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“地域ねこ”と呼ぶらしい

2017年03月07日 | weblog

僕の通勤路には、ねこがたくさんいます。

毎日通う会社の最寄り駅である、東急東横線 学芸大学駅。

周辺にやたらねこが多くて、通勤途中によく見かけるんです。

 

ある日の朝。

開店にほど遠い時間、準備中のお蕎麦屋さんの入り口が開いていたんですが、

そこに、ちょこんと座ってじーっと店の奥を見つめる一匹のねこ。

時おり「うにゃーん」と店内に呼びかけるように鳴きます。

どうやら、このお蕎麦屋さんからエサを頂戴しているようでした。

店内に入り込むと、優してくれるお店の人に迷惑がかかると知ってか知らずか

決して店の中には入ろうとしません。

 

そんなある日、昼メシを食おうと駅周辺をウロウロしているときに

そのお蕎麦屋さんの前を通ったときのことでした。

店先にそのねこの写真が貼られ、ねこのエサやおやつ、お花が置いてありました。

「みなさんに愛されていた地域ねこのふくちゃんは天国に旅立ちました。

 いままで、かわいがってくださってありがとうございました」

とメッセージが添えてありました。

そうか、あのねこは「ふくちゃん」というのか。そして、もう死んじゃったのか。

でもって、人になついて地域の人たちと友達になったねこのことを

“野良ねこ”ではなく“地域ねこ”と呼ぶのか……

一瞬でいろんな情報が飛び込んできたのを覚えています。

 

うちの近所にも、そんな地域ねこがいました。

古い一軒家の前でよく見かけるねこで、色は白黒。

アゴのところに黒い模様がついていたので

「アゴひげちゃん」と呼んでいました。メスなので、せめて“ちゃん”づけです。

アゴひげちゃんは、その一軒家に一人で住んでいる

おばあちゃんの親友だったようで、どうやらエサも貰っていたみたいでした。

でも、ある日を境に、おばあちゃんは家から出てこなくなりました。

アゴひげちゃんは、何度も鳴いておばあちゃんを呼びましたが

やっぱり、おばあちゃんが出てくることはありませんでした。

アゴひげちゃんは大声で泣きすぎて、とうとう声が枯れました。

僕がエサをあげようと近づくと、一生懸命口をパクパクさせますが

たまーに、かすれたしゃがれ声が出るだけでした。

 

道行く近所の人の中には、見かねてアゴひげちゃんにエサをやる人もいたようです。

しばらくして、おばあちゃんの家は取り壊しの工事が始まりました。

どうやら、おばあちゃんはお亡くなりになり、親族が土地と家を売ったようです。

 

その後、アゴひげちゃんは1ブロックとなりのねこ好きな方に

エサを貰えるようになったらしく、そこに居着きました。

でも、その頃からやせ細り、毛並みもバサバサ。

皮膚病なのか、他のねこにいじめられたのか、ケガしてるっぽい様子でした。

 

それからいつの間にかアゴひげちゃんも見かけなくなってしまって、

もうずいぶん時間が経ってしまいました。

たぶん、もう死んでしまっているのでしょう。

最後のほうで見かけたころは、あまり元気がなかったので

その頃のアゴひげちゃんの様子を思い出すと、ちょっと悲しい。

 

地域ねこ。


いつの間にか身近に現れ、気づいたら見かけなくなっている。

スルリと人の心に入り込んできたかと思うと、フッと消える。

ちょっと不思議な存在だけど、確実に身近にいて、生きてる彼ら。

 

今は、僕がクルマを置く駐車場に黒ねこと茶トラの地域ねこがいます。

その前は黒が2匹いたと思う。サバトラもいたっけか?

 

あなたの家の近く、職場のまわりにも地域ねこはいませんか?

もし、地域ねこがやってきたら、自分だけの名前で呼んでやってください。

余裕があれば、少しかまってあげてみてください。

風が吹くみたいに、いなくなっちゃう彼らだけど

生きてるうちに、楽しい、うれしい記憶が刻まれたら

“地域ねこ”たちも「幸せな人生だったな」と思うんじゃないかな。