小児医療・アレルギー・アトピー他

日々アレルギー疾患の診療をしている小児科医です.読んだ本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

「卵アレルギーを予防するために卵を食べさせる」時代が到来。

2016-12-10 07:30:43 | 食物アレルギー
 食物アレルギーの治療の進化から目が離せません。
 10年前までの治療方針は、

食べさせないで予防し、発症したら治るまで食べさせない

 でした。
 しかし2008年、イギリスの研究者から「二重抗原曝露仮説」(アレルゲンが皮膚から入ると感作されるが、口から入ると免疫寛容を誘導する)が発表され、エビデンスが集積してから方針が180度転換しました;

発症して治らない例は、食べさせて治す

 と、まず発症例の「治療」に応用され、成果を上げつつあります。
 しかし、症状が出る例が多く重症なアナフィラキシーも想定されるので、まだ一般的な治療として認められていません。
 もちろん患者さんが自己判断で自宅で試すのはたいへん危険ですのでやめてください。

 そしてその試みは「予防」領域にも導入されつつあります。

アレルゲンを食べさせてアレルギー発症を予防する

 紹介する記事は国立成育医療センターからの報告です;

■ <卵アレルギー>逆転の発想? 乳児期に食べて発症予防
毎日新聞 2016/12/9
◇ごく少量のゆで卵継続、発症を8割減
 乳児期にごく少量のゆで卵を食べ続けることによって、1歳時点での卵アレルギーの発症を8割減らせたとの結果を、国立成育医療研究センターアレルギー科の大矢幸弘医長らのグループが9日の英医学誌ランセットに発表した。
 卵アレルギーは、子どもの食物アレルギーの中で最も多い。
 グループは、生後4カ月までにアトピー性皮膚炎を発症し、食物アレルギーになる可能性が高い乳児121人を対象に、卵を食べる影響を調べた。60人は生後6カ月から固ゆで卵の粉末50ミリグラム(ゆで卵0.2グラムに相当)を毎日食べ、9カ月からは250ミリグラムに増やして1歳まで食べた。残りの61人は、生後6カ月から卵の入っていないカボチャ粉末を食べた。
 その結果、1歳の時点で、卵の粉末を食べていない子どものうち23人(38%)が卵アレルギーを発症したが、食べた子どもで発症したのは5人(8%)にとどまり、発症率を8割減らすことができた。少量を食べ続けることで体が慣れ、多く食べられるようになったとみられる。アトピー性皮膚炎のない乳児に同様の効果があるかは分からないという。
 英国でも昨年、同様の研究結果が出ているが、開始直後からアレルギーが出て続けられない子どももいた。今回の結果で、より少量から始めることで、安全に食べ続けられることが分かったという。
 大矢医長は「すでに卵アレルギーを発症している場合はまねをしないでほしい。卵を十分加熱していない場合もアレルギーを起こしやすいため危険があり、必ず専門医に相談してほしい」と話す。


 多くの文献を集めて解析した論文も「生後4か月から6か月という早い時期から卵を食べさせることが、卵アレルギーの減少と関連する」と結論づけています;

■ 卵とピーナッツは早めに食べさせるとアレルギーになりにくい 〜文献の調査から
(2016年10月24日 JAMA)
 卵やピーナッツはアレルギーを起こしやすい食品です。赤ちゃんに食べさせるのは心配になりますが、積極的に食べさせるとむしろアレルギーを防げるのではないかという説もあります。これまでに報告されている研究結果がまとめられました。

◇ 卵とピーナッツを早くから食べさせることでアレルギーを予防する効果の研究
 ここで紹介する研究は、文献を集める方法で、乳児にアレルギーを起こしやすい食品を食べさせる時期とアレルギーの関係を調べています。
 これまでに赤ちゃんに実際に食べさせて効果を見た研究と、家庭に任せて統計的に調べた研究の報告を集めました。

◇ 卵とピーナッツは0歳児に食べさせるとアレルギーが減っていた
 見つかった研究報告を統合し、次の結果が得られました。

生後4か月から6か月という早い時期から卵を食べさせることが、卵アレルギーの減少と関連する(リスク比0.56、95%信頼区間0.36-0.87、I2=36%、P=0.009)という、中等度の確かさの証拠が5件の試験(参加者1,915人)から得られた。
・生後4か月から11か月の早い時期にピーナッツを食べさせることがピーナッツアレルギーの減少に関連する(リスク比0.29、95%信頼区間0.11-0.74、I2=66%、P=0.009)という中等度の確かさの証拠が2件の試験(1,550人の参加者)から得られた。

 卵を生後4か月から6か月の間にはじめて食べさせた子どもで、卵アレルギーが少なくなっていると見られました。
 ピーナッツを生後4か月から11か月の間にはじめて食べさせた子どもで、ピーナッツアレルギーが少なくなっていると見られました。

◇ アレルギーにどう備える?
 アレルギーをただ怖がるよりも、卵とピーナッツは早めに試してみてもいいのかもしれません。
 ただし、予防効果があるかどうかにかかわらず、卵とピーナッツはもともとアレルギーを起こしやすい食べ物です。はじめて食べさせるときは体の様子をよく観察する、もし何かあればすぐ小児科に行けるようにしておく、蕁麻疹(じんましん)などアレルギーの症状が現れたら急いで相談に行くなどの対処は必要です。特に、ピーナッツはのどに詰まりやすいので、3歳ぐらいまではナッツの形のまま与えるのはおすすめできません。
 アレルギーのリスクとうまく付き合いながら、子どもが食べるものを豊かにしてあげてください。


◆参照文献
Timing of Allergenic Food Introduction to the Infant Diet and Risk of Allergic or Autoimmune Disease: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA. 2016 Sep 20.
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