの流行について、国連人道問題調整事務所と地元のリスク管理対策部門は27日までに、今年8月以降1192人が感染し、124人が死亡したと明らかにした。
 感染者の67%は、人から人へと感染する肺ペストに罹患(りかん)。ペストはペスト菌によって引き起こされ、ネズミなどが運ぶノミがかむことで感染が拡大する。症状は、痛みやリンパ節の腫れ、発熱、寒気、咳(せき)など。
 マダガスカル国内の114地区のうち、肺ペストの感染が報告されたのは40地区。人口の多い大都市を含む少なくとも10都市でも感染が伝えられている。他人との接触で一段の感染拡大が起こる恐れがあるものの、国連によれば所在のつかめている感染者は全体の3割に満たない。
 一方で23日の国連の報告では、8月1日以来、780人の感染者が治癒したとしている。また感染が伝えられた地区のうち6地区については、過去15日間で新たな感染例の報告はないという。
 世界保健機関(WHO)は直近の報告の中で、国内での感染がさらに拡大するリスクは依然として極めて高いと指摘。ただ近隣の島やアフリカ南部・東部といった周辺地域へ感染が広がるリスクはそれほどでもないとの見方を示した。
 WHOのマダガスカルの代表者は「国境を越えて感染するリスクは低い。一般的に感染者は体調不良が著しく、旅行に出られる状態ではなくなるからだ」と説明した。現在WHOはマダガスカルの空港当局と連携し、空港や港湾に医療スタッフを配備するなどして国外への感染者の流出阻止に取り組んでいるという。


<参考>
■ 「ペストとは」(国立感染症研究所)


■ ペストに気を付けろッ! その1
(2017/11/14:ケアネット)
忽那 賢志 ( くつな さとし ) 、国立国際医療研究センター 感染症内科/国際感染症センター
人類とペストの歴史
 人類とペストの歴史は古く、ヨーロッパでは西暦542~543年にかけて東ローマ帝国で流行したそうです。さらにさかのぼれば、2,800~5,000年前のアジアとヨーロッパのヒトの歯の化石から、ペストのDNAが検出されたという報告もあります1)。人間とペストとの戦いは少なくとも5,000年以上は続いているのですッ! 
 最大の流行は14世紀で、アジアから始まった流行はヨーロッパまで波及し、何とこのとき世界の人口の3割がペストで亡くなったと言われています。世界人口の3割…ペスト、恐るべしです。
 フランスのルーブル美術館にある『ジャファのペスト患者を訪れるナポレオン、1799年3月11日』は、その名の通り1799年にペスト患者を見舞うナポレオンの様子を描いた絵ですが、中央の患者は腺ペストの患者で、腋窩リンパ節が腫れているのが分かります。ナポレオンは、じかに触ろうとしていますね。
 腺ペストは、ノミに刺されることによって感染します。また、腺ペストの患者の体液に曝露すると、ヒト-ヒト感染が成立しますし、肺ペストの感染者やげっ歯類から飛沫感染によっても感染します。
 そんなわけで、有史以来人類はペストと戦ってきたわけですが、日本も例外ではありません。1896年以降、ペスト患者が日本でも報告されています。『明治の避病院-駒込病院医局日誌抄』(磯貝元 編)という本には、当時の駒込病院の医師であった横田 利三郎氏が、「ペスト患者のリンパ節を切開し、血液が顔にかかったことで自身もペストに罹患し、亡くなった」と書かれています。このように日本でもペストはかつて被害をもたらした感染症なのです。
 と、ペストと人類の歴史を語ってきましたが、何だかこんな風に説明するとペストは過去の感染症のように思われるかもしれませんが、そうではありませんッ!
 ペストは今も局所的に流行しているのですッ!
現在進行形のペストの流行
図2は、世界保健機関が発表したペストの流行地域(2016年3月時点)を示した世界地図です。今でもペストに感染するリスクがある地域の存在が、お分かりいただけるかと思います。何とあのアメリカ合衆国でも、いまだにペスト患者が報告されているのです。とくにニューメキシコ州北部、アリゾナ州北部、コロラド州南部で症例が多く報告されています。アジアやアフリカでも流行していますね。



 そして、この世界地図でも赤く塗られているように、マダガスカルでもペストは流行地域に指定されているのですが、今年はとくに大規模なアウトブレイクが起こっています(図3)。すでに1,800例以上のヒト感染例が報告されており、さらにチャバイことに、症例の大半が「肺ペスト」なのですッ!(図4)2)





 通常ペストは、ノミの刺咬によって起こる「腺ペスト」の病型が一般的であり、肺ペストの病型はまれだと言われています。しかし、今回のマダガスカルのアウトブレイクでは、肺ペストの症例が7割以上を占めているのです。この意味するところは、患者からのエアロゾル吸入による「ヒト-ヒト感染」が持続的に起こっているということなのですッ! マダガスカルでの死者は、すでに120例を超えているようです(致死率7%)。日本に住む我々も決して他人事ではない状況になってきています。


<参考文献>
1)Rasmussen S, et al. Cell.2015;163:571-582.
2)Madagascar Plague Outbreak:External Situation Report #7: 31 October 2017.


<追記>
2017.11.29
マダガスカルのペストに関する続報です。
北海道大学のチームが調査に入っているのですね。

■ 海外への拡大心配なし アフリカのペストで北大
共同通信社2017年11月28日
 アフリカ南東部の島国マダガスカルで起こっている今世紀最大規模とみられる肺ペストの流行について、国外に広がる可能性は極めて低いとする分析結果を、北海道大の西浦博(にしうら・ひろし)教授らの研究チームが28日までにまとめ、欧州医学誌電子版に発表した。
 ペストはエボラ出血熱と同じ感染症法の1類に分類される重大な感染症で、中でもせきなどによって人から人に感染する肺ペストは最も危険な種類とされる。
チームによると、ペスト全体で11月中旬までに2千人を超える患者が報告された。
 チームは、フランスのパスツール研究所などがまとめた8~10月の感染者数や、マダガスカルの出入国者数のデータを使って、マダガスカル国外にペストが広がる可能性を分析した。
 その結果、マダガスカルとの関係が深いフランスを含め、入国可能性がある肺ペスト患者の人数はどの国でも0・1人未満で、国外流行のリスクは非常に低いことが分かった。
 また、患者1人から他の人に感染する人数も従来と大きな違いはなかったという。
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