風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

初春歌舞伎公演「三千両初春駒曳」 @国立劇場(1月16日)

2014-01-19 02:01:08 | 歌舞伎




国立劇場の心地よさにすっかりはまり、今月も行っちゃいました。
お芝居の方はというと、まぁ巷の低評も理解できなくもない部分もありましたが(笑)、仕事でストレスフルだった私にはピッタリのツッコミどころ満載な超楽しい舞台でした。
なんでやねん
と何回心の中でツッコんだことか。

※1500円のお席です♪


【三千両初春駒曳(さんぜんりょうはるのこまひき)】

最初に照明が落ちて、真っ暗ななか空から金色のキラキラが降ってきて、光る白いお馬さんが上手の空に飛んでいくのですが、それがとっても美しくて。この雅で縁起がいい雰囲気が味わえただけで、すでに十分満足でございました(ハードルが低くてスミマセンね^^;)。
演じている役者さん達も適当に力が抜けていて、それもまたのんびり初春らしくて一興。

今回の見どころの一つは、なんといっても“菊ちゃん尽くし”でしょう
高麗のお姫様衣装から、町娘風の衣装、綺麗な廓衣装、関白の奥方衣装、立役姿、そして再びお姫様衣装と、お色直しの連続。正月早々美しい菊之助が沢山見られて幸せです*^^*
「姫は男と見れば声をかけるそうだ」、笑。一目惚れの想い人(松也)を追って自ら舟を漕いで来日し、たまたま辿り着いた廓で働いちゃう、一途で肉食系ハーフなたくましいお姫様♪その名も“照菊皇女”。

そしてもうひとつの見どころは、もちろん菊五郎さん!
政事に全く興味なく、趣味に生きる自由人信孝さん(考えあってのことだけど、本気で楽しんでいたに違いない)。こういう役の菊五郎さん、大好きです。春風駘蕩の言葉そのもの。
ゆったりと扇をあおぐ菊五郎さんと麗しき傾城姿の菊ちゃんが二人並んで、空から桜の花びらが舞い散る絵面の美しいこと美しいこと
菊五郎さん、ちゃんと菊ちゃんに見惚れてる!自分の若い頃そっくりな息子を相手によくこんな表情が出来るなぁ~と、楽しいことこの上なかったデス。会話も色っぽくてよろし♪

それと、ポスターにもなっている颯爽とお馬を引く菊五郎さん
ひょこひょこ歩きのお馬さんと六頭身な菊五郎さんが醸し出す可笑しみ!神経質さや理屈っぽさゼロなとぼけた空気。なのにやっぱり粋で美しくて色っぽい。あっさりしてるのに、ほんわりこってり艶っぽい!
この飄々とした個性は、仁左さまにも吉右衛門さんにもない天下一品でございます。
これほどしょーもないストーリーであるにもかかわらずこの作品が学芸会で終わらなかったのも、ひとえに菊五郎さんの役者としての味わいゆえ。
こういう舞台だから一層はっきりと感じた、菊五郎さんという役者の貴重さでした。

で、ラストはもう力技。
こんなんアリ?もちろんアリだ!!と言い切られた感じ^^;
華やかな雛壇(違)にのっかった、フリフリ高麗衣装の菊ちゃんと、お内裏様な菊五郎さん。真ん中にはこれまた綺麗な衣装のおすまし大河くん(長台詞がんばった!)。
その他一座勢揃いで手拭い撒いて、上から降る金色のキラキラ。
これだけの役者を揃えていながら超無理矢理な大団円のハッピーエンド(てか松也との恋はどうなったの、菊ちゃん!?)。
理屈と一緒に私の仕事のストレスも宇宙の彼方へふっ飛んでいっちゃいましたよ。
なんかめちゃくちゃだけどお目出度いし、いっか!と思えてしまうこのフシギ。
ある意味ものすごく歌舞伎っぽいような気がしないでもない(←錯覚です)。
昨年の正月も、海老蔵から同じパワーをもらったのを思い出しました。
だって正月だもんね

松緑、亀三郎、亀寿、松也、梅枝、右近、権十郎さん、團蔵さん、みんなよかったです。時蔵さんの立役は、4月以来かな。
最後に登場された田之助さん、お声もしっかりされていて、お元気そうでした。
好きな役者さんの多い舞台だったので、眺めてるだけでも楽しかった。
また、台詞や場面を色々パロってるのも面白かったです(俊寛とか四谷怪談とか五右衛門とか鈴ヶ森とか。お約束の半沢もね)。
満足です♪♪♪ 1500円だからかもですが、笑。
この日はカメラが入っていたので、そのうちTVでも放映されるのではないでしょうか。でもこういう舞台こそTVで見るようなものではないというか、生で観て一緒に楽しんでなんぼのものだと思います。


正月気分いっぱいのロビー









↑この左下の勘平の羽子板、カワイイ



↑劇場内の売店で購入した鯖寿司(またべえ)、紫蘇の香りが爽やかで美味でした

国立劇場は客層の良さも素晴らしいですね。これを食べていたとき、隣に座ろうとしていた方に「こちら、よろしいですか?」と声をかけられて、歌舞伎座に慣れた私はそれだけで感動
なにせ歌舞伎座は4~6人がけソファに2人でお弁当をいっぱいに広げ(膝に載せなさいよ、怒)、私が近付いただけで「お父ちゃん、しっかり席とっといてな!誰も座らせたらアカンで!」と叫ぶようなオバちゃんが普通にいる魔窟でございますから。。。ちなみに『新薄雪』のときでした。オバちゃんは舞台からは何も学ばないようです。。。


※東京新聞:菊五郎劇団、初春は復活通し狂言
※東京新聞:松緑、復活狂言で初春奮闘 芸の引き出し出すチャンス

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