小児医療・アレルギー・アトピー他

日々アレルギー疾患の診療をしている小児科医です.読んだ本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

子どもが頭を強く打ったときの注意点

2017-09-09 07:19:41 | 小児医療
 「子どもが頭を強く打ったので診て欲しい」と受診される乳幼児が少なくありません。
 心配なのは「頭蓋内出血」なので本来は脳神経外科を受診すべき病態であり、吐いたりグッタリしたりボーッとしていれば救急車を呼んで病院へ行くはずです。
 当院に来る患者さんはそのような症状のない、でも心配だから診て欲しいというレベルですので、かかりつけ医として以下のようにアドバイスしています。

・頭蓋内出血が重症であれば意識障害、けいれんが必発なので救急車騒ぎになってるはずです(目の前に元気な患者がいるので取りあえずその心配は無い)。
・細い血管(正確には架橋静脈)が切れた場合、血の塊が徐々に大きくなって後になり症状が出てくることがあるので、頭部打撲後1ヶ月くらいは注意して観察してください。
・注意すべき症状として、意識が変、嘔吐しやすい、今までできていたことができなくなった(歩けたのに転びやすくなった等)。

 脳神経外科専門医によるわかりやすい解説記事を見つけたので紹介します;

■ 小児の頭部打撲 危険な兆候の見極め方
2017年3月30日:毎日新聞
  工藤千秋 / くどうちあき脳神経外科クリニック院長
 小児では遊んでいる最中に頭部を打撲することは珍しくなく、しばしば親はヒヤリとさせられるものです。これは一般的に大人が8頭身といわれるのに対し、出生直後の乳児は約4頭身など小児では全身に占める頭の割合が大きく、バランスを崩して頭部を打撲しやすいためです。実際、消防への救急相談では、小児の頭部外傷の事例はかなり多いことが知られています。
 こんなケースがあります。小学生の女児が公園で高さ約1mの遊具から転落し、約1時間後に吐き気を催しました。転落時の頭部打撲の有無は定かではなく、慌てた父親が救急車を要請。ところが女児は救急車到着時にはケロリとしていて、病院での検査も異常なく、今も元気です。女児の父親は「救急車を呼んだのは、慌て過ぎだった」と反省しきりでした。
 では、小児の頭部打撲、またはそれが疑われるときはどうすればよいのでしょうか? 今回はその判断と対処法をお話ししたいと思います。
打撲後24時間は細心の注意を 頻回嘔吐時はすぐ受診を
 子供が頭部を打撲した、あるいはその可能性がある場合、まず、必要なのは頭部を手で触って瘤(こぶ=血腫)の有無を確認することです。脳出血や脳挫傷を起こすほどの頭部打撲では、おおむね大きな瘤ができるからです。もし、瘤があれば、患部を冷やして様子を見ます。
 そのうえで打撲から1時間以内に、

▽2回以上の嘔吐(おうと)
▽ 嘔吐はなくとも呼びかけ時に目が泳ぐ
▽ 無表情で反応が悪い
▽ 急にぐったりし始める
▽ 顔や手足の一部が引きつったようにピクピク動く


などの症状がある場合は、脳出血を起こしている可能性があります。
迅速に救急車を呼び、医療機関に連れて行くべきです。
 医療機関ではCT(コンピューター断層撮影)などによる診断が行われますが、ここで「異常なし」と診断されてもまだ安心は禁物。受診後に脳出血が始まる場合もあるからで、打撲から24時間以内は要注意です。この間は安静を保ちながら、既にお話ししたような症状が起きていないかを注意深く観察してください。もし症状があれば、再度救急車などで医療機関へ連れて行きましょう。
 もっとも親としては、瘤がなくても不安になるでしょうし、頭部打撲後1時間以内に1回だけの嘔吐ならば、判断に迷うでしょう。これらの場合、それ以上症状が悪化せず、子供の顔色も良く、ニコニコしながら普段と変わりない活動性にほどなく戻っているならば、ほぼ問題ないと考えてよいと思います。
損傷しやすい子供の脳
 ここで頭部の打撲時、頭の中でどのようなことが起きているかを簡単に説明します。まず、小児は脳が発達途上で軟らかく、頭蓋骨(ずがいこつ)と脳との空隙(くうげき)も大人より大きいのが特徴です。空隙は脳脊髄(せきずい)液という液体で満たされています。この様子をもう少しわかりやすく例えるならば、水を張ったおわんの中に豆腐を置いた状態と言えます。この場合、おわんは頭蓋骨、豆腐は脳、水は脳脊髄液に相当します。
 この例えでは頭部打撲時、豆腐はおわんの水の中で激しく揺さぶられ、時には豆腐の角が崩れ、中の方でやや破壊が進むという現象が起こります。これが脳の損傷・出血に当たります。損傷までに至らなくとも激しく揺さぶられ、気持ち悪さを感じます。頭部打撲直後に1回程度の嘔吐で回復してしまうケースは、この揺れが軽度で時間の経過とともに治まったということです。
小児と高齢者では打撲だけでなく揺さぶりにも注意を
 このような小児特有の頭の構造を考慮すれば、親が子供を叱る際に拳で頭をたたくことなどが望ましいものではないことは分かっていただけると思います。万が一、うっかり子供の頭を強くたたいてしまった場合は、先ほどのような瘤の有無確認や症状の変化などに注意してください。
 ただし、頭をたたく叱り方をしなければよいものではありません。子供を叱る時、ついつい興奮して子供の両肩をつかまえて「何をやっているの!」と言いながら前後に揺すってしまったことはありませんか? この行為もおわん(頭蓋骨)の中で豆腐(脳)を激しく振動させることにつながります。時にはこれが脳幹の微細損傷につながることがあります
 ヒトは脳からの指令が脊髄を通して全身の末梢(まっしょう)神経に伝わり、日常生活に関わる行動を起こしています。この脳と脊髄の接続部が脳幹です。ヒトが無意識に行っている呼吸なども脳幹が機能して正常に行われているため、脳幹損傷は生命の維持そのものを危うくするのです。
 このことは実は高齢者でも注意が必要です。高齢者では加齢とともに脳は萎縮しがちになり、小児と同じようにやや空隙が大きくなります。軽度の認知障害が出現した高齢者などに「ねー、どうしちゃったの?」と言いながら、両肩をつかんで揺するのは小児と同様に望ましいことでありません。人は年を重ねるごとに子供に戻るという言い方がありますが、これは脳でもある意味同じことなのです。



<2017.9.17;追記>
 関連記事を見つけましたので引用させていただきます。
 解説は放射線科医で前掲の脳神経外科医と視点がちょっと異なります。
頭部CT検査の被曝のリスク(胸部レントゲン1枚の100倍!)と比較して判断するという内容です。
 フローチャート化してあるのでわかりやすい。

■ソファから落ちて頭をぶつけた男児に頭部CT?
2017/9/15 中西奈美=日経メディカル

Q C君に頭部CT検査を実施する?
出題:田波穣氏(埼玉県立小児医療センター放射線科)
ケース3:C君、5歳男児。
 「ソファから落ちて床に頭をぶつけた」と母親に付き添われて外来を受診。落下直後、C君は火がついたように泣いたが、数分で泣きやんだという。受診まで特に変わった様子はなく、看護師とも楽しそうに話している。一方、母親は「頭のことなので、CTを撮ってほしい」と強く要望している。

【所見・既往歴など】
 殴打した部分に皮下組織の毛細血管から出血した痕があるが、血腫は認められない。
 母親からの聴取で、意識障害や嘔吐などはなかった。
 ソファ面の高さは50cm。落下から5時間程度たっている。
 既往歴、手術歴なし。


 「CT検査は小児においても画像診断のモダリティーになりつつある」と埼玉県立小児医療センター(さいたま市中央区)放射線科の田波穣氏は話す。装置やソフトウエアの進歩により、被曝線量の少ない撮影が可能になってきたが、CT検査はいまだ医療放射線被曝の主な要因となっている。
 小児の被曝に関しては、
(1)一部の放射線誘発性癌に対し、小児は成人よりも2~3倍脆弱である、
(2)小児は平均余命が長く、小児期の放射線曝露に関連する発癌が寿命に影響を与える可能性がある、
(3)放射線誘発性癌は長い潜伏期を経て増大することが多く、そのスピードは腫瘍の種類および被曝線量によって変化する
──という特徴がある。「小児では特に適応の正当化と線量の最適化が重要」と田波氏は言う。いずれも検査をオーダーする主治医と患児の家族が、リスクとベネフィットを理解した上で実施を検討しなければならない。



図1 軽度の頭部外傷に対するCT検査適用フローチャート
(多施設共同研究「PECARN」の結果、Lancet. 2009;374:1160-70.より改変)

 特に、意識喪失やめまい、嘔吐などといった神経学的な異常を伴わない軽度の頭部外傷後にCT検査が必要かどうかは、「PECARN」と呼ばれる多施設共同研究から図1のように提案されている。他に、CHALICEルールやCATCHルールも、感度の高い基準として評価されている。
 C君の意識レベルを示すGCS(Glasgow coma scale)は15であり、頭蓋骨折や神経学的な所見も認められない。母親がCT撮影を望んでいるが、被曝のリスクを説明し納得してもらい、検査を行わないことが妥当だと田波氏は判断した。母親には、重症の可能性は低いため、被曝のリスクを説明し、検査を行うべきではないことを伝えた。また、帰宅後も目を離さず様子を確認し、嘔吐や痙攣、傾眠、頭痛の悪化などが認められた場合にはすぐに外来を受診するよう指導した。

A 頭蓋内出血などの危険性は低いため、被曝のリスクを重視し、CT検査は行わない。
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