いい国作ろう!「怒りのぶろぐ」

オール人力狙撃システム試作機

貸金業の上限金利問題~その11(追記後)

2006年05月05日 23時58分30秒 | 社会全般
昨日の「風呂オケ」モデル(と、また勝手なネーミングをしてしまいますが)の続きを書いてみたいと思います。以下では、「蛇口1」と書くと「蛇口1から注水される水量」、「ポンプ1」と書くと「ポンプ1から排水される水量」ということを意味するものとします。


借金がない場合には、蛇口1とポンプ1しか存在しない為に、容器の水量を変えるのは、この両者ということになります。仮に住宅ローンを設定して、ポンプ2が設置されるとしますと、この排出能力は元利均等返済であれば、定数項です。時間経過によって、この量が変わるということはないですね。前の記事に書いたように、借金というのは殆どが機械的に数値が決まります(変動金利のような場合を除いて)。ですので、「ライフイベントが説明要因である」、ということは当然なのです。他は変わりようがないのですから。蛇口1を変動させるか、ポンプ1を変動させない限り、容器内の水量の可変要因はないですね。これは、借金を重ねてポンプがいくつか設置されたとしても、ほぼ同じようなものです。つまり、借金をして、ポンプが設置されてしまえば、その後そのポンプの性能には変化はないですね。


ですので、蛇口1が変化する、ポンプ1が変化する、ということは余りに当たり前です(笑)。「薬剤の効果は、個体差がある」というのと同じだ、と言っているのです。金利上限引下げ問題では、蛇口1やポンプ1の部分に対して政策目標を定めるのではないので、検討するべき要因としては、やや外れているのではないのかな、と思います。


以前の記事(その6)にも書きましたが、一般的に消費者金融からの借入を行う層というのは、セーフティ・マージンが狭い層であると想定されます。「風呂オケ」モデルで言うと、常に容器内に残っている水の量が少ない、ということです。これは短期的な変動に対して、空になりやすい(予備的能力が低い、緩衝能力が低い)、ということになると思います。風呂オケに水がいつも大体100残っている人と、5しか残っていない人では、(蛇口1又はポンプ1の)同じ確率の変動幅であっても、「空になるリスク」が異なる、ということです。


収入の絶対額は重要な要素ですが、もっと重視するべきは、絶対水準の収入額ではないと思います。以前の記事に書いた式を再掲してみます。

収入=基礎代謝+自由支出

「基礎代謝」とは生活環境維持の為の必要最低限の支出と考えました。投資(預貯金を含め)がゼロである時、収入と支出は同じになりますが、支出が少なければ手元現金を残す(=容器内の水を増やす)こともありますね。住宅ローンを除く「基礎代謝」を「B」と表わすことにします(住宅ローンがある場合には、ポンプが別に設置されますが、返済費自体は賃貸住宅の賃料と同じ意味合いであるとも考えられます。ですので、自己所有マンションや持家等の住宅ローンがある場合というのは、ちょっと考え方が異なる面があると思います)。

とりあえず、次のように表わすものとします。

元々容器に残っていた量=V0
次の期初に容器に残っている量=V1
蛇口1(収入)=I
基礎代謝=B
自由支出=F
住宅ローン=b

とすれば、

ポンプ1(支出)=B+F
ポンプ2(住宅ローン)=b

V1=V0+I -(B+F)-b ・・・(b)

変形すると

V1-V0=I -(B+F)-b  ・・・(c)

となります。

残っている水が増加する場合(V1-V0≧0、例えば、1ヵ月の収支がプラスということ)には、蛇口1よりも支出全部(ポンプ1+ポンプ2)が少ないということになります。すなわち、

I ≧(B+F)+b ・・・(d)

です。ここで、B及び b は通常では必須的支出ですので、減額が非常に難しい、という部分です。(d)式を変形すると、

I -(B+b)≧F ・・・(e)

収支がゼロであれば、等号が成立します。逆に、支出超過であれば、不等号の向きは逆向きとなり、その場合には残る水量がV0よりも小さくなる、ということです。

収支変動に対する対応能力を「予備的能力」と呼ぶことにします。これは、手持ち現金が多ければ、突然の出費に対しても借入なしで対応できる、ということで、「予備的能力が高い」とします。手元資金に100万円、毎月収支がゼロで、翌月だけ急に50万円増の出費となっても対応可能、ということですね。しかし、手元資金が少ない場合は、このような出費に対応できないので「予備的能力が低い」ということになります。上の式に従って言えば、「V0が小さい」ということになります。

また、毎月の収支のうち、必須的支出以外の部分が少ないと対応能力は低くなります。これは「Fが小さい」ということです。毎月の収入が20万円、必須的支出が10万円の人と、収入が30万円、必須的支出が25万円の人では、前者の方が予備的能力が高く、後者の方が低い、ということです。収入の絶対額よりも、差額の方が重要と思います。従って、収支変動に対する「予備的能力」が低い場合というのは、

・V0が小さい
・Fが小さい

ということになります。「予備的能力」が低いと借金をする可能性が高くなります。また借金を新たに行った場合、返済に回せる額は、Fの大きさにかなり依存します。ですので、多重債務者では、既にF の分から返済に回されている部分があるため、さらに収支変動への「予備的能力」は低下していて、ささいな収支変動を生じても借金をしないと空になってしまう可能性が高くなると思われます。


家計調査などで、V0やFを超えるような短期的変動(突発的支出の発生確率)が予測できているといいのですが。例えば、「1年間のうち、10万円を超える臨時支出の発生確率」のような。これが、「3年間のうち、~」「5年間のうち、~」だと、発生確率はどのように変わるか、とか。


保険市場などでは、これに類するリスク分析が結構行われていると思われ、その結果を利用して商品設計がなされているのではないかと思います。ガン保険のようなのとかそうですよね?多分。「30歳未満での発病率」「50歳以上での発病率」のようなマクロの統計データがないと、保険料設定ができないような気がしますので。




最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (すみす)
2006-05-06 20:09:16
まさくにさんは「風呂オケ」モデルで何を主張なさろうとしているのでしょうか?過去の主張をモデルという形で定式化することが目的であれば、過去の主張のエッセンスというのはきちんと読み手に伝わっているので時間の無駄だからお辞めになった方がいいと思いますよ。



金利が高ければライフタイムイベントの発生や、若干の収入・支出の変動に対して借り手が脆弱になるという主張をその通りだと思います。しかし、金利規制反対派の主張は、1. そうした脆弱な人間が金を借りるべきではない、という点と、2. 業者による不適切な貸し込みで苦しんでいる人々は事後救済で対処すべきであるという点、3. 不適切な貸し込みを抑止する施策をとるべきだという点から反対しているわけです。



消費者金融でも優良顧客で小額の借り入れであれば利息制限法以下の低利で借りられますよ。だから高金利が提示されるということはある程度与信の機能が働いているという主張も観察されるデータでは成り立ちます。大手の消費者金融は収入と借り入れ額、職業、年齢などから破産確率を把握しているはずです。きめ細かなライフタイムイベントに対する確率までは把握していないものの、破産確率をその代替指標と見なしうるものです。



返信する
あらら ()
2006-05-09 14:39:32
わてには難しすぎる・・・。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。