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「アニマル・スピリット」とは何か~バブル現象について

2007年10月01日 13時08分13秒 | 経済関連
前の続きです(お読みになってない方は、前からお読み下さい)。
いい国作ろう!「怒りのぶろぐ」 「アニマル・スピリット」とは何か?


前回予告した通り、今度はバブル現象について考えてみたいと思います。
前の記事で幾つか勝手な仮説を考えてみましたが、これらの複合的な現象なのではなかろうか、というのが私の推測です。仮説2と3のような、「周囲の人たちが勝っている」という情報が多いということです。賭けに参加している子の保有しているチップの枚数が多い人が何人もいる、各ターンでの子の賭けているチップは少なくなく、勝利している子の割合が多い(=親が弱いモードになっている?)、連勝が多い、などが観察される、というような状況でしょうか。更に、重要になってくるのは「同期性」ということです。これは以前にも書いたことがあります。

続・情報とは何か?(追記後)

バブルというのは、まさしくこのhype曲線と似たような状態が発生する、ということです。同期しているのは、賭けに参加してくる子ということです。神経線維のインパルスでも似たような電位変化が見られます。心電図でもいいです。これらはhype曲線と似た形状をしている、ということなのです。「勝ち」「チップがザクザク」みたいな情報が増えていくに従い、遂にはバブル発生となるのではないかな、と。


また実験を考えてみます。
今、ゲームに参加している子が20人いるとします。この様子を見ている別な見学者が100人です。この見学者は自分が参加を宣言すれば、好きなときにいつでもゲームに参加できるものとします(持っているチップは同じく1000枚とします)。また、賭けられるチップに枚数制限はないものとします(前の記事では上限を100枚としていました)。見学者が参加する場合には、カードが配られる前にベットする枚数を宣言して賭けるものとします。また、ゲームに参加して止めたいと思った時点で、終了を宣言すれば止められるものとしましょう。

初めのうちは、通常通りの確率でゲームが進行します。すると、子の20人は適度に勝ったり負けたりしているでしょう。で、ある時点から親の強さを弱い設定としますと、子の勝つ確率は上がります。チップを多く保有する子の割合が増えていくということです。特に、2人だけに「もの凄くラッキー」な目を仕込んでおいて、1000枚で始めたチップが1500枚とか2000枚になるようにすると、恐らく見学者の中から自分も参加したい、と宣言する者が現れてくるでしょう。勝ってる人間がいる、という情報は、見学者たちの「spirit」を刺激するのです(笑)。でも、まだその刺激情報は弱い。hype曲線では立ち上がり部分くらいでしょうか。

その後に、親の弱さにみんなが気付き始めます。連勝する者たちが多く現れたりするようになります。子の持ってるチップも多くが増加しているはずです。すると、見学者たちは自分も賭けたいと思うようになり、続々参入してくることになるでしょう。sensitizationのような変化を生じていけば、「勝ち」情報が繰り返し積み重なって、刺激強度を増す、というようなことになるのではないかな。例えば7~8割の人が連戦連勝していると、残っていた参加者たちの多くが「私も賭ける」と宣言するのではないだろうか、ということです。同期性は、参加表明が最大人数になった時か、各ターンで賭けられたチップの量が最大になった時、ということになるでしょうか。それが、hype曲線のピークに達する時、ということです。こうした状況が生じると、自分に配られたカードの目が悪い(例えば4とか5とか)にも関わらず、「勝つのではないか」という錯覚を抱くようになってしまうのではないかな、と。ま、親を人為的に弱くしておくわけですから、勝つ確率は高まるのは当然なのですが、それが続くかどうかを見極めるのは容易ではありません(基本的には判らないでしょう)。

そうして参加者が最大に達した後で、親を強くしてみます。すると、それまでは6とか7の札なんかで何度も勝っていたのに、今度は中々勝てなくなります。パスする人の数が増えていったりするかもしれませんし、諦めずに「また勝つはずだ」と思って賭け続ける人たちもいるかもしれません。でも、親が強いので負ける人たちはどんどん多くなるでしょう。止める人の数も増えてくるかもしれません。ある時点を過ぎてしまうと、賭けられているチップの数は急速に減少していくことになるでしょう。参加している人の数もかなり減っているでしょう。これがバブルの終焉ということかな、と。

要は、「勝っている人」を見ていると射幸心が煽られてしまう、みたいなことかと思います。(リスクを冒して)賭けに参加したい・投資したい、という人が増えてくる、ということです。これこそが、ケインズがアニマル・スピリットと呼んだ人間の本性のようなものなのではないでしょうか。通常の取引環境であれば、勝つ人もいますけれども負ける人もそれなりにいるので、そんなにみんなが参加しようとは考えないのですが、「勝つ人の割合増加」や「保有資産(=チップの枚数)増加」という方向に大きく偏ると、参加者もしくは賭けられるチップ量が爆発的に増加し、そういう同期性が高まった時が「バブル発生」期なのではなかろうか、と。この状況下では、自分に配られたカードが多分「過大に評価される」ということも起こるでしょう。同じ10のカードであっても、連敗期間中と連勝期間中の受ける感じというものが異なる、ということです。「ひょっとして親はAを引くのではないだろうか」みたいな怖さを抱く場合と、楽観的にきっと勝つだろうと考える場合があるのではないかな、と思うのです。これがもっと悪いカードで4とか5でも同じで、これで勝つ確率は低いハズなんですが、連勝期間中であれば「何となく勝てそうな気もする」みたいになってしまう、ということですね。


バブルの崩壊過程はhype曲線の下降部分のようであり、大幅な投資抑制が生じるということになります。多くの参加者たちにとっては、回避するべき事態となり、株でも土地でも「誰も買いたがらない」みたいな状態となってしまう、ということになります。資産(株とか土地とか)価値が毎ターン減少していくのと同じなので、持ってるチップの価値も下がっていくためにダブルパンチを食らったようなことになるでしょう。賭ければ負ける、持っていても価値は下がる、ではどうにもしようがありませんもんね。後は、「降りる」しかないということです。

日本の過去の状況というのは、みんなが一斉に「降りる」ということを選択してしまい、これを回復させることをしなかったので、ITバブル期以降に最悪のどん底を迎えることになったのです。00年頃に降りる人々を支えることができたのであれば、大きな脱出チャンスになったかもしれないのです。

もしチップを賭けても親が強いモードであれば単にチップを失ってしまうだけかもしれないので、それが「無駄遣いだ」という批判はあるかもしれませんが、その後に失われたものとか受けた損失の大きさを考えれば、何としても脱出するということがまず必要であったでしょう。誰も賭けない時には、誰かが賭ける以外にないのですから。ゲームに参加しない限り、決してチップが増えるということはないのですから。「勝ち」情報を誰かがもたらさねばならなかった。みんなに「勝てるんだ」ということを広く知らしめることが必要だったのです。


今は「○○が値上がりしました」というのがニュースになっている時代です。これも、本来的にはニュースにするほどのことでもない、という風になっていないとダメなんですよね(原油は仕方がないかも)。値上がりがニュースになることこそ、日本人は未だにデフレの闇の中で迷妄状態、ということなんですよ。値下がり期待だけが世の中に蔓延し、「値上げは悪だ」という昔の消費者運動みたいな錯誤がある限り、賃金が上がらないという結果を自ら招いているようなものです。




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