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肝炎訴訟に関する雑考~その8

2007年12月09日 14時16分24秒 | 社会全般
まず、これまでの記事をまとめておきます。

肝炎訴訟に関する雑考~1

肝炎訴訟に関する雑考~2

肝炎訴訟に関する雑考~3(追記あり)

肝炎訴訟に関する雑考~4

肝炎訴訟に関する雑考~5

肝炎訴訟に関する雑考~6

肝炎訴訟に関する雑考~7(追記あり)

B型肝炎訴訟最高裁判決について~精度に疑問あり(一部修正)

B型肝炎訴訟最高裁判決について~集団予防接種は感染を拡大したか?


その後、最高裁判決について、法学関係者の方々とか医療訴訟専門の法曹とか、何かの検討なんかを行ったのですか?評釈は上記参考記事中にもありましたけれども、最高裁判決についての疑義について取り上げたものはなかったと思います。そうであれば、もう一度最高裁判決が言うように「高度の蓋然性」でもって、水平感染の最大要因が集団予防接種による感染なのであって、その他要因については一般論に過ぎず無視できる程度に影響が小さく、B型肝炎感染は母子感染以外では「集団予防接種によるものと推定できる」ということが本当なのかどうかを確かめるべきなのではありませんか?それもできない上に、判決だけ参考にされたり、他の判決文に引用されたりして定着してしまえば、取り返しがつかないでしょう。

母子感染の対策が取られる86年以前からキャリア率(世代人口に占める割合)が減少していったのは、最高裁の考えたストーリーでは不可能だ。簡単な数字(人数みたいなものと思って下さい)で示せば、次のようになる。
(全くの架空の数字ですので。あくまで考えやすくするためだけのものです)

◇昔           ◇後年
母子感染 50      母子感染 50
水平感染 30      水平感染 10
               (減少分 20)

母子感染は効果的対策は取られていなかったので、ほぼ100%で感染が成立しキャリアとなるのであるなら減少には寄与しない。従って、母子感染以外の水平感染の数が減少したということだ。水平感染のうちどれが、というのは判らないけれども減少したんですよ。集団予防接種によって、水平感染の機会は増加し感染確率が上昇するかもしれないと言えるが、その増加分が1とか2程度の影響であるなら、その他要因による減少分の効果の方が大きい(=集団予防接種によるキャリア増加分を大きく上回って減少させる)ので時代経過と伴にキャリアが減少していくのは整合的となる。つまり、過去のある時点では、集団予防接種の感染確率よりもはるかに大きい影響力を持つ何らかの要因(複数かもしれない)が存在していた、ということになる。その要因とは、栄養状態改善や衛生環境整備や覚醒剤取締強化や輸血や消毒方法の発達などかもしれないが、誰にも正確には判らない。いずれであったか、ということは立証できないけれども、母子感染の減少が殆どないのに日本全体でのキャリア率が減少するということは、水平感染の可能性が減ったということしかないのである。母子感染の可能性が減少することは想定し難いからである。

しかし、最高裁判決では集団予防接種以外の要因については、「一般論に過ぎない」と退けているのである。無視できるほど影響が小さい、感染可能性も無視できる、ということで片付けているのである。これが高度の蓋然性と呼べるのであろうか。

母子感染の予防措置が取られるようになってからは、最も大きな感染要因となっていたであろう母子感染が大幅に減少することになったので、キャリア率は減少したであろう。その効果が大きかったのは、水平感染がその前までの時点でかなり減少していたからだ。故に、近年までの期間ではキャリア率は減少の一途を辿ることになった、と考えるのが普通だろうと思うが。

HIV感染者のように元々存在が極めて少ないのであれば、母子感染がほぼないにも関わらず、水平感染だけで感染は拡大していくし、集団予防接種で感染が拡散するという可能性は殆どゼロに等しいのに(最高裁判決で言うところの一般論であって、その影響は無視できるほどに小さい、ということ)、感染者は増加しているではありませんか。非血友病患者において、そうなのですよ。血液製剤を用いたわけでもなく、輸血を受けたわけでもなく、同性愛者ではない人であっても現実に「感染している」のですよ。そういう感染可能性を否定できる裁判所というのが、信じられない、と言ってるんですよ。それを肯定している人たちも同じだ、ということです。


結局のところ、法学専門家たちや法曹実務家たちが科学的応用力を発揮して考えることなんて、誰もやってないのではありませんか?最高裁判決に対して法曹の中で異議を唱えた方がおられましたか?評釈ではなくても、新聞記事とか雑誌とかの何か論評みたいな形で疑問の意見を出した方がおられたのですか?法曹とか法学関係者が何万人おられるかは知りませんが、そのうちの誰1人として意見を言わなかったのであれば、司法への信頼性が揺らぐと言っているのですよ。判決もダメ、評価する人たちもダメ、ということである時、国民はどうしたらいいんですかね。評釈や批判があるから、判決の評価はできている、信頼性もある、なんてのは、全くの幻想に過ぎないのですよ。たとえ間違いを含むものであっても、権威を持つものが勝つ。そういうことですか。なるほど。

最高裁判決はひっくり返せないことは理解できますよ。一度出してしまった結論を取り下げるわけにもいかず、間違いでした、と最高裁判事たちが認めることもできないでしょう。それはしょうがないですよ。しかし、判決文に対して吟味し、もっと正しく考えられたのではないか、という研究を行うことにこそ意味があるのですよ。信頼醸成の方法は、最高裁判決に誤りが含まれないか、含まれるならどのような答えであったなら良かったか、どうすればそこに辿り着けるようになるか、そういうことを「社会に対して明らかにすること」だけですよ。次の裁判で考える人たちの役に立つようになるじゃありませんか。それを唯一実行できるのは、法学の専門家、法曹という「同業者」の人たちだけなんですって。匿名の卑怯者であるオメガ級ブロガーなんかではありません。それとも最高裁判決には全員ひれ伏すことしかできないのですか?

だから何度も言ってるのですよ。たった一度の手術で良くない結果を招いてしまうことは、完全には防げないのだ、って。判決だって、一度出してしまえば元には戻せないのですよ。不可逆的なものなのですよ。だからこそ、次からどうしたらよいかを考えることが重要なのであって、失敗したこととか失敗した人に個人的責任を問うことではないのです。そういう考え方を身に付けることが、法曹の中にまだできていないのです。無批判で受け入れるという、裁判所の過誤を正すシステムが全く機能しない状態なんですよ。



今度はもうちょっと違う例で書いてみます。

駅から店に行く道があるとする。道の途中には、動く歩道やエスカレーターがあるとする。店には、動く歩道を通り、その後エスカレーターで上がって店に行ってもよいし、動く歩道だけ通過して、エスカレーターは利用せず店に行くこともできる。更に、動く歩道を利用せずエスカレーターだけ使って店に行くこともできる。

駅を出発すると、
 ①動く歩道 → 店
 ②動く歩道 → エスカレーター → 店
 ③エスカレーター → 店
という行き方がある、ということです。

ここで、動く歩道とエスカレーターの手すりには偶然できた傷があって、表面がギザギザしている部分がほんの一部にあるとしよう。これらの利用者の中には、このギザギザで腕に怪我をして傷跡が残るものとする。全部が同じ傷跡で、怪我したかどうかは本人には気付くことができないものとする。でも、手すりはグルグル回っているので、必ずしもそのギザギザ部分に触れるかどうかは判らない。なので、誰がいつ怪我をするのかは予期不能であるとする。

こうした条件があった場合、駅から店に行った人たちが大勢いて、腕に「傷跡」がある人たちが存在すると、その傷跡は「動く歩道のギザギザが原因であった」と言えるか、ということです。薬害肝炎訴訟の問題というのは、これと同じなんですよ。

動く歩道を利用したことがある人=フィブリノゲン製剤を投与された人
傷跡=HCV(+)

と考えて頂ければ、いいのではないかな、と。


マスメディアとかも含めて、「動く歩道にギザギザがあったせいだ」と主張するんですね。腕に傷を受けたのは、動く歩道を通ったからだ、と被害者の方々も言うわけです。
でも、傷跡のある人たちを大勢集めてくると、全員がルート①というわけではないんですよ。③の人たちもたくさんいるわけです。エスカレーターを利用したのであれば、動く歩道で怪我をしたのかエスカレーターで怪我をしたのかを判定するのは、とても難しいですよね。主張として、動く歩道のせいだ、というのは、本当に言えるんですか?ということです。多くの人たちは、みんな揃いも揃って「動く歩道が悪いんだ、ギザギザがあったせいだ」と強硬に主張しているんですよ。

エスカレーター=輸血としましょう。
フィブリノゲン製剤の感染リスクと輸血を比較するなら恐らく輸血の方がはるかに危険ということで、感染の危険性で言えば

 輸血>フィブリノゲン製剤

となるでしょう。
エスカレーターと動く歩道で比較すると、同じく

 エスカレーター>動く歩道

ということです。動く歩道を利用した人たちよりも、ずっと多くのエスカレーター利用者で傷跡があるのであれば、「動く歩道が原因だ」とか言いますかね?どうして「動く歩道だけじゃなく、エスカレーターにも乗りましたよね?ならば、エスカレーターで怪我をしたかもしれないですよね」と誰も聞かないんでしょうか?本当に動く歩道で怪我をしたんでしょうか?

もっと厳密に言えば、傷跡の原因には動く歩道やエスカレーター以外にもたくさんあって、親子喧嘩、兄弟喧嘩、夫婦喧嘩、自転車転倒、交通事故、鉄棒、みたいに、要因がいくつも存在しているんですよ。個々に調べると動く歩道よりも少ないものもあるかもしれないけれど、動く歩道を利用した人の中にはそこで傷がつかなくて自転車転倒で傷跡になっている人もいるかもしれないんですよ。普通に考えれば、動く歩道を通りました、という事実だけで、全員が「動く歩道のギザギザのせいで怪我をしたんだ」という主張は難しいと考えるはずなのです。

ところが、エスカレーターのせいでもなく、自転車転倒でもなく、喧嘩でもなく、鉄棒でもなく、「動く歩道が原因だ」と強硬に主張する方々が大勢おられ、マスメディアも全部がそれに賛成しているんですよ。おかしいでしょ。動く歩道を通過した人で傷跡のある人には全員に無条件で保障しろ、ということを求めているわけですね。

本当は、動く歩道を通過する以前から傷跡があったのでは?
本当は、エスカレーターで怪我をしたのでは?
本当は、喧嘩したことがあるんじゃないですか?

こういうことが、一体どうやって判るんでしょうか。


動く歩道を通過した人たち全部を調べて、全員に通知しろ、とか、かなり難しい話ですよね。
腕に傷跡のある人のリストがあって、全部通知をしろ、と言うのも、誰が何の責任でやるんですか?エスカレーターで怪我をしたかもしれないのに、動く歩道の人に責任があるということですか?本当は親子喧嘩が原因かもしれないのに、全て面倒を見ろと?要するに、動く歩道を通ったことがあって腕に傷跡のある人たちは、全部「動く歩道が原因だ」という結論に押し込めて、取れるものは取る、ということなんですね?

肝炎が判明した患者さんにフィブリノゲン投与を通知しなかったことは、国の責任なんですか?製薬会社が悪いからでしょうか?動く歩道を通過したことを本人が知らないことが多いのは判りますよ。けれど、傷跡の原因を正確に知る術がないのに、「あなたは過去に動く歩道を通過しました」ということを聞かされたとして、どうだと言うのでしょうか?過去に動く歩道を通ったことを知ると、途端に「動く歩道のせいだ!」と主張できるようになるからなのでしょうか?

根本的には、投与責任も説明責任も医療機関にあるでしょう。特に、87年に集団感染が明らかとなって以降は、フィブリノゲンを使う医師に多くの責任があるのですよ。何も、02年時点の役人が書類を放置していたからといって、90年前後の肝炎発症に繋がったわけではないのですよ。役人の無能は過去に遡れないですからね。07年現在の役人に罵倒してみても、80年代の感染を防ぐことなどできないし、病状が良くなるわけでもない。慢性経過例で既に20年近く経つのであれば、今通知をしてもしなくても予後は殆ど変わらないのかもしれないし。

現実には動く歩道で怪我をした人たちは、割合としてはあまり多くはないだろう。元々傷跡があったか、エスカレーターで怪我をした人の方が断然多かっただろう。朝日新聞風に言えば、通過したことがあるだけで、「動く歩道『で』怪我」と書くということ。原因が判らないにも関わらず、全てを「動く歩道が原因だ」と断言するのだ。これは薬害被害を訴える方々とも共通であり、新聞記者をはじめとするマスメディアの人も、裁判官でも、大体同じなのだ。C型肝炎患者が潜在的に300万人くらいはいるだろう、ということだとして、フィブリノゲン投与を受けた患者はそのうちの1割以下でしかない。投与した全例で100%の確率で感染したとしても、30万人にも達しない。では、他の方々は一体どのようにして感染したのか?その人たちは、フィブリノゲンを投与されずとも感染しているのですからね。

腕に傷跡があっても、動く歩道を通ってない人たちの方が圧倒的に多いのですよ。これで本当に「動く歩道のせいだ」と言い切れると思いますか?まあ、自信のある方々がマスメディアなどにも大勢いるでしょう。是非お聞かせ頂きたいものです。

科学リテラシーだの、科学的応用力だの、大事なんでしょ?
ゆとり教育によって教育水準低下を嘆くマスメディアなのですから、自分たちのリテラシーだか応用力だかを発揮してごらんなさい。大人たちの能力を実証してみて下さいよ。


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