小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

第1回総合アレルギー講習会へ参加してきました。

2014年12月22日 06時57分44秒 | 気管支喘息
 日本アレルギー学会の秋の学会が「講習会」に名前を変えてはじめての会合です。
 参加費20000円なり(高い!)。
 土日開催ですが、開業医はこのインフルエンザ流行期に休診にすることが難しいので、日曜日だけの参加となりました。半分だから参加費も半分にならないかなあ・・・(苦笑)。
 愚痴はさておき、印象深かったのが2つの「実習」です;

■ 吸入指導(小児):長尾みづほ先生(国立病院機構三重病院)
 小児喘息の吸入療法で使用されるデバイス(機械/器具)の解説です。
 日本人は漢方薬の影響か飲み薬には抵抗がないのですが、「吸入」という方法になかなか馴染めません。ましてや相手は子どもです。現場のノウハウを実物を見せながらの説明は説得力があり、聞いている方もウンウンと納得できました。
 日々の診療でも指導しているので知識の確認目的でしたが、気になった点/気づいた点をメモ;

・大泣きしていたら、しっかり吸入できていると思うのは間違い。吸気速度が速すぎるので薬が咽頭部に付着してしまい、気道の奥まで到達せず効率が低下する。
・子どもは「吸う」動作に慣れていない。「ジュースをストローで飲むように」など、具体的な例を挙げてイメージさせるとよい。
・マスクつきスペーサーを使用するときは密着度がポイント。しかし、密着させていざ吸入薬をプッシュすると「プイッ」と顔を背けて失敗することが多い。頭を保持して吸入させるべし。
・練習用トレーナーで音が出ることだけを強調すると、短時間(瞬間的)に勢いよく吸うクセが付いてしまいがち。音を長く出すよう指導すべし。
・市販されているスペーサー(吸入補助器具)で代表的なのはエアロチャンバー。しかし、マスクタイプは乳児用/小児用、マウスピースタイプは男の子用/女の子用と細かく分けられ年齢が長ずると買い換えなければならない(商魂たくましい?)。一方、オプティチャンバーダイアモンドはマスクの付け替えができるので経済的/良心的である。ボアテックスは静電気対策がされている商品。
・DPI製剤(フルタイド/アドエアディスカス等)でうまく吸入できているか確認する方法:吸入後のDPIをコンコンとたたいてみて粉が落ちてくるかどうか観察(しっかり吸入できていないと薬剤がまだ吸入器内に残っている)
・重症牛乳アレルギー患者はDPIに乳糖が入っているので注意すべし。経口では無症状でも、吸入はダイレクトに血流に入るので症状が出る可能性がある(抗インフルエンザ薬のイナビルにも乳糖が入っておりアナフィラキシーの報告あり)。

■ アトピー性皮膚炎のスキンケア:加藤則人先生(京都府立医科大学皮膚科)
 アトピー性皮膚炎における保湿の位置づけと保湿剤の解説、そして洗う際の石けんの泡立て方の実技、保湿剤塗布の実技指導。
 固形石けんを泡立てる方法と、液体石けんをビニール袋で泡立てる方法を実際に行い比較してみると、固形石けんの方がクリーミィできめが細かいことに気づかされました。界面活性剤が少ない方がクリーミィになりやすく肌に刺激が少ないと説明されました。
 近年有名になったFTU(finger tip unit)の原著の記載は25gチュープでの話(日本では5gチューブが中心なので少なめになる)。
 ヒルドイドソフトとローションを実際に自分の肌に塗布しましたが、ローションは手のひらに1円玉大落としてそれを手のひら2枚分として塗るのですが、ベタベタして拭き取りたくなるくらい。塗った直後に服を着ることをためらわれる量でした。
 こちらの実習では質疑応答が盛り上がりました。

Q. 保湿剤とステロイド軟膏はどちらを先に塗るべきか?
A. 私(講師)は保湿剤→ ステロイド軟膏の順番で指導している。しかし、どちらの順番でも効果/副作用に差がないという報告がある。

Q. アトピー性皮膚炎に対してローション、クリーム、軟膏の使い分けは?
A. 乾燥しやすいのはローション>クリーム>軟膏の順なので、ステロイド軟膏は基本的に軟膏が第一選択。しかし保湿剤は内容物に乾燥対策が取られているので、好みのものを季節も考慮しながら使ってよいと思う。ただ、ワセリン(軟膏)の上にローション/クリーム・タイプのステロイドを塗っても吸収されないことに注意すべし。

Q. ステロイド軟膏と保湿剤を混ぜて使うのは良いか悪いか?
A. 「ステロイド軟膏を薄めて副作用を軽減する」イメージがあるが、逆に吸収がよくなる組み合わせもあるので「何が起こるかわからない」と認識すべき。混ぜないことが基本と考えるが、私(講師)は、患者さんの湿疹がひどいときに全身に保湿剤とステロイド軟膏を2度塗りするのは大変なので、急性期に限定して処方することはある。
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