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肝炎訴訟に関する雑考~7(追記あり)

2007年10月24日 10時05分51秒 | 社会全般
これまで肝炎の要因とか過去の歴史みたいなものを見てきましたが、もうちょっと続けてみようと思います。

asahicom:肝炎訴訟原告「治療機会奪われた」 薬害肝炎告知なし - 暮らし


投与事実を認めない、というのを国が主張していたらしい。この前企業弁護士は酷いと書いてしまいましたが、間違っていました。申し訳ありません。どうやら「国の顧問弁護士」(笑、法務省の人?)が「投与した証拠がないじゃないか」みたいに言っていたようだ。これは原告側が怒るのは当たり前。本当に酷いよ。こんなことを言うから「誠意を見せろ」(笑)って怒鳴られるんじゃないか。投与事実について争うとか、感染可能性について争うというのは、意味がないのは明白じゃないですか。ごく「普通の感覚」の持ち主であれば、何が問題となるのか(感染成立となる要因とは何か、それが証明可能なのか)というのは、直ぐに判りそうなものなのに、「裁判のテクニック」というものに囚われているからこそ、こうなってしまうのだよ。現時点で何かの情報を隠す意味なんて全くないじゃないか。きちんと出すのは当然。


1)製薬会社の問題

製造責任ということにおいては、一番責任があるのは確かだ。だが、企業側は国の定めた手続に則って製造販売しているわけで、好き勝手に市場に出してきたわけではない。法規を守っているという点では、違法性を問うのは難しいと思う。「製薬会社が製造を止めれば被害を生じなかった」ということと、「製薬会社が○○治療薬をもっとたくさん製造してくれればもっと助けられた」というのは、根本部分において同じなのだ。

87年青森の感染発覚後、非加熱製剤は回収され、5月以降には加熱製剤に切り替えられた。一応製薬会社は対応を取っていたということだ(これが感染防止に効果があったとは言えないのだけれども)。6月には先天性疾患のみの適応とすることが再評価調査会で提示された(産科団体からは厚生省に「後天性疾患」を残すように要望されたようだ)。この時点で感染源を特定することは極めて難しかったであろう。

HCV抗体スクリーニングが導入されるまでには時間を要したこと、新製品(SD処理製剤)の承認までに時間がかかること(臨床試験等審査を経ないと医薬品としての承認がおりない)、などがあって、先天性低フィブリノゲン血症などの先天性疾患がある限り、リスクがあっても旧製品を供給せねばならなかったであろう。

問題が明るみに出てからは、旧ミドリ十字が消え、「製薬業界再編の波」などもあって、当該製品についての系統的知識・記憶のある人々はほぼ消えてしまっていたころだろう。そのことも情報が企業内に残されていた、ということの認識を稀薄にさせていたのではないかと思う。


2)国の責任

02年の報告書で殆どは網羅されていたのだろうと思われる。当時の担当者たちが情報を隠蔽しようとしていた、ということは考え難いと思う。何度も指摘しているが、「報道発表資料」に症例一覧の一部が公開されていた。企業側からの報告が上がってきていたことも、文書中で明確に記されていた。ただ、「自分が今やっている仕事」ということしか、担当者には判らなかったのではないかと思う。それは、情報が系統だっていなくて、バラバラに存在していた、ということ。担当者たちは、個々に自分のやるべき仕事の範囲でしか、情報を見ていないし考えてもいなかったのだろうと思うのですよ。要するに、隣の部署のやってる領域までには目が届かず頭も回らない、ということ。薬品関連の担当部署はいくつにも分かれていたりするだろうし、縦割りの弊害というものが如実に顕れてしまったのではなかろうか。

情報を持ってない、というのは、「その人」から見れば自分が持ってなければ「ない」と言ってしまう、ということ。でも、他の誰かは持っていたかもしれないし、「倉庫に眠っていた」(笑)ということにも気付かないというのは十分有り得る話ではないかと思う。そういう時、誰かが「アレ?昔○○みたいな調査をやっていたはずだ」というような、ヨソの領域の仕事とか情報にも目配りできるような人が必要、ってことですよ。私でさえ、公開文書を探していけば、いくつかの情報の存在が判るのですから、他の人たちでも可能なはずなんですよ。これを厚生大臣や国会議員たちがやらねば、或いはマスメディアの人たちがやらねば、誰がやるのですか?一般国民がやっていくというのを期待するのは難しいと思う。菅さんも、かつて第9因子製剤の問題をやっていたのだから、その時点でも80年代後期のC型肝炎の話を知ることはいくらでもできたはずです。野党議員たちの中にも、医師免許を持っている人たちはたくさんいるのだから、そういう人たちは誰よりもそういった問題があるということを知っていてもおかしくはなかった。要するに、彼らは自分たちに利益になることだけ考えていただけじゃないか。

国は87年調査後、非加熱製剤は回収・加熱製剤に切り替えさせた。加熱製剤での肝炎報告後の88年には緊急安全情報を出した。93年にSD処理剤に切り替えということになった。なので、全く何もしていなかったわけではないだろう。こうした古い時代の話を02年時点での人たちが、どの程度理解し把握できたかは不明だ。リストの存在を隠したのかどうかも判らない。でも、保身とか事なかれ主義的な部分はあったかもしれないし、情報を統合できていなかった面があったことは否めない。担当者たちが「責任を取れない」というのであれば、大臣がとってやるべきであったろう。せめて大臣には正直に言えるようになってないと駄目だ。企業でも、不都合な情報を上に伝えられるようになっていないと、現場で隠そうとして問題が余計に大きくなってしまうだけだ。特に、国会答弁なんかで「リストはありません」みたいに一度でも言ってしまうと(防衛庁の給油量隠蔽の話ではないけれど)、引っ込みがつかなくなる、ということなんだろう(笑)。


続きです。

3)医療機関の責任

直接的な投与責任は医師にある。医師は製剤中の危険性について十分認識できたか否かは判らない。少なくとも、87年の発覚後にならないとフィブリノゲンの危険性については、半信半疑という面はあったのではないかと思う。それは、肝炎の感染源を特定することが難しかったからだろう。要因が余りに多いのだ。輸血後肝炎というものが高頻度で発生していたし、急性化する肝炎患者もそれなりに多かっただろう。そういうのを知っていたが為に、肝炎そのものがさほど珍しい疾患でもなく、多くの成人においては軽快していたことも危険性について軽視していた部分はあったのかもしれない。その後に情報が増えていくに従い、どうやら肝ガンの多くの部分においてC型肝炎があるようだ、ということが判っていっただろう。HCVキャリアの人々が高齢になってきて、段々と肝硬変や肝ガンの症例が増加してきたので、そういうことが判るようになってきた、ということだ。

87年頃にそういった危険性みたいなものは、はっきりと判っていなかった。
言えることは、他の外科系の領域に比べて産科での使用例が際立って多い、ということはあるだろう。何故産科で多いのか、ということの理由は明確ではない。本来的には、投与した医療機関にそうした責任がある、ということは言えるだろう。心臓血管外科などでのフィブリン糊使用ということもあったことはあったが、投与量が少ない、投与症例数が少ない、ということで、感染例は静注用のものよりかなり少ないであろう。フィブリノゲン製剤の感染リスクが判っていて、それでも投与していたのは医療機関であり、88年の緊急安全情報だってあったし、製品回収に伴う業者側の説明も当然あったはずであろう。なので、医療機関側では感染が有り得るものである、ということは認識されていたであろう。

90年代以降になってくると血液検査でHCV抗体検査が可能になっていったので、術前検査で判明しているものもあったであろう。その際にどの程度の告知が行われていたかは不明である。製薬会社が入手した肝炎発症例のリストは基本的に医療機関での判明例なので、HCV抗体検査が可能になって以降であれば医療機関において告知すべきものだろうと思う。ただし、そこでは「投与されたフィブリノゲンが原因だった」などと断定して説明することなど不可能である。輸血・手術の既往のない症例であってもHCVキャリアに遭遇することは珍しくはなく、男性(出産やそれに伴うフィブリノゲン製剤投与がない)であってもごく普通に存在していた。女性の方が圧倒的に多くキャリアになっているわけではないのである。

恐らく知識や経験が豊富で因果関係の推定により慎重な医師であるほど、「感染源はフィブリノゲン製剤です」などと軽はずみな説明をしたりはしないであろう。これをもって「告知されていなかった、説明はなかった」というような誤った受け止め方をされるのも困るのである。手術の際に、使用する麻酔薬とか鎮痛剤とか緊急薬剤とかありとあらゆる薬剤を「これとあれとそれと…」みたいに全部説明しておいて、患者に使用許可をとったりせねばならないとすれば、薬学関係の教科書みたいなものを渡して、自分たちで全て読んでもらって理解してもらい、患者が使ってよいという薬剤を選択してもらえない限り、どんな薬剤でも使えなくなってしまいますね。そういう制度にしたいという薬害追放を目指す人々もいると思うので、希望に適うように運動でもやることをお勧めします。自分たちで「天然素材だけでできてる”体にいい”お薬」というような、患者のためになる使用可能な薬剤一覧みたいなものを作ってくれることでしょう。
「勝手に使われた、知らないうちに投与された」という言い分は、どんな薬剤にでも通用しますから。


4)マスメディアの責任

報道する側の人たちの中で、02年報告までに出された報道発表資料をいくらでも知りえる立場にあったのに、「私が報道資料を隠蔽していました」乃至「報道資料にあったのに見落としていました」という反省の弁とかお詫びや患者団体への謝罪を見たことは一度もありません。それは何故でしょうか?「情報を知らなかった、あることに気付きませんでした」というのは、どの程度であれば許されるのでしょうか?省庁側発表の場にいながら、それらの中に有用な情報があることを見逃していた過失を問われないのは何故なのでしょうか?要するに、常に自分たちが優位に立てる「追及する側」に回っているだけならば、失敗とか過失を問われることが一切ないのでラクですもんね。誰からも責任追及されずに済むから。結果を問われないから。撃たれる心配のない所で、自分がタマを撃ち続ければいいだけだからね。こうした姿勢の片棒を担いでいるのは、国会議員たち(特に野党側)の中にいる「医師免許を持つ連中」なのだよ。

今朝テレビで辛坊さんが「94年まで製剤が投与されていた」みたいに言ってたけれども、こういう断片的な報道姿勢というものがどれ程の誤解を招き、情報混乱をもたらしているのか、ということを考慮するべきであろう。簡単に一言で「投与されていた」と言うが、フィブリノゲン製剤のタイプでは、非加熱製剤などではなく加熱製剤に切り替えられていた可能性が高いし、既に「HCV抗体検査」を経た供血で製造されていれば「HCV陽性血は事前に除外されている」ということを意味するのですよ。それらについて、何か調べたり考えたりしましたか?未だに完璧な検査などない、って言ってるのに、まだ判ってませんね。そうした検査をすり抜けた血液かもしれず、そうであるとHCV検査をしてるにも関わらず感染可能性は残されてしまうのですよ。

自分たちがよく判りもしないことについて、断片情報だけで安易に報道するのは慎むべきだ。やるなら、じっくりとやって欲しい。正しい考え方、正しい情報に基づいて、大きな誤解を招くのを防ぐようにするべきだ。読売の戦争責任シリーズみたいに、時間とか労力をかけてやらないと、「フィブリノゲン製剤が原因だ」という短絡的な結論に直結してしまうのです。本当に困るのは、誤った知識や医療への誤解が増えることなのです。正しい情報提供こそ、問題を抱えている大勢の患者さんたちが救われることになるのですから。


話は飛びますが、こういう大間違いの意見が流通するようになってしまうのですよ。

はてなブックマーク - ミドリ十字の会見が酷すぎる -novtan別館

(記事を引用)

厚生労働省も悪い。いずれにしても、今そこにいつ発症するかも知れない人たちがいて、しかも、血液製剤の薬害であることがもう既にわかっているから隠蔽することなど何もない、あるとすれば補償金の問題ぐらいだけれども、会社の規模から言っても社会的な責任から言っても、隠すことなど何もない、状態で、何がプライバシーに配慮するのが非常に難しい、だ。難しいのは隠してたのが発覚したときのお前の立場だろう。そして、案の定ばれるわけだ。ちゃんと初めから言っておけばよいものを。これで手遅れな人が見つかったら刺されてもおかしくない。

ずっと昔からそうだけれども、薬害を隠し通そうとする会社には暗い影が付きまとっている。もしかしたら霞ヶ関の呪いというか操り糸なのかもしれないけれども。

プライバシーへの配慮にしても、別に新聞に実名を公表しろってわけでもあるまい。厚生労働省に渡して、しかるべく、処理してもらえばよい。まあそのしかるべき処置が倉庫に放り込むではどうしようもないのだけれども、渡してはい終わりって思うメンタルが既にして当事者意識の欠如を物語っている。

結局のところ、人の命なんてものは、会社の経営にとっては瑣末なものにすぎないのだろう。500人にも満たないなら尚更だ。人の命の全てに責任を持ってやっていくのは難しい。製薬会社として。それはわかる。けれども、明らかに、原因がはっきりしていて、自分たちの責任でいくらかでも救いになることが目の前にあるのに、それを放棄して、しかたがない、と言うことが出来る会社が、人の命を救うためのものを作っていると言う倫理的矛盾。人の命が確率的な数値化をされている日常において、感覚が麻痺しているのかも知れないけれども、だからと言って、その重大性を軽視していいということにはならない。

◇◇


『血液製剤の薬害』とか『原因がはっきりしている』みたいに、短絡的意見に飛びつくとこういう意見を言う人が出てくるわけです。恐らく報道からしか見てないので、報道側が誤った情報提供で誘導するとこうなる、という見本ですな。リストの全員がフィブリノゲン製剤で感染したかどうかなんて判りませんよ?それに、何度も言うがリストに載ってるのは「肝炎症状が出た人」か「HCV陽性」ということが判った人が捕捉されていただろうから、製薬会社に情報が来ている時点で、患者は肝炎既往であるということを医療機関側から聞かされる可能性は高いはずでしょう。知らないことが多いのは、「フィブリノゲンを投与された」ということなのではありませんか?

リストの人に告知するのを実行したとして、製薬会社が全ての患者についての責任を負うものとも考えられないでしょう。
「あなたにはフィブリノゲンが投与されました」という事実が「C型肝炎に感染しています」という事実に直結したりはしないからです。



上に挙げた朝日新聞の記事にあった原告団の方々であっても、感染源は不明点があるかもしれません。

『86年の出産時、東海地方の産婦人科医院で、止血剤として旧ミドリ十字の血液製剤「フィブリノゲン」を投与され、急性肝炎を発症した。だが、弁護団によると、肝硬変や肝がんに進行する恐れについて、医師は何も言わなかった。女性は「峠を越えれば治る」と思っていたという。』

→フィブリノゲンが感染源である可能性は高いかもしれない。が、本人が既にキャリアであった可能性は残っている。出産後どの時点で発症したか不明だが、その時の「急性肝炎」に対する知見は大体が治るものと思われていたかもしれない。急性肝炎既往で、肝硬変進展の可能性というのはあまり判らなかったであろうということ。出産時にフィブリノゲン製剤を投与され、その数日後とかに発症なら「製剤が感染源」というのは考え難いかもしれない。潜伏期間みたいなのが大体あるので、数週間経過することが多いであろう。でも、元々のHCVキャリアであったなら、出産後直ぐに発症というのは有り得るかもしれない。


『東京訴訟原告の浅倉美津子さん(56)は88年にフィブリノゲンを投与された。当時、医師からは「原因不明の肝炎」と言われ、血液製剤を使ったことも告げられなかった。弁護団に相談する02年まで「病気は自分のせい」と思い続けてきた。』

→医師の言った、原因不明なのはその通りだと思う。けれど、後天性の低フィブリノゲン血症を理由として、88年時点で投与されたのだろうか?先天性原因以外では用いられなくなっていたのではなかろうか?という疑問は残る。投与責任は医師にあるだろう。肝炎発症の可能性は理解されていただろう。
使った薬剤の全てを知らせるというのは、上に書いた通り。普通は困難だ。



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