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市立札幌病院事件7

2005年01月05日 23時46分34秒 | 法と医療
2002年9月には、厚生労働省医政局医事課長が証人として出廷しました。

絶対的医行為であるとされた気管内挿管、静脈路確保、カテーテル抜去や腹部触診等は「高度な医学的知識が必要で、医師法違反にあたる」と証言する一方、口腔外科に関わる治療の一部であれば「歯科医行為でもありうる」と明言した。「歯科医師は口腔を診ればよい」との意見や、同様の研修が全国的に行われていたことについては「報告もなかったし、想定していなかった」との見解を示した。

また、歯科の患者の容態が急変した場合などについては「歯科医師は救急処置をすることは義務ではない」と断言したとされる(裁判長は「本当に義務ではないのですか」と聞き返したそうだ)。以前の判例とは明らかに矛盾する証言を述べている(義務がないなら、以前の判例のごとく歯科医師が法的責任を負うことはなかったはずである)。

課長は東大医学部卒の医師であるらしいが、松原医師の起訴後には先の判例を指摘されて知っていたはずだ。それにもかかわらず、「自説を曲げない」頑強な態度を変えようとはしていない。また、法的解釈はいわゆる「彼の専門外」のことであろうと思う。

弁護側から歯科医師が行ってきた「医科での麻酔科研修と救急研修に差がない」ことについて質問されると、「質問の意味がわからない」と単なる逃げの答弁をしたようだ。彼の説では、どこで研修するかに関係なく、行為を伴えば違法である。しかも研修範囲については「見学だけでよい」との証言をしている。

医師の答弁とは到底考えられないものである。「見て」出来るようになるのであれば、医師の救急や麻酔科での研修など必要ない。医学生は全員が見てきていることなのだから。バカな答弁としか言いようがない。すべての手術も同様だ。見るだけで誰でも手術が出来ると考えているようだ(課長は外科が専門だったらしいが)。

ある医師は、「見ただけで気管内挿管やカテーテル留置が出来るなんて妄想だ。国家試験に合格したばかりの医師は、採血や点滴すらまともに出来ないし、一般的な看護師以下の実力しかない。実技は見ているだけではいつまでたっても上手くならない。」と言っていました(伝聞ですから、絶対的な評価ではありませんので)。


現実には、この課長証言の約1年後には前に書いた救急研修のガイドラインが通知された。結局のところ、行政の態度はこのような安易な責任のないものであるということが、はっきりと示されたと思う。


裁判での重要点は、
・研修を目的とした医療行為は「医業」に該当するか
・直接歯科医師に指示等をしていない松原医師が共同正犯となるか
・可罰的違法性は阻却されるか
などである。


検察側の「人員不足を補う目的でレジデント受け入れを独断で決定した」という主張は、ほぼ否定的で立証されませんでした。また「共謀して」歯科医師に医行為を行わせたという点についても明確に証明されなかったようです。唯一明らかとなったのは、「歯科医師が医療行為を行った」ことだけでしょう。検察側主張はほとんどが立証されたとは言えないような裁判だったと思います。検察官が描いた「絵」は誤りだらけであったと言えるでしょう(検察側の起訴についての判断が杜撰であったとしかいいようがないように思います)。


また、論告求刑では、「悪質な確信犯的犯行で常習性が顕著、反省の情がなく再犯のおそれも高い、医療現場を政治的プロパガンダの場としている」などの意図的な被告人への非難を述べています。

普通に考えて、医科麻酔科での研修と大差ない実技を伴う救急研修目的の歯科医師を受け入れ、彼らに知識や手技を教える機会と場を設けたことが違法行為であったと起訴されたのですが、そのことが「悪質な確信犯で常習性顕著」とか「政治的プロパガンダ」などと非難されるのは如何なものでしょう。「悪質」「常習性」「プロパガンダ」は、裁判のどこから立証されたのでしょう。単に検察官がそう思っているということであって、論理的に証明された内容とは思えません。言葉の操作や悪口作文を裁判に期待しているわけではないのです。ネット上の「悪質な書き込み」と大差ありませんね(個人的な印象ですが)。

これらを勘案して求刑は「罰金6万円」が相当と考えたのでしょう。これほどの「悪人」ならばもっと重い刑を求刑するんでは?「悪質」で「再犯の可能性」が高く、「反省の情」も見られないのに?一般人の感想としては、検察官の言っていることは一貫性がないように思う。「罰金2万円」を持ちかけた挙句、「大悪人」なみの修辞を並べ立て、その結果が「罰金6万円」の求刑とは?プロパガンダに仕立てたのは、厚生労働省と検察官自身なのでは?との疑念さえ生じる。交通違反の罰金なみに安いし、酒気帯び運転の罰金よりは安いでしょ?専門外なのでよくわかりませんが、形式的作文を裁判で披露する必要もないし、「大悪人」のイメージを裁判官や傍聴人に広める必要もないでしょ?裁判ってこのようなことが普通なのでしょうか。


ガイドラインが通知される約半年前に、札幌地裁から判決が出されました。果たして判決はどのようなものであったのか。この判決が研修における医療行為の範囲についての司法判断になりますから、非常に重要な意味を持つのです。次に書いてみます。


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