「VJって聞いたことあると思うけど....」
僕はスクリーンの向こうにいる彼女にそう言った。
SKYPEを使うようになって、
仕事もプライベートも以前より格段に効率がよくなった。
ただ、SKYPEを使う相手は限られている。
余程、相性が良い相手でないとSKYPEは気まずい。
少なくとも僕はそうだ。
彼女はそんな少ないSKYPE相手のひとりだ。
「よくクラブでサウンドと合わせてビジュアル流すじゃない?
あれなんだけどね」
彼女は軽く頷く。
「知ってるわよ、この前見せてくれたじゃない?」
そう言って、少しあきれた表情で、缶ビールを口に運んで一口飲んだ。
ウェブデザイナーの彼女のオフィスは自宅だ。
いつもはファミレスやマックで打ち合わせして、終わればさっさと別れるのだが、
SKYPEで打ち合わせをするようになって、終わったあとも、こうやってスクリーンを通じて
お互いの部屋で飲みながら話すことが増えた。
大抵、彼女がプレミアムモルツの缶ビールで僕はコーヒーだ。
「なかなかカッコいいと思うよ、もっと本格的にやってみてもいいかもね」
「そうか、見せたよね、ごめんごめん」
「あんまり真剣に話してないでしょ?まあいいけど」
彼女はそう言って僕を睨んで、また、缶ビールを口に運んだ。
彼女の後ろには見覚えのある空間が広がっている。
白い壁をバックパネルのない黒い棚で覆い、分厚いデザイナー関係の本やCDが、
整然と並び、その前に黒革のメイドインイタリーのソファーがある。
何とかっていう有名なデザイナーのソファーだったけど、誰だったっけ?
そのソファーで抱き合っているときに彼女が僕の耳元で囁いたデザイナーの名前...。
スノッブなソファーに彼女はとてもよく似合っている。クールな彼女も喘ぐ彼女も。
「よかったら、作ろうか?」
首を少し右に傾けながらスクリーンの向こう彼女はそう言った。
「何を?子供?」
「バカじゃない?サイトよ、VJのニーズってあるかもよ」
ソファーに横たわった、クールな普段とは全く違う表情の彼女を脳裏から追い出した。
「そうだね...世に投げかけてみよっか、オレの才能」
「ほんと軽いわよね、あなた」
いきなりSKYPEを切断されそうなくらいの怖い表情だったので、僕は姿勢を正して、
小さな声で「すみません、よろしくお願いします」と言った。
「高いわよ、覚悟しといてね」
ウェブでVJの受注が取れるものなのか僕にはよく分からないけれど、彼女の好きにさせてみよう。
彼女の感性を僕はとても気に入っているから。
気に入っているから、SKYPEができるのだ。
少なくとも僕はそうなのだ。
僕はスクリーンの向こうにいる彼女にそう言った。
SKYPEを使うようになって、
仕事もプライベートも以前より格段に効率がよくなった。
ただ、SKYPEを使う相手は限られている。
余程、相性が良い相手でないとSKYPEは気まずい。
少なくとも僕はそうだ。
彼女はそんな少ないSKYPE相手のひとりだ。
「よくクラブでサウンドと合わせてビジュアル流すじゃない?
あれなんだけどね」
彼女は軽く頷く。
「知ってるわよ、この前見せてくれたじゃない?」
そう言って、少しあきれた表情で、缶ビールを口に運んで一口飲んだ。
ウェブデザイナーの彼女のオフィスは自宅だ。
いつもはファミレスやマックで打ち合わせして、終わればさっさと別れるのだが、
SKYPEで打ち合わせをするようになって、終わったあとも、こうやってスクリーンを通じて
お互いの部屋で飲みながら話すことが増えた。
大抵、彼女がプレミアムモルツの缶ビールで僕はコーヒーだ。
「なかなかカッコいいと思うよ、もっと本格的にやってみてもいいかもね」
「そうか、見せたよね、ごめんごめん」
「あんまり真剣に話してないでしょ?まあいいけど」
彼女はそう言って僕を睨んで、また、缶ビールを口に運んだ。
彼女の後ろには見覚えのある空間が広がっている。
白い壁をバックパネルのない黒い棚で覆い、分厚いデザイナー関係の本やCDが、
整然と並び、その前に黒革のメイドインイタリーのソファーがある。
何とかっていう有名なデザイナーのソファーだったけど、誰だったっけ?
そのソファーで抱き合っているときに彼女が僕の耳元で囁いたデザイナーの名前...。
スノッブなソファーに彼女はとてもよく似合っている。クールな彼女も喘ぐ彼女も。
「よかったら、作ろうか?」
首を少し右に傾けながらスクリーンの向こう彼女はそう言った。
「何を?子供?」
「バカじゃない?サイトよ、VJのニーズってあるかもよ」
ソファーに横たわった、クールな普段とは全く違う表情の彼女を脳裏から追い出した。
「そうだね...世に投げかけてみよっか、オレの才能」
「ほんと軽いわよね、あなた」
いきなりSKYPEを切断されそうなくらいの怖い表情だったので、僕は姿勢を正して、
小さな声で「すみません、よろしくお願いします」と言った。
「高いわよ、覚悟しといてね」
ウェブでVJの受注が取れるものなのか僕にはよく分からないけれど、彼女の好きにさせてみよう。
彼女の感性を僕はとても気に入っているから。
気に入っているから、SKYPEができるのだ。
少なくとも僕はそうなのだ。