■「壁ではなく橋を」抗議の横断幕
【ロサンゼルス=中村将】
トランプ大統領が就任した20日、メキシコと国境を接する米カリフォルニア州では、移民政策に危機感を募らせるヒスパニック(中南米系)やその支援者らが各地でデモを繰り返した。
トランプ氏は国境の「壁」建設にとどまらず、オバマ前大統領が大統領権限で導入した不法移民の滞在延期措置を撤廃する可能性にも触れ、“移民社会”を揺るがしている。
「トランプの(移民への)憎しみに抵抗する」
「生活の場を奪うな」
「トランプはいらない」。
ロサンゼルスのダウンタウンにデモ参加者らの叫び声が響いた。
激しい雨の中、メキシコや南米諸国の国旗がはためく。
「壁ではなく、橋を造れ」との横断幕も掲げられた。
「仕事を失った上に、突然出ていけというのか。
大統領が代わったからといって、そんなこと納得できるか」。
デモに参加していたメキシコ出身のアレックス・ガルシアさん(23)はそう語った。
ガルシアさんはオバマ氏が2012年に導入した不法移民の更新可能な2年間の就労許可「DACA」の適用を受けている。
この制度は、親に連れられて不法入国したのが16歳未満で、犯罪歴がないことや、高校を卒業するなど一定の条件を満たした移民に与えられ、米紙ウォールストリート・ジャーナルによると、全米で約75万人が適用を受けている。
米国で教育を受け、米国人と変わらない若者を追放するのを避けるためにオバマ氏が導入したが、トランプ氏は大統領選のときからオバマ氏の大統領令を「停止する」と述べており、就労許可を得た「移民の子」らは不安な日々を送る。
トランプ氏は「不法入国した者は国外退去となる。
それが国家だ」とも述べている。
即退去となり、米国で生まれ、米国籍を持つ子供と離ればなれになることを懸念する移民もいる。
米調査会社によると、全米の不法移民は約1100万人とされる。
多くが農業や畜産業、建設業などに従事しており、米経済に貢献している一方で、最低賃金以下での労働を受け入れるケースも目立ち、雇用を奪っているとの指摘もある。
税の納付が不透明にもかかわらず、医療・福祉サービスの恩恵を受けているとの批判もあり、こうしたことに不満を持つ層がトランプ氏の移民政策を支持している側面もある。