徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

2015-16シーズンのインフルエンザワクチンの有効性報告

2016年11月08日 08時10分35秒 | 小児科診療
 昨シーズンのインフルエンザワクチンの有効性に関する情報が届きました。
 日本ではなくフィンランドとイギリスからの報告です。

 フィンランド報告の結論は、不活化ワクチン(現行の日本のワクチンと同等)と経鼻生ワクチン(日本では未承認)の効果を比較したところ、不活化ワクチンの方が有効率が高かったというもの。
 経鼻生ワクチンが登場した時は「有効率9割」を謳い、これでインフルエンザ流行は制御できる、と関係者は喜んだのですが、敵も然る者でなかなか一筋縄にはいきません。
 この報告での有効率も「生ワクチン約50%、不活化ワクチン約60%」と私から見るとドングリの背比べ程度、どちらも他のワクチンより低く満足できる数字ではありません。

 イギリス報告は、ワクチン株と流行株が一致しなくても、有効性は保たれるという結論。しかし有効率が50%台ですから、これもドングリの背比べレベルですね。

 インフルエンザウイルスと人類との闘いはエンドレスで続きます。

■ 2歳のインフルエンザを予防、2015-2016年のワクチンの実績  フィンランドの統計から
from Euro surveillance : bulletin Europeen sur les maladies transmissibles = European communicable disease bulletin
2016年11月8日:MEDLEY
 去年の統計から、2歳児がインフルエンザワクチンを打つことでインフルエンザが予防されていたことが報告されました。

◇ フィンランドで2015/16年にインフルエンザワクチンは効いたのか?
 フィンランドの研究班が、2015年から2016年にまたがるひと冬(以下「2015/16年」)の統計からインフルエンザワクチンの効果を計算し、結果を専門誌『Eurosurveillance』に報告しました。
 研究班は、フィンランド全国の統計から、ワクチンを接種した子どもと接種していない子どもを合わせて55,258人分のデータを解析しました。
 ワクチンを接種した子どもと接種していない子どもを比べて、検査でインフルエンザと確認された人数が減っているかを計算しました。

◇ 2種類のインフルエンザワクチンが使われた
 2015/16年の予防接種として、フィンランドでは2種類のインフルエンザワクチンが使われました。

・3価不活化ワクチン
・4価経鼻生ワクチン

 不活化ワクチンというのは、インフルエンザウイルスを殺して感染力をなくしたものを注射するワクチンです。日本で普通に使われているインフルエンザワクチンは不活化ワクチンです。
 経鼻生ワクチンというのは、鼻からスプレーするタイプのインフルエンザワクチンです。生きたウイルスをワクチンとしたものです。鼻の粘膜で免疫力を発揮する「IgA」というタイプの抗体が作られるという考えで使われます。
 3価・4価というのは、ワクチンが対応しているウイルスの数を現します。ワクチンとウイルスの型が一致しなければ高い予防効果が発揮できないのですが、どの型のウイルスが流行するかは正確に予測できないので、3価ワクチンは3種類、4価ワクチンは4種類のウイルスを防ぐように作られています。
 3種類よりも4種類に対応したワクチンのほうが、型が一致しやすいと考えられます。
 つまり、4価ワクチンのほうが予防効果を現しやすいと考えられます。日本では2015/16年の予防接種から、以前の3価不活化ワクチンをやめて、4価不活化ワクチンが使われています。
 ここで紹介する統計では、経鼻生ワクチンとして4価ワクチンが使われている分、経鼻生ワクチンに有利な条件で予防接種が行われています。

◇ インフルエンザワクチンでインフルエンザは予防できたのか?
 対象者55,258人のうち、経鼻生ワクチンを使った子どもは8,086人、不活化ワクチンを打った子どもが4,297いました。
 統計解析の結果、4価経鼻生ワクチンによる予防率は51%、3価不活化ワクチンによる予防率は61%と計算されました。

◇ インフルエンザワクチンは注射で
 インフルエンザの経鼻生ワクチンと不活化ワクチンの効果は、報告によって幅があり、どちらが効くのかは最近まで意見がまとまっていませんでした。
 2016/17年の予防接種については、アメリカの政府機関である疾病管理予防センター(CDC)から、経鼻生ワクチンは使うべきでないという意見が示されています
 ここで紹介した研究でも、経鼻生ワクチンは4価という有利な条件にもかかわらず、不活化ワクチンよりも計算上低い予防率しか出せていません。
 インターネットの噂などで「日本のインフルエンザワクチンは粘膜に抗体を作らないので効かない」という憶測がときどき語られますが、実際の結果は不活化ワクチンのほうが効いているように見えます。憶測ではなく実際の結果を見なければ、本当に効いているかどうかはわかりません。
 日本ではインフルエンザの経鼻生ワクチン(商品名フルミスト®など)は承認されていません。一部の医療機関が提供していますが、もし見かけることがあっても、普通の注射するワクチンを打ってください。


<参照文献>
Effectiveness of the live attenuated and the inactivated influenza vaccine in two-year-olds - a nationwide cohort study Finland, influenza season 2015/16. Euro Surveill. 2016 Sep 22.

■ 予測が外れても有効、2015-2016年のインフルエンザワクチン 〜イギリスの統計から
2016年11月12日:Medley
 今年のインフルエンザは10月から早くも学級閉鎖が出るなどで話題になっています。予防接種はまだ間に合います。去年のイギリスの統計から、流行を予測したワクチンの型が合っていなくても予防効果があったことが報告されました。

◇ イギリスで2015/16年にインフルエンザワクチンは効いたのか?
 イギリスの政府機関であるイングランド公衆衛生庁などの研究班が、2015年から2016年にかけての一冬(以下「2015/16年」)のインフルエンザ予防接種についての統計を、専門誌『Eurosurveillance』に報告しました。

◇ ワクチンと流行の型が合わなかった
 イギリスでは、2015/16年に流行したインフルエンザの型は主にA(H1N1)pdm09(A型インフルエンザの一種)とBビクトリア系統(B型インフルエンザの一種)の2種類でした。この年に、イギリスでインフルエンザ予防接種に使われた注射は、Bビクトリア系統に対応していないものでした。つまり、予測が外れ、注射したワクチンが対応していない型のウイルスが流行してしまいました。

◇ 型が合わないB型でも有効率54%
 研究班は、インフルエンザのような症状で医師の診察を受けた人の検査データを集計しました。遺伝子検査(リアルタイムPCR法)でインフルエンザかどうかを診断し、ワクチンによってインフルエンザが予防された割合(予防率)を計算しました。
 次の結果が得られました。
 全体の期末調整ワクチン有効率は、インフルエンザが確認されたプライマリケア受診に対して52.4%(95%信頼区間41.0-61.6)、インフルエンザA(H1N1)pdm09に対して54.5%(95%信頼区間41.6-64.5)、インフルエンザB型に対して54.2%(95%信頼区間33.1-68.6)だった。
 全体として、ワクチンの有効率は52.4%でした。ウイルスの型ごとに計算すると、A(H1N1)pdm09に対しては54.5%で、インフルエンザB型に対しては、型の不一致があったにもかかわらず、54.2%の有効率でした。

◇ インフルエンザワクチンは外れても効果はある
 インフルエンザは毎年違った型が流行します。ワクチンはその年に流行するウイルスの型を予測して作られますが、予測が外れることもあります。ワクチンとウイルスの型が一致しないときは、予防効果が低くなります。
 しかし、この研究でも報告されているとおり、型が一致しなくても予防効果がまったくないわけではありません。
 2016年の日本では、10月から学級閉鎖が一部の学校で行われるなど、すでにインフルエンザの流行が話題になっています。ワクチンを打ってから免疫がつくまでに数週間かかるのですが、流行が始まってから打ってもある程度の効果は期待できます。
 まだ今年のインフルエンザワクチンを打っていない方は、今からでもぜひ検討してください。


<参照文献>
Effectiveness of seasonal influenza vaccine for adults and children in preventing laboratory-confirmedinfluenza in primary care in the United Kingdom: 2015/16 end-of-season results.
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