徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

ワクチンで赤ちゃんをインフルエンザから守るには?

2016年09月18日 08時58分10秒 | 小児科診療
 現行のインフルエンザワクチンは生後6ヶ月から接種可能となっています。
 それ以前の赤ちゃんは・・・家族がワクチンを接種して家の中にインフルエンザウイルスを持ち込まないという原始的な方法しかありません。

 「赤ちゃんは生後半年間はお母さんからもらった免疫が残っているので風邪をひきにくい」というイメージがありますが、これは「お母さんに免疫がある感染症」に限定されます。
 インフルエンザに関しては、過去に罹っていても何回も感染する感染症ですから、お母さんの免疫が胎盤・臍帯を介して移行したとしても不十分といわざるを得ません。

 もうひとつ方法があります。
 お母さんが妊娠中にインフルエンザワクチンを接種して免疫を獲得し、それが赤ちゃんへ移行するのを期待する方法です。
 そうすれば約半年有効で、めでたしめでたし・・・とはいかないようです。
 紹介する下記論文では、有効な免疫は8週間しかもたないと報告されています。やはり一般に考えられている自然感染による持続期間よりは短くなってしまうのですね。

■ 母親の抗体が乳児を守るのは生後8週まで 〜南アで妊婦のインフルエンザワクチン接種のRCT
2016/8/1 :日経メディカル
 妊婦がインフルエンザの予防接種を受けると、出産後の乳児にはどのくらいの予防接種の効果が続くのか。南アフリカWitwatersrand大学のMarta C. Nunes氏らは、二重盲検のランダム化プラセボ対照試験を行い、ワクチンの予防効果は生後8週くらいまでしか続かないようだと報告した。詳細は、JAMA Pediatrics誌電子版に2016年7月5日に掲載された。
 現在利用可能なインフルエンザワクチンは、生後6カ月以降の乳児から使用できるとされている。しかし、インフルエンザの流行期には生後6カ月未満の乳児患者も多く死亡率も高い。そこで著者らは、2011年と2012年の流行期が始まる前に、HIVに感染していないことを確認した上で、妊娠第2期と第3期の妊婦にWHOの推奨株の3価不活化インフルエンザワクチンを摂取し、ワクチンの効果と安全性を確かめ、生まれた乳児の予防効果を調べる研究を計画した。プラセボ群に割り付けられた妊婦には、ワクチンの代わりに生理食塩水が接種された。
 追跡期間は出生後第24週まで。乳児は、生後7日以内、8週後、16週後、24週後に採血してヘマグルチニンに対する抗体(HAI)の力価を調べた。また参加者には毎週来院してもらい呼吸器疾患を調べ、一部の乳児からは鼻咽頭液を採取してRT-PCRでウイルスRNAが検出されるかを確認した。
 ワクチン群の女性から生まれた1026人(47.2%が女児)の乳児と、プラセボ群の女性から生まれた1023人(47.3%が女児)を分析対象にした。接種群の小児は、妊婦への接種から平均81.0日(全体の範囲1~175日)で出生しており、その時点から中央値172日(四分位範囲168~175日)の追跡が行われていた。ベースラインでは両群の乳児の特性(早期産や低体重児の割合など)に差はなかった。
 出生時(第1週)にHAI抗体の力価が1:40以上あった乳児の割合は、ワクチン群(H1N1pdm09株78.3%、H3N2株56.6%、B型ビクトリア株81.1%)の方が有意に高く、プラセボ群では(H1N1pdm09株33.6%、H3N2株17.3%、B型ビクトリア株41.8%)だった。しかし、高い抗体価を保っている乳児の割合は、どちらの群でも生後24週まで時間経過とともに減っていった。ワクチン群では生後16週で39.5%、19.1%、40.0%、生後24週には10.0%、6.7%、9.4%まで減った。抗体価を保っていた乳児が最も少なかったのはプラセボ群の24週後で、それぞれの株に対して3.5%、0%、1.7%だった。
 追跡期間中にRT-PCRでインフルエンザ感染を確認された患者は、ワクチン群の19人とプラセボ群の37人だった。ワクチン群では、生後8週以内で発症した患者が2人、8~16週は12人、16~24週は5人で、プラセボ群はそれぞれ14人、16人、7人だった。
 感染が確認された乳児のうち、発症しなかった乳児の割合をワクチン有効例と判定すると、ワクチンの効果は生後8週以内の乳児で85.6%(95%信頼区間38.3-98.4%)と最も高く、生後8~16週では25.5%(-67.9から67.8%)、16~24週では30.3%(-154.9から82.6%)と低かった
 妊婦への予防接種は乳児をインフルエンザから守るが、生後8週を超えると母親由来の抗体価が下がっていき、予防効果が薄れていくと著者らは結論している。
<原著>
・「Duration of Infant Protection Against Influenza Illness Conferred by Maternal Immunization」(JAMA Pediatrics)
ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 稲田防衛大臣の蕁麻疹は抗マ... | トップ | 抗菌ハンドソープは「無効」... »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
ブログ作成者から承認されるまでトラックバックは反映されません。
  • 30日以上前の記事に対するトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • このブログへのリンクがない記事からのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。