観てもいない映画について少しご紹介することを許していただきたい。若きドキュメンタリスト・森内康博監督の新作『二十歳の無言館』という映画がある。実は先ほど東京・明大前での上映会が終わり、ものの見事に仕事と稽古にかちあって機会を逃したが、友人から、行けましたよ、いゃあもうかなりのもんですヨ、という電話があって唇を噛んだ。やっぱり良かったのか、と。映画の詳細は予告編をぜひご覧いただきたいが、このような静かな強いメッセージは森内監督の佇まいそのものでもあるように想像する。越後妻有トリエンナーレ、いちはらアートミックス、長崎原爆70年忌公演、その3度にわたって踊りを撮影して下さった方でもある。援助者への御礼/報告として作成されたDVDを観ても正直魅了された。撮影も編集も丁寧かつ鋭く冷めて温かい。準備作業や会話の断片が淡々と積み重ねられて本番の様子に自然に流れてゆくのだが、僕らが何者で一体何をしていたのか、それがリアルに解るのだった。森内さんの印象は、いつも静かで、しかしいつも撮り続けている人、という感じだ。現場に入ると、もう撮影している。熱も作業も、夜も朝も、本番もお喋りも焦りも、とにかく僕らリズムそのものを淡々と撮影している。だから森内さんの映像を見ると、撮影された僕らがどれほどのものか、えらくクリアにバレてしまう。持ち上げず、批判せず、ひたすら客観的だ。カメラが感覚器官の一つになっているのだろうか、カラダで撮る。影法師みたいにカメラがいつも回っているのだが、森内さん自身は不思議なことに撮影しながら結構いろいろ手伝ってくれたりアドバイスしてくれたりさえしている。御飯も食べるし酒も呑んでいる。しかしカメラは回っている。冷徹な視線でありながらインサイダーとしても居る、という不思議な居方が出来てしまう、静かな人だ。そんな人柄が作品の予告編からも、ふと香る。『二十歳の無言館』は、戦争を知らない現代の若者が戦争を生きた過去の若者の魂に触れる瞬間を描いた作品かと想像する。いつも魂を見つめようとしているような誠実を僕は森内監督に撮影されながら感じていて、観たいのに観れていないまま、森内さんが紡ぐ映像世界を夢想している。次の上映を待っている。
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