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続・金融調節雑感

2008年11月24日 14時23分02秒 | 経済関連
世界に暗雲が立ち込めている経済状況であるが、今後どうなるかは予断を許さないだろう。
今、政策担当者たちの中にある共通の認識は、金融緩和、財政出動、景気刺激、というようなことであろうと思う。特に酷いショック状態に陥らない為の、積極的な政策が打ち出されている。既に多くの中銀が(たとえば英国の150bp、スイスの100bpといった)英断とも呼べる金利引下げ、流動性供給、更には金融システム安定化策(預金保護、政府保証の追加など)を矢継ぎ早に実施してきた。当然の対応とはいえ、やるべきことをやったと言えるだろう。
今後は、金融システム安定化が進むとともに、マイナス成長のダメージを軽減する策に焦点が移っていくだろう。サルコジではないが、「トラ、トラ、トラ」もとい、「stimuli、stimuli、そして stimuli だ!」というところか。


日本においてはどうなのかといえば、日銀が利下げは「しょうがない」ということで、渋々雀の涙ほどのたった20bpを引き下げただけであった。政府はといえば、枝葉末節の手続関係云々で足踏みし、経済対策の迅速な実行ということにはまるで結びついていない。殆ど機能していない有様である。これだから、海外メディアからも心配されてしまうのである。


中村俊輔が英国で多少活躍しようとも、日本サッカーがそのレベルの強さにあるとは言えない。個々のプレイヤーに優れた人が若干いても、全体のレベルが上がるというわけではないのだ。政策担当者のレベルというのも、これと同じなのだ。
かつて日本はサッカーが弱くて、海外指導者たちをトップに招き入れ、多くを学んできた。そのお陰でサッカー全体がレベルアップしたのだ。これと同じで、日銀というのが日本人トップの日本式でやってきてダメなのであれば、根底から変えるべきはないかとさえ思い始めた。そこまで日銀が変われないのであれば、総裁として外国人を招聘した方がよいのではないか?



これまでに同じようなことを言い続けてきたのだが、また書いてみる。

金融調節の雑感


自律性のある、何かの系に対して調節しようというのは、これは中々大変なことなのだと思います。人体では循環系ということになりますが、この調節にも様々な手法を用いているわけです。

例えば「血圧」という一つの指標・数字だけを見て、効果判定を考えるということは、まずないように思います。
「血圧が下がる効果の薬剤Aを投与したのに、同時に血圧が上がる効果のある薬剤Bを投与するのは、愚かだ」みたいに、一知半解の批判をするような人がいるわけですが、これは殆どの場合には正しいとは言えないと思われます。「血圧」という見かけ上の数値がどう変化するかを考えることができたとしても、十分とは言えない、ということです。

前の記事にも若干触れていますが、複数薬剤を組み合わせるというのはごく普通だ、ということです。
手術中に用いる循環作動薬を、例えば「血圧が上がる薬」と「血圧が下がる薬」を同時に投与してしまう、ということです。ド素人であれば、「何でそんな無駄なことすんだよ、意味ねーじゃん」とか言うかもしれませんが、物事はそうそう単純ではないということでしょうね。

あくまで例示ですけれども、術中に用いる薬剤には、カテコラミン類、ニトログリセリン(TNG)、プロスタグランディンE1(PGE1)、Ca拮抗薬、ATP、PDE-inhibitor、などといったものがあります。これらを1回投与または持続静注することによって、循環動態の安定を図るということですね。

カテコラミン類には、ドーパミン(DOA)、ドブタミン(DOB)、イソプロテレノール(ISP)、ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)、エピネフリン(アドレナリン)などがあります。また、Ca拮抗薬は、ジルチアゼム(DTZ)やベラパミル(VPM)、二カルジピン(NCP)などがよく用いられます。数値として判定するなら、血圧に対しては、DOAは昇圧作用、PGE1は降圧作用、DTZは降圧作用、という風になりますが、これらは同時に用いらても不思議ではないのです。

どうしてそんな面倒なことをするのかといえば、それぞれに薬剤の特性、作用する部位の違いなど、どこにどういう効果が出やすくて、結果としてどんな効果が発揮される(期待される)かというのが異なっている為です。
血圧を上げる、という作用にしても、主に心臓に働くのか血管に働くのか、血管でも割と大きい血管に作用しやすいのかそれとも細い血管に作用しやすいのか、静脈系に作用しやすいか動脈系に作用しやすいか、臓器特異性があるのか、心臓血管に対してはどうか、心筋の酸素需要を増大させるか減少させるか、心拍には増大か減少か、そういったことが、ぞれぞれ異なっているのです。

なので、薬剤のプラス効果部分を発揮させつつ、あまり発現して欲しくない部分は他の薬剤で打ち消しつつ、というような調節が必要になってくる、ということです。血管拡張作用がある、といっても、これだって、容量血管に作用するか抵抗血管に作用するかといった違いがあったりします。冠血管に対する作用も異なるし、虚血の有無でスティール現象が惹起されるものもあります。心筋保護作用の有無などにも違いがあったりします。


要するに、そういったことを色々と考えて「組み合わせ」を行うのであり、単一の切り口(たとえば血圧という数値指標)だけから、効果を打ち消すのはバカだ、みたいに単純には考えたりはしない、ということです。

金融調節はこれに近い感じがあり、「ポリシーミックス」という点においても、複数併用というのはごく当たり前のように思えるのです。薬をどんなに入れても、血液量が半分以下しかなければ根本的な解決にはならないわけで、輸液なり輸血なりが必要でしょう。ボリュームが全然ないのに、薬だけでどうにかしようというのは難しいですよ。逆に、輸液だけやっていれば循環動態は安定するかといえば、全然そんなことはなくて、末梢や心臓の状態に大きく影響を受けてしまうのです。同じお金を使うとしても、中枢に近い銀行に入れるのと末梢である一般個人に入れるのでは、効果発現は異なるでしょう。そういうのと同じようなものです。

中には臓器特異的な反応というものもあるので、そういった特異性があるものかどうかは研究するなり知見から判断するよりないでしょう。DOAは腎に臓器特異性があるので、腎血流を増加させ尿量にはプラスに働きます。また、PDEインヒビターであると、臓器特異性がより明確になるかと思います。これまでにも幾度か取り上げたバイアグラ(シルデナフィル)がそうですが、PDE-Ⅴの特異的阻害作用を持つので、アレに効くということになります。PDE-Ⅲの特異的阻害薬であるミルリノンは、血管拡張作用とともに強心作用を持つものですので、別に術中に「アソコ」が元気になったりはしませんね(笑)。あまり心筋酸素消費量を増加させずに心筋収縮力増強作用が期待され、虚血や心不全状態でも強心作用が状態悪化を招くことがあまりなく、血管拡張作用すなわち末梢血管抵抗の軽減で心負荷軽減が期待されるでしょう。なので、心不全や心臓手術患者において、用いられることがあるのです。カテコラミンのように、レセプターの種類や分布の違いによってα作動・β作動が広範囲に及ぶ薬剤とは、やや異なるのです。


金融政策の上で、こうした作用部位の違いや特異性の度合いなどの違いというものが、一体どれほど考慮されているのでしょうか?
素人目には、そうした効果判定が行われているようには思われません。金利引下げというのは、広範囲に及ぶのでカテコラミンに近いもの(普遍的な作用があちこちに及ぶ)ではないかと感じますが、例えば「為替介入」ということになりますと、より「特異性が増す」というふうに感じるわけです。金融政策ばかりではなく、これに財政政策ということを考えますと、作用部位も変えられますし、好ましくない作用や現象というものも、おのずと異なってくるのではないかと思われます。

こうした循環動態の調節ということを考えますと(全くの適当です)、DOA+DOB+TNGなのか、DOA+PGE1+DTZやDOA+PDEⅢ阻害剤という組なのか、それとも、TNG単剤投与で十分なのか、持続投与ではなくbolus doseでいいのか、そういう視点が経済政策には欠けているようにしか思えないのですね。エフェドリンのbolus投与は無効だ、みたいな、簡単な意見を述べて批判した気になっている人々がいるのは、私には理解できないのですね。単回の減税とか定額給付金というのは、「一時的なもの」なのですから、この単回投与がどういった効果や意味を持つものか、というのを真剣に研究しなければ、良し悪しの判定などできないでしょう。

何故か、「ワンショットで一発入れれば状態は良くなる、でも良くならなかったのだから、一発入れても無効だ・役立たない」みたいに、割と簡単に言える人が大勢いるんですよね。本当に無効なんですかね、って話ですな。たとえ一時しのぎであろうと、必要があれば投与されるし、それで改善しなければ次の1手を打つに決まっているわけですから。エフェドリンをワンショットで入れてから、後でDOA持続に切り替えるくらいなら、「最初からDOA持続にしとけ、エフェドリンは無効だった、DOAじゃないと意味がない」なんて言う人は、かなり少ないのではないかと思えますが。


いずれにせよ、経済については知見が乏しくて、薬理作用や作用機序に該当するような部分については、多くが未知の世界か適当な解説がまかり通っている、ということではないでしょうか。せめて「○○を実施すると、~~が観察される」という事実だけでも、もっと正確に積み上げてもらえないものなんでしょうかね。
「○○を入れると、ネズミは心拍数が50%上昇したのだから、人間も50%上昇する」みたいに豪語する人がいるかもしれませんが、現実にはそういった現象が人間において観察されなければ、いくらネズミの実験例を持ち出しても「○○を入れると50%上昇する」が正しいことにはなりませんから(「ネズミも人間も哺乳類だ、じゃあ人間は哺乳類じゃないというのか!」みたいな反対意見は全く無効ですから。基本的システムが同一であるからといって、結果も同一とは言えませんよ。)。



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